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人間関係は毛細血管のように

人間関係は毛細血管である

友人を多く持てない私は長年、人間関係に振り回されてきた。
限りある時間の中で、大切にしたい関係と、そうでない関係がある。
大切にした方がいいと感じる関係でも、その場所がしんどくて、立っていられない状況がある。しかし、自分の成長のためや、自分が生きていくために必要に迫られ、我慢してその関係を維持している。今ままでは、そんな関係の人が多かった。
しかし、ある出来事がきっかけで私は、毎日を楽しく生きるための人間関係を優先することで、かなり生きやすくなった。憂鬱な気分になることが減り、大きな感情の波も無くなった。
それは、毛細血管のように、細部にまで気を張り巡らせていたからだった。

多くの人から良く思われていないのに、一部の人から可愛がられる人がいる。
逆に、とても顔が広いのに、親しい人が少ない人もいる。
この違いはどこにあるのかを、考えてみた。

数ヶ月前、あるテレビ番組を見た。
プレゼンを展開して、意見や活動などに協力してくれる経営者や資金が潤沢にある投資家などの心を掴み、実際に投資や融資を募る番組である。
その中で、明らかに変わっている人が出ていた。多くの人に対して、不愉快にさせる言動を繰り返している人である。多分、10人中9人には受け入れられないだろうと想像させる人だった。
「それは違うと思う」
と、人からアドバイスや注意喚起を受けても、「はい」と素直に言わない。明らかに周りを不快にさせている。おそらく普段から、自分の考えを突き通して、人からの助言というものを聞かずに生きてきたのだろうと想像させた。
私も見ていて、「こんな人とは付き合いたくない」と思っていた。
しかし、ある経営者が
「僕は、あなたのことが好きです!」
と言った。突然のことで、スタジオ中騒然として、空気が一瞬止まった様子が感じられた。
「いいじゃないですか。自分の意見を貫き通すことも立派な生き方です」
そのようにいった経営者は、そのプレゼンをした人に向かって更に肯定的な意見を重ねていた。

人の意見を聞かない生き方は、よろしくないと思っていた。
「人の言うことは、素直に聞きなさい」
と、多くの人が言っていたし、そのように生きることが良いと信じていた。
むしろ、そうしなくてはいけないと、思っていた。

「他の生き方は許されない」
という強迫観念めいたものさえ感じていた私にとって、人から受け入れられない生き方をしていることが、社会の落伍者のように映っていたのだ。
しかし、こうした生き方ができることを、羨ましいと思ってもいた。
「誰からも好かれたい」
という生き方は辛く、しんどい。
「みんなに好かれる必要はない」
そう考えるだけで、ずいぶん楽になることは、薄々感じていた。

プレゼンをした彼は、生き生きとしていた。
誰かの顔色を伺うこともなく、歯に衣着せぬ物言いで、誰に気遣うこともなく発言していた。

多くの人から良く思われていない人が、良く思われていないことが平気な理由が、ずっとわからなかった。
人からは好かれた方がいいに決まっている。そう思っていた。
実際に、友達は100人作ったほうがいいと小学校に入った時に教えてもらった。
そのため、多くの友達から好かれた方いいと思って生きてきた。
その真逆を走っているのが、それら多くの人から良く思われていない人である。
良く思われていない理由の多くは、『変わっている人』と言われていることが多いように思う。

私は、プレゼンをした彼を見て、本当に自分のことを理解してくれている近しい人を、今よりもっと大切にしていこうと考えるようになった。
多くの人が、『変わっている人』と見てくる中、たった一人の人が「好きだ」と言ってくれているのを見て、「たった一人、好きだと言ってくれる人がいたら、十分じゃないか」と初めて思ったのである。
多くの人がナンバーワンよりオンリーワンがいいと思っていても、実践することをためらってしまう中、それを本当に実践している彼は、心底カッコいいと思ったのだ。
社会においては、落伍者かもしれないが、近しい人にとっては『ちょっと変わっていて面白いやつ』みたいに思われていること自体が、人から可愛がられている証拠となるのではないだろうか。

本当の友人と、関係性の浅い知人との付き合い方を変えることすら、できないくらい時間がない中で、自分が本当に大切にしたい人を大切にすることができるとは思えなかった。
人間関係というのは、毛細血管のように、広く張り巡らせることで、関係性は細く薄くなってしまう。本当に大切な人は、動脈のように太く濃い関係性を保ちたいのに、広く張り巡らせているために、関係性の薄い人に時間を取られる。

自分にとって、大切な人を大切にしていくことが、いかに大切かを、初めて知るきっかけとなった。

例え、変わっていてもいい。
動脈のように、太く、濃い人間関係を築きたい人と築いていくことが、私にとっては何よりも大切なことであった。

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