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コンプレックスをポジティブに変換する方法

コンプレックスは捉え方次第でバネになる

私は高卒が最終学歴である。
このことを、何度も悔やんだ。
「自分はなぜ、高校など行ったのか」
「自分はなぜ、もっと勉強しなかったのか」
悔やんで、悔やんで、後悔する日々を過ごしていたのだ。
自分が悔やんでいることは、結果論に過ぎないのだと学ぶまでは。

高校を出てから、寿司屋に入った。
修行を積んでいく中で感じたのは、「高卒では遅い」ということだった。
どういうことかと言うと、“飯炊き三年、合わせ五年、握り一生”という言葉にある通り、当時の寿司屋の世界は、スタートが早ければ早い方が良い。
26歳の時、アメリカのロスアンジェルスにあるリトル東京に支店を出すことになり、お店の中で志願者を募っていた。
しかし私は、当時まだ八年しか経験がない。つまり、一人前としては認められていなかったのだ。
アメリカには、自分よりも若い衆が行くことになった。
「中卒で入っていたらな~」と、店長に言われたことを思い出す。若い衆の背中を見て、心から、「高校なんて行くんじゃなかった」と悔し涙を流した。

学歴なんてなくても良かったと心から思っていたのに、この思いが一転する出来事が訪れる。寿司屋をやめてから、数年後のこと。
読書会を自分で開催した。私は四十六歳になっていた。
動機は、読書が好きだから。自分を含め、多くの人が本を読む機会になることを望み、気軽な気持ちで始めたものだった。

私は『学歴コンプレックス』というものを、自分自身が開催した読書会で初めて感じた。
自分以外の人は、ほとんどが大学を卒業している人ばかりで、高校しか出ていないことがとても恥ずかしいことに感じていた。
読書の感想を、簡単に言うという事だけなのに、学歴の高い人は言う事が違うように聞こえ、感情ではなく論理的に話ができているように聞こえる。そのことを読書会の中で伝えてみたときには、大学を出ている人は、『論文』というものを書いている人が多く、その経験が論理的思考を養ったのかもしれないという話まで出ていた。
「そうか、論文を書いたことなど無いから、論理的思考ができないのか」
と、単純に思ったこともあったが、それだけで先生やアナウンサーのように、物事を計算されたかのように話すことができるようになるはずがないと思い直した。
結局、このような環境に身を置くことが辛くなってしまい、読書会は休止してしまったのだ。
高校しか出ていないことを、後悔した。
「もっと勉強するべきだった」と、心から悔しい思いをしたのだ。

タレントの伊集院光さんをご存知だろうか。
クイズ番組などで、博学として知られる彼が、高校すら出ていないことに驚いたのは私だけではないはずだ。
彼は、先日のラジオ番組の中で「クイズ番組で、東大出身の人に挑戦することが楽しい」とコメントしていた。
「俺も中学しか出てねぇから、伊集院さん見てると痛快なんだよね」
と、街中で声をかけられると、「学歴が無くても、ここまでやれるんだと証明したいし、(中卒代表として)もっと頑張らなきゃな、と思うんですよね。学歴=知識量だという認識を壊したいんです」とおっしゃっていた。

伊集院光さんの言葉には、『後悔している気持ち』とうものが感じられない。
いや、実際には後悔しているのかもしれない。
しかし、現実の自分を受け止め、それをバネにして、さらに高みを目指している。そこにネガティブな気持ちというものは無い。
テレビの中でも、「オレは中卒だから……」というような、コンプレックスを前面に出した発言もしていない。

「伊集院さんは学歴コンプレックスはないのですか?」
という質問には、
「バリバリあるよ。っていうか、学歴コンプっていうか、いろいろねコンプ」
といったツイートをしていることもあり、奥底にはコンプレックスを持っているのだろう。しかし、そうした自分を客観的に見て、どうしたら自分がさらに成長することができるかを考えているのだ。

私は歩んできた道を、すべて悔やんでいた。
学歴コンプレックスを理由に、それまでの人生を全否定していたのだ。
伊集院さんの言葉にもある通り、私はいろいろな“コンプ(レックス)”に振り回されていたのだと気づいた。
『自分が現時点で満たされていないものを、コンプレックスと受け止め、それを悔やみ、後悔していた』のである。

寿司屋では、中卒で入門しなかったことを悔やみ、高校になんて行かなければよかったと思っていた。
読書会では、大学に行かなかったことを悔やみ、もっと勉強しておけば良かったと思っていた。
これは、高校で出会った大切な友人や、高卒で寿司屋に入って苦労した経験を全否定することになることに、気が付いていなかった。

伊集院光さんのように、今を頑張らなくてはいけないのだ。
高校の友人も、寿司屋での経験も大切な宝物だ。
それまで頑張って来た自分を、否定してはいけない。

コンプレックスは、捉え方次第なのだ。
私は、コンプレックスをバネにして、今までの経験を胸に、今日のベストを尽くしていきたい。
心から、実感したのです。

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