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読書感想文「君が手にするはずだった黄金について」

 著者の直木賞受賞後一作目。自身をモデルにした小説家を主人公にした連作短編集。
 面白かったです。さすが本屋大賞候補は伊達じゃないと思いました。

1プロローグ
 就職活動するにあたって記入しようとしたエントリーシートで「あなたの人生を円グラフで表現してください」という問いでつまずいた主人公。
 哲学専攻の主人公が面倒臭すぎてあーあーまたこのタイプか。と思ってしまいました。

2三月十日
 同窓会で話題になった「震災の日何してたか」というよくある話の後でふとその前日は何をしていたのか全然思い出せない、同じ人生の中の一日なのにおかしいという話。
 少しミステリ要素があって面白かったです。自分は震災の日は新宿でパソコンを買いに行っていて、建物から避難した後、アルタのヴィジョンで津波の映像を観たのが若干トラウマです。前日のことは全く覚えてません。

3小説家の鏡
 友人の妻が占い師に唆されて仕事を辞めて小説家になると言い出したから止めるのに協力してほしいと相談を受けた主人公は、占い師のインチキを見破る術を授けるが……という話。

4君が手にするはずだった黄金について
 高校時代から口だけキャラだった男が投資家として成功し、大金持ちになったが、ブログの嘘から炎上し、主人公に相談しに寿司屋に誘うという話。
 承認欲求っていう言葉っていつから言われ出したんでしょうね。そのために身を滅ぶす人が出てきてからでしょうかね。

5偽物
 同窓会での会話をもとにweb漫画を描くババという男と知り合った主人公。友人の轟木はババが偽物のロレックスをつけていたのを見て信用ならない人物と評価したが……という話
 小説論が刺さりまくりました。そして作中一番ヤバい奴、ババ。大学の時にここまでじゃないけどこういうやついました。

6受賞エッセイ
 主人公が山本周五郎賞の最終選考に残った時のバタバタした生活を描いた話。
 小説とは? 小説家とは? もう一回小説書いてみようかな、と思いました。書いたことある人、書いてる人には劇的に刺さる作品だと思いました。


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