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公文書改ざんを自分ごととして考える

多くの人は、組織に属して働き、賃金を得て働いていると思います。組織には指揮命令系統があり、それに従うことは従業員として普通のことだと思います。でもその指示が、その組織の目的や理念、ひいては法に反することであった時、自分だったらどうするだろうかと、森友事件で公文書の改ざんに関わった赤木俊夫さんの妻雅子さんの供述を読み、思いました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200715/amp/k10012516951000.html?__twitter_impression=true

この供述を読むまで知らなかったのですが、財務省は「改ざんがあった」と言うことを認めている一方、誰がどういう動機のもと改ざんを指示したのかが明らかになっておらず、それが今回の赤木さんの奥さんの訴訟の争点にもなっています。朝日新聞によると「国と佐川宣寿・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求めた訴訟」とのことです。

私は、赤木さん家族に起きたことが本当に痛ましいことだと思っており、政府の対応に憤りを感じています。でも多くの人は多分、自分には関係の無いことだと思っていると思います。そもそも関心すらない人の方が多い気もします。

ですが私は、他人事じゃないですよ、もっと怒った方がいいですよと思ってます。そこで何故私がそう思うのか、書いてみようと思いました。

①官僚にとっての公文書って、私の場合何だっけ?

私はコンサル会社で働いているのですが、新人がコンサル会社でまず身に着けるスキルは議事録作成です。お客様と我々の合意形成の記録として残したり、重要な意思決定がどのような議論の末誰の元でなされたかを記録します。

また、コンサル会社はコンサルティングサービスを提供する事業ですが、サービスの多くはアイデアをまとめた資料の形で提供されます。(プログラムや製品のプロトタイプを提供することもありますが)。

なので、官僚の方にとっての公文書は、私にとっての議事録であり資料と同じ位置付けなのだろうと思います。それらを正しくアウトプットしていくことが、彼らが国民に対して負っている責任であり業務なのだと思っています。(ちなみに政治家も同じもしくはそれ以上の責任を負ってますよね)

②公文書の改ざんって、私の場合何だっけ?

コンサル会社で言えば、お客様に既に提出済の議事録と資料を都合の良いように書き換えることになります。それは、虚偽の内容で報酬を頂くことになってしまいます。コンサル会社がそんなことをしてしまったら、契約を切られても仕方ないですし、訴訟に発展する可能性も大いにあります。何より、他の会社さんからの信用も失ってしまい、仕事が来なくなってしまいます。また、コンサル個人のレベルでは、自分を信頼してくれているお客様を裏切ることになってしまいます。

③改ざんを命じられるって、どういうことだっけ?

コンサル会社で言えば、指揮命令系統の一番上の人(「パートナー」という役職)にとって都合の悪い情報が、お客様に提出した資料に載っていたことが後になって分かり、それが発覚するとその人の立場が危うくなる状況が発生したとします。パートナーはマネージャーに、マネージャーは現場のスタッフにその資料の改ざんを指示します。現場のスタッフは、それが間違っていることと知りながらも、誰にも相談出来ずに言われた通りに改ざんします。
後日、現場のスタッフはマネージャーとパートナーが、「あの改ざんは現場のXXさんが勝手にやったということにしよう」という話をしているのを聞き、絶望的な気持ちになります。

書いてて嫌な気持ちになります。読んでて不快になりませんか。
私はたまたまコンサル会社で働いているので上記のような例えになりますが、別の職業であっても、法や職業倫理に反することを指揮命令系統の上から指示され、その罪を被せられるというのは個人が誠実に仕事をしていればいるほど苦痛に感じると思います。
赤木さんの身に起きたのはそういうことだったのだろうと思います。

④何故他人事にしてはいけないのか?

「まあ、赤木さんの身に起きたことは分かった、確かに酷いよね。でも、自分の会社でそんなことないし、政治のことはよく分からないし、佐川さんが指示したと明らかになった訳でもないから・・・」というのが、まだ理解のある方でも持つ、一般的な意見な気がします。でも、私たちはこの件にもっと興味を持つべきだし、政府に怒りを提示すべきです。

何故他人事にしてはいけないかというと、私たちは政府に嘘をつかれたからです。政府がコンサル会社だったら、私たちはお客様のようなものです。
コンサル雇って嘘の資料作ってフィーだけ取って行ったら怒りますよね?金返せってなりません?今の政府のスタンスは「嘘をついてました、以上」以外の何ものでもなく、お前ら何様やねんと思います。思いませんか?
これ許したら、政府はもっと嘘つきますよ。

更に、「国民のために」と働いてくれていた赤木さんが自死に追い込まれたにも関わらず、政府は知らぬ存ぜずです。
で、望んだか望んでないかは置いといて、今の政府を選んでいるのは(また様々な「疑惑」を許してしまっているのも)私たち国民なので、私たちにもこの件は間接的に責任があると私は思ってます。

⑤私たち個人はどうしたらいいんだっけ?

「分かった、確かに酷い、でも自分は政治家じゃないし、どうしたらいいの?」
SNSで、自分の考えをハッシュタグ付きで発信したら良いと思います。
先述の黒川さんの定年延長の法案は、「#検察庁法改正案」というハッシュタグの投稿があり、政府が無視できない世論として捉えたから今期の成立を断念されたと言われています。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/news_jp_5ec1e1dac5b6c5eb547e7fa4

今回の赤木さんの裁判は、国会ではなく裁判のため影響は与えづらいかもしれませんが、それでも私たちが「ちゃんと事実を明らかにしないと許さないぞ」というメッセージを政治家に届けられれば、影響も少なからず与えられる気がします。

最後に、亡くなられた赤木さんのご冥福をお祈りします。
誠実さのために自死を選ばざるを得ない方が二度と現れないような国になって欲しいと切に願います。

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