見出し画像

#42『”あの人を探したってどこにもいない”SHISHAMO「春に迷い込んで」を語る』

今回は2022年3月16日に配信シングルとしてリリースされた「春に迷い込んで」について語ります。2024年4月10日にリリースされた最新アルバムSHISHAMO8の10曲目にも収録されています。

簡単に説明すると”季節は春を迎えるけれど、失恋をした冬の中に取り残されている女の子”がテーマに描かれています。YouTubeにてMVがありますので載せておきます。

それでは語っていきます。

一番Aメロの歌詞

暖かな日差しが静かに教えてくれる
「冬はもう終わったんだ」って
頼んでもないのに

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

主人公は付き合っていた彼と冬の寒い時期にお別れをしたんでしょうね。季節はすっかり春を迎えているけれど、主人公はいつまでも彼と別れることになった冬に取り残されてることがわかります。

一番Bメロの歌詞

あの人はきっと寒がりだった
寒がりなだけだった

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

付き合っていた彼のことを「あの人は寒がりだった」と思い返しているんでしょうか…。時間が経っていても全然彼という存在を忘れられないどころか、一生懸命思い出そうとしているように思えます。

一番サビの歌詞

春に迷い込んで
あの人を探したってどこにもいない
こんな不毛な恋心など
この桜のように 散って仕舞えよ

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

失恋した時に好きだったその人をいつまでも忘れられないという話はよく聴きますよね。そこの部分をこの主人公の場合は別れることになった季節は冬で、いつまでも忘れられないということを「春に迷い込んで」と季節を使って表現しているのは上手いなと思います。

「あの人を探したってどこにもいない」は胸が苦しくなりますよね。主人子にとってはこの人しかいないと思えるくらい好きだったんだろなということが伝わってきますよね。

「こんな不毛な恋心など この桜のように 散って仕舞えよ」というフレーズ。”不毛”とは”なんの進歩も成果も得られない”という意味だそうです。主人子はいつまでも失った彼のことを想い続けても仕方ないと分かっているようですね。でも、分かっているけれど忘れられないのが失恋した時の恋の痛みなんでしょうね。「この桜のように 散って仕舞えよ」と桜が散るという状況を使っているのもまた上手い表現ですよね。個人的に「散って仕舞えよ」の”しまえよ”がひらがなではなくて”仕舞えよ”としているのが歌詞を見て驚きました。“仕舞う”という言葉があるそうで”続いていた物事をそこで終わりにする”という意味があるそうです。言葉の端々までこだわって作っていることが感じられて凄いですよね。

二番Aメロの歌詞

野に咲く花たちが静かに笑ってくれる
ひとりぼっちの私のこと
一つ残らず摘んでしまおうか

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

悲しいけれど彼を失って寂しい時だからこそ、道端に咲いている花々に優しさや温もりを感じてしまうのかも知れませんね。「一つ残らず摘んでしまおうか」は寂しくて仕方ない主人子の気持ちが溢れていますよね…。

二番Bメロの歌詞

私だけ 私だけが
新しい季節へ追い出されて
君がいない 君がいない
何も持たずに放り出された春

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

「私だけが」というのが麻痺していますよね。きっと世の中には失恋した人は山ほどいるはずなのに、失恋した時って世界で自分だけが取り残されたような感覚に陥るんでしょうね。

Cメロの歌詞

いつだって手を繋いで歩いた
いつだって抱き合って眠った
私じゃなくてもよかった
春なんか来なきゃよかった

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

「いつだって手を繋いで歩いた いつだって抱き合って眠った」は彼と過ごした幸せだった過去を振り返っていますね。「私じゃなくてもよかった」はこの人しかいないと思っていないと出ない言葉だと思うので、聴いていて辛くなってしまいます。「春なんか来なきゃよかった」は彼がいなくなる世界なんて来てほしくなかったということですよね…。ここのフレーズは彼を心から愛していた主人公の気持ちが爆発していますよね。

Dメロの歌詞

からっぽになった私にも
季節は巡ってくるのね

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

そうですよね。どんな時も時間は止まってくれないんですよね。

Eメロの歌詞

どうしようもないほどの虚しさも
もう一度あの季節が来る頃には
救われてるかな

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

ここの歌詞は次の冬が来る頃にはもしかしたらまた彼が戻ってきてくれるかも知れないということを願っているのか、それとも次の冬には彼のことを少しは忘れられて楽になっているかなということなのか定かではありませんがジーンときますよね。

最後のサビの歌詞

色のない春に迷い込んで
あの人を探したってどこにもいない
こんな不毛な恋心など
この桜のように 散って仕舞えよ

「春に迷い込んで」作詞:宮崎朝子

もう一度最後に一番同様のサビを繰り返しますが、冒頭に”色のない”という言葉が付け加えられてるんですよね。私個人的にこの「色のない春に迷い込んで」というフレーズが切ないけれど好きなんですよね。”色がない”という言葉が入るだけで彼がいた時の日常には色があったけれど、彼を失ってからは日常に色がなくなってしまったということが伝わってくるのがなんだかわかるなと思いませんか。また、”色のない色のない”と最後のサビに入る前に二回音を抑えた歌声が入っているのが良くてその後に力強い”色のない春に迷い込んで”が来るのが凄く良いんですよね(冒頭のMV4:09~)。是非注目して聴いて欲しいなと思います。

まとめ

好きだった人を簡単には忘れることなんてできないという女の子が描かれていましたね。歌詞の展開を見ていると、主人公の女の子は時間が経っても彼のことを想い続けていることから描かれてはいませんがきっと彼に振られてしまったんだろうなということが見えてきます。そう思うと、春が来ても冬という季節から抜け出せなくなってしまう気持ちもなんだか共感してしまいますよね。

今回のように季節感を出した恋愛ソングを作るがSHISHAMOは本当に上手いなと思います。冒頭のピアノのイントロから始まるところなんか、まるで桜の花びらが散っていくようなイメージが連想できますよね。歌詞も「この桜のように 散って仕舞えよ」や「野に咲く花たちが静かに笑ってくれる」といった春を彷彿させる歌詞が出てきますよね。サウンドも春らしさを出しつつ歌詞が描いている寂しい感じも伝わってきて絶妙だな思います。

また、Cメロからの曲展開が今までにないくらい曲調が変わっていく辺りも表現が豊かで新しいなと思いました。そして最後のサビが終わってからも”ランランランラン”というコーラスが入っており、SHISHAMO8までくると曲の終わりの細部までこだわって作っているのが見受けられて感動してしまいます。

最後にSHISHAMO「春に迷い込んで」 SHISHAMO 10th Anniversary Final Live「FINALE!!! -10YEARS THANK YOU-」 Ver.と題したライブ映像が公開されているので載せておきます。

このライブ映像なんですけど桜の紙吹雪を降らせる演習があって素敵ですよね(4:09辺り〜)。


皆さんも「春に迷い込んで」是非聴いて見て下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?