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【後編】ラース・フォン・トリアーの『キングダム』にハマる。季節外れの感想メモ


前編はこちらです。お先にどうぞ。

前回のあらすじを簡単に整理すると、デンマーク、コペンハーゲンのキングダム病院は、かつて洗濯職人たちが布を洗い清めるために使っていた洗濯池があった場所に立っており、そこで死者の国の扉が開かれようとしていた。

そんな幽霊病棟にやってきたのは、スウェーデン人のヘルマー主任医師。
かれはいま、モナという少女の手術ミスを責められていて、カルテをなんとか隠蔽しようとしています。
しかし、クロウスホイという若い医師にカルテを奪われます。そこでヘルマーはハイチに飛んで、ゾンビ薬を入手し帰国してくる。

一方、キングダム病院に仮病をつかって入院をくりかえすドルッセ夫人は、病院のエレベーターで少女の幽霊と邂逅。彼女を儀式によって昇天させることに成功。
しかし、まだ病院内の呪いをすべて解くことはできないでいた。

第5話 術中死

医師会によって実態が暴かれたキングダム脳神経外科は、病床を増やすように要求され、急激なブラック企業化に直面します。
仮病を使って入院していたドルッセ夫人の奇行も、視察にやってきた医院長によって暴かれ、夫人は退院することに。
しかし彼女が一歩病院の外に出た瞬間、車に跳ね飛ばされ、不条理な力によって再入院することに。
事故の原因は、ハイチから帰国したヘルマーが、ローラースケートで出勤するという光景に、一瞬脳がバグって前方の車を認知できなかったからです。

ヘルマーは晴れてゾンビ薬を入手し、早速朝の会議に供されるコーヒーに、それを盛り付けます。
しかし、ベタなコメディが発動し、クロウスホイがカップに口をつけようとした瞬間、誰かが部屋にやってきたりなどして、なかなかコーヒーを飲んでくれない。
そして気を利かせた同僚が、会議に集まったみんなにコーヒーを回したりするものだから、ゾンビブレンドがどのカップかわからなくなっちゃって、爆笑。
そして後、ゾンビ薬は実は効力が不確かなもので、飲んだら普通に死ぬ確率の方が高いことが判明する。
ヘルマーがゾンビブレンドを回収しなきゃと思った矢先、クロウスホイがそれをがぶ飲みします。期待を裏切らないクロウスホイ。

一方、奇形児(というかおっさん)を出産してしまったユディット。産まれた赤ちゃんと対面を果たそうとするのですが、インキュベーターのなかにいない。痕跡をたどって、脱走した赤ちゃんを追っていくと、そこには頭部のみ肥大しおっさん化した、二頭身のグロテスクななにかがうめいています。ユディットは言葉を失う。

手術が失敗して廃人となったかに見えたモナに、微かに意思の存在が確認される。我々に何かを伝えようとしているようだが?

5話のラスト。
車に跳ね飛ばされたドルッセ夫人は、救命科に搬送されますが、心電図は虚しく直線に。
しかし夫人の体がうっすらと透けはじめ、幽体離脱に成功します。そして夫人は病院の外へ。

もうここまでみると、キングダム病院のはちゃめちゃっぷりは、なんでもありのカオス状態で、視察にやってきた医院長がいちいち絶句するのが、もう本当に笑える。

第6話 渡り鳥

あの世へいったドルッセ夫人は、書いていませんでしたが、1話か2話で登場した、末期がん患者の友達エマと死後に再会を果たします。
しかし、まだあなたはやるべきことがある。と冥土行きはキャンセルされ、息を吹きかえします。

と思っていたら、ゾンビ薬をイッキしたクロウスホイが、普通に死んでしまう。「えっ」て声出しちゃったよ。

キングダム病院のイカれた名物である、救急車レースが今日も行われようとしていた。
サイレンを鳴らした救急車で、道路を逆走し、無事に病院まで辿り着けるのか、悪運と事故っちまうのかを競う、命知らずな賭けレースです。ふざけんな。
運転手はファルコンと呼ばれる人物で、この後、案の定事故ってしまい、ぶつかった相手に重傷を負わせてしまいます。

前半部の感想を記した記事では触れなかったのですが、モッゲという熟女好きな医師長のドラ息子が主要キャラにいる。こいつが、お気に入りのマダムに、解剖実習で使ったご遺体の生首をプレゼントするという、最低のサプライズを敢行するのですが、この首をクロウスホイに盗まれてしまい、首をおもちゃにしたことがバレたら実習生をクビになってしまう(首だけにな)ということで、脅迫を受け、クロウスホイの手下になっています。

そんなモッゲくんは、ボンクラ学生なので、研修医のテストに合格できません。なので試験管であるヘルマーに露骨に媚をうる。
ケーキとか持ってくる。笑
もう完全にわかった。これはクスッと笑える系のブラックユーモア系ドラマではなく、好きあらば爆笑を狙う純粋なコメディドラマなんだ。

