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日本出版美術家連盟、のことなど その1

 あたしは職能団体であるところの一般社団法人日本出版美術家連盟に所属しております。通称JPAL(Japan Publication Aetist Leagueの略)。本業がイラストレーターだからです(売れてないことは別にしてwww)。
 しかし、時々絵を描くお友達から、「何故団体なんかに所属してるの?」とか、「入ってなんのメリットがあるの?」「フリーが群れてどうするんじゃ?」とか、「めんどくさくない?」とか、質問を受けますので、そのあたりちょっと書いてみようと思います。どうせなのでまじめに書いちゃうわ。
 「理由」と「メリット」と「めんどくさいかどうか」についてでございます。聞きたいでしょ?

 団体に所属する理由には、ごく個人的なものと、一般的にも言えるんじゃないの?ってこととニ種類あるかと思います。二つは厳密には分けられませんが、まず個人的な理由から。
 それは、単純に、「勉強になるから」でございます!イラストレーターは基本、フリーランサーです。お勤めしてません。同僚とか上司とかいませんから、ともすると普通のオトナとしては「なんか少し足りません」な人として発達する、というか発達しない部分が多くて人間としてゆがむ、などのリスクが無きにしも非ずです。その分、自分で好奇心をつかって見聞を広げて学ばないとヤバイ、とあたしはある時思ったわけです。長年一人でやってて、先輩方の話を直接聞きたくなったのです。9年前でした。

  なんかね、メディアに載っているインタビューとかを「うっそでー」と疑う視点もありました。自分も記事を書いたりもするからですけど。生で聞かなきゃわからない。ともかく、自分よりも良い仕事をして、自分よりもずっと長く業界に生きている人たちはごまんといるのですわ。
  そして、「出版美」(これも略称)には、実にいろんなベテランのイラストレーターの方々が分野を問わず所属していたのです。元会員、のかたには驚くようなビッグネームも見えました。(手塚治虫先生も在籍したことがある!そもそも設立者が岩田専太郎先生とか田河水泡先生とかです。)自分が子供の頃学校の図書室で読んでいた本の挿絵を描いた方も、弟が凝っていたプラモデルの箱のかっこいいイラストを描いた大家も、エロ絵などとよばれる官能小説の挿絵で有名なかたも、好きな漫画家さんも、知る人ぞ知るというポジションの天才も。

 結果的にお会いできた方も、すでに亡くなってそれがかなわなかった方もいますが、不勉強で知らなかったかたがたのすごさが、身近でお人柄や原画を見ることで分かるようにもなり、文字通り見聞は広がりました。理解できるものが増えるっていいことです。
 なのに素晴らしい人たちが退会なさってゆくという・・・・あたしにとっては残念なケースもありました。それも経験ですが、よいことばかりといったらウソになります。「入ればパラダイス!」とか怪しい宗教じゃないんですから、両面あるに決まっております。入会したとき団体は過渡期だったんですよね。

  ともあれ、自分の力やら人脈では到底会ったりできない人たちと、たとえ淡くても関われたのは確かです。質問したかったことを質問できたり、いろんな意味で興味深いおしゃべりもたくさん聞きました。尊敬する大先輩から、宝もののような励ましを受けたことすらありますが、その内容は誰にも言ってません。秘密です。教えてあげないもん(笑)。
 こういうことこそ、「自分で好奇心を使って見聞をひろげ」ようとしたことのご褒美である、とあたしは思っているんですわ。それをしない人には訪れない幸運なのです。
 
 さて、質問のふたつめ:団体に入ることの「メリット」に、話はすでに食い込んでおりますが、こういう個人のレセプターに関わることだけでなく、見えにくいけど社会的なメリットもあります。
 例えば仕事上何かトラブル・・・・著作権侵害、いわゆる盗作問題や作品を無許可で使われたとか、理不尽な不払い、契約不履行があったときに、助けになるのが団体です。「見えにくいけど」と書いたのは、こうしたトラブルが全くない場合、そのありがたみがわからないだろうからです。
  でも例えば一度納品したものがweb版で二次使用された時は「ギャラ無料」と記された契約書にサインを求められた時に、どうしたらいいか正しく判断するのは簡単ではないです。ウェブ使用はこれから増えていくだろうに、全部無料ってひどいんじゃないかと思っても、うるさいこと言って仕事自体無くなったりしたらもっと困る、・・・・などと悩むでしょう。フリーランス個人はほーんとに立場が弱いのです。

 こういう時に、団体は交渉する知識と基準、クライアントを相手に権利を主張する方法を与えてくれます。知的財産や著作権について、変化している法律の現状を個人だけで勉強するのはかなりの負担ですが、団体にはフリーランスの立場から著作権問題に対処するためのパイプがあるのです。

 あたしは大昔に、年賀状用に描いた自分のイラストがその後勝手にコンビニの袋にも印刷されていたのを発見したことがあります。でもどこにどのような抗議をすればいいのか見当もつかなかったので笑って泣き寝入り(←変な日本語)しました。笑いながら自分の絵のついた袋にお菓子入れておうちに帰ってノーアクション、でした。でも今なら少なくとも相談できる窓口があります。  たとえ支払いに結びつかなくても、法律違反に対しては抗議するのが非常に大切なのです。そうでないと、やったもん勝ち、のいやーな世の中になってゆき、自分の首ばかりか、後に続く世代の若いクリエイターたちの首をも絞める結果になるんじゃないでしょうか。

 そして、抗議や主張は、一人でやったのでは効果が薄いし危険です。
 例えば学校で子供たちが理不尽な扱いを受けて、明らかに学校側に問題があったとして、一人で抗議すると、下手したらモンスター・ペアレンツにされちゃいますけど、保護者会という団体を通せば団体交渉になり、改善の道が開けます。そんなのと同じです。(これも問題を被らなかった人には見えにくいでしょうが、「PTAってくだらねえ!無くてもよくね?」的な意見を聞くときに、あたしは必ずこの話をします。実際に望ましくない校長をリコールする例を見たし、その学校は改善されました。PTAのTはどうあれ、Pの団体はイザって時のためにあった方がベターです。〝くだらねえ!”の部分をなんとかする努力は楽じゃないけど、預けてる子供らを守るためには「無くても良くはにゃい」、と考えてます)

 さて、長くなりそうなので続きは「その2」で!

 


 

おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。