見出し画像

【読書ノート】『山月記』中島敦著

【読書ノート】
『山月記』
中島敦著 角川春樹事務所

「登場人物」


🌕李徴(りちょう)…自尊心が高く人と交わりを避けていた。役人を辞めて詩人を目指す。
⭐袁傪(えんさん)…李徴の友人。穏やかで柔らかい人柄。

📗隴西の李徴は博学才穎


優秀な李徴は人との交わりを避け、ひとり詩人を目指すも挫折。
自尊心がボロボロになる。
妻子の衣食のために役人に戻るも、公用での旅先で発狂し行方不明となる。

📗袁傪という真の友人


袁傪が勅命を奉じて使いの途中、人喰い虎に遭遇する。虎が李徴だと知ると袁傪は李徴の頼みを全て聞いてやる。

📗人生は何事をも為さぬにはあまりに長いが何事かを為すにはあまりに短い


自分に才能がないことを怖れ、あえて磨こうともせず、わずかばかりの才能を空費してしまった。
人間は誰でも猛獣使いであり、その猛獣にあたるのが各人の性情(性質と心情、うまれつき・こころだて・気だて※広辞苑第七版より)だという。おれの場合この尊大な羞恥心が猛獣だった、虎だったのだ。
人生は何事も為さぬにはあまりに長いが何事かを為すにはあまりに短い、などと口先ばかりの警句(警句:人生、社会、文化などについて、真理を簡潔な中に鋭く表現した語句※広辞苑第七版)を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と刻苦を厭う怠惰がおれのすべてだったのだ。
おれよりもはるかに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために堂々たる詩家となった者がいくらでもいるのだ。虎と成り果てた今、おれはようやくそれに気がついた。それを思うと、おれは今も胸を灼かれるような悔いを感じる。

📗唐代の伝奇小説「人虎伝」


唐代の伝奇小説人「人虎伝」を元に書かれている本作品で、唯一違うのは虎になった理由である。
「人虎伝」では、李徴が虎になった理由を非道なやり方で人を殺めたためと言っている一方で、「山月記」では変身の理由をあくまでも『内面の問題』として捉えていて、そこに『現代性』がある。
今も古びることなく、ある種の若者たちをギクリとさせ続けるのは、自らの身の内にあった葛藤を、伝奇小説の構図に託して描きだしたからだと言えるだろう。

📖尾崎コメント📖


『人生は何事をも為さぬにはあまりに長いが何事かを為すにはあまりに短い』
という言葉が個人的に好きであるため、何度も読み返している本作品。
中島敦は、33歳という若さで亡くなっているが、若くして亡くなることを予期していたとすると、その後周りの長生きしていく『自分より才能の乏しい人』に対しての、李徴の言葉だったのではないかと考えると、もっと長く生きてもっともっと、自身の才能を磨きたかったのではないかと思う。
だからこそ私たちは、毎日を精一杯生きる義務があり、日々の努力を欠かさない生き方をするべきなのだ。
中島敦のように長生きしたかった者たちの無念を晴らすためにも。

#読書記録
#読書感想
#読書
#読書ノート
#読書好きな人と繋がりたい
#読書感想
#読書記録ノート
#読書男子
#読書垢さんと繋がりたい
#作家
#中島敦
#山月記
#人虎伝

とっても嬉しいです!! いただいたサポートはクリエイターとしての活動に使わせていただきます! ありがとうございます!