そして医師長先生も、ついに精神的にヤバくなったのか、病院の地下に非合法的に存在し、運営されている精神科のドクターのセラピーにかかります。この病院、プチダンジョン化してる。

そして、息を吹き返したドルッセ夫人は、心霊外科医の診察を受けて、脳を治療してもらいます。
電話帳で見つけたその心霊外科は、真言を唱えたのち、夫人の脳みそに無礼にも指を突っ込み、肉片を取り出して、食し始める。これで治療は完了だという。
さらにその心霊外科は、エレベーターを降りた先でボンド教授(がんに侵された肝臓を移植したマッドドクターです)と鉢合わせ、ついでと言わんばかりに、ボンド教授の腹に指を挿入、何かをつかみ出して去っていきます。
ボンド教授の命懸けで手に入れたSSレアクラスの貴重ながん肝臓が、怪しい男に盗まれてしまったのです。

ドルッセ夫人はマリーの幽霊を、邪魔が入ったとはいえ一応封じ込めることに成功したようだった。
その吉報を聞いた、キングダムの幽霊諸君が、一斉に夫人の元に押しよせ、夫人の周りを鬱陶しくつきまといはじめます。
夫人はらちがあかないので、講義室を使って幽霊を招待し、これからどうするかの所信演説を披露します。
夫人は幽霊たちの人気を勝ち取り、全ゴーストが彼女のバックに付きます。必要なときは合言葉で呼び出すようだ。

そしてうっかりゾンビ薬で、クロウスホイを殺してしまったヘルマーは、ハイチ人の同僚に詰め寄ります。
ゾンビ薬は単なる仮死薬にすぎず、解毒薬を投与することによって初めて、肉体は死にながらも動き回る人間が作れるのだった。
ヘルマーは解毒薬を買わされると、すぐさまクロウスホイに投与しようと、院内を走り回ります。
しかし、棺は車でいってしまい、ヘルマーはスコップを持って、平然と墓荒らしに向かおうとします。ですが、クロウスホイの遺体は火葬に決定したらしく、灰になろうとしていました。すんでのところで火葬される棺にしがみついたヘルマーでしたが、ここにきて愛人リーモアの凶弾に倒れます。

ここらへんのヘルマーが死体を追いかけて、二転三転するさまが、爆笑の連続で、とにかく笑える。

第7話 犠牲者

医師長がなぜか、救命医のインターンとして働きはじめ、第二の人生を歩もうとし始める。屈折した現実逃避 。
そして死んだと思っていたクロウスホイが、平然と生きていることが判明。ゾンビ化に成功してしまった模様。

銃弾に倒れたヘルマーは、幸い軽傷で、しばらく車椅子になります。
これ以前、ヘルマーは医師長の秘書に、書類が入らないから棚を持ってこさせろと命令し、棚を取り付けたら今度は、内開きのドアがつっかえて開かないんですけどと秘書に言われ、じゃあドアを小さくしろ!と再び命令し、でもそれじゃあ車椅子の患者が部屋に入れませんよ?と言われたりするのですが、それでもドアを工事させます。
そしたら見事に車椅子になった自分が入れなくなるというギャグが完成し、無意味によくできたフリ落ちで笑わせる。なんでこんな笑。

マリーを殺して、ユディットを妊娠させたクルーガー医師(霊体)と、ドルッセ夫人が廊下ですれ違う。
夫人と夫人の交霊会友達は、クルーガーを悪霊だと見抜きます。悪霊は幽霊とは違い、何者かによって召喚された化身であり、術者がどこかに存在するらしい。夫人は病院内の悪魔崇拝に気がつき、足を踏み入れる。反キリストはトリアー作品的かも。

ドルッセ夫人は息子に精神の旅をさせ、霊的な側面からキングダムを調査しようとします。
夫人の息子は精神の迷宮で、石櫃に嵌め込まれたレリーフを発見します。レリーフにはRIGET(デンマーク語でキングダムの意)が嵌め込まれており、手がかりを入手。
しかし、そこに番人か守護霊か、虎(TIGER RIGETのアナグラム)があらわれて襲いかかります。ドルッセ夫人はすぐさま、想像力を使って、何か動物に変身しなさい!と息子に命じます。慌てた息子が変身した動物が、ケッサクなので、ぜひ見てください。演出の間抜けさと相まって、声をあげて笑っちまったよ。

さらにドルッセ夫人は、息子の友達が院内の飛行クラブ(なんでそんなクラブが病院にあるの?)の会員だったので、キングダム病院を上空から偵察することにします。セスナ機をチャーターし、大空に舞い上がります。
しかし、上昇気流によって操作を奪われ、真っ逆さまに墜落していく。ドルッセ夫人は霊たちを呼び出し、翼を支えてもらい、不時着に成功、一命を取り留めます。

そのころヘルマーは、おべっかを使ってくる研修生のモッゲを通じて、クロウスホイが所持しているモナのカルテを奪い返そうとたくらみます。
資料室にはセンサーが設置されており、毎夜9時になると点検のため電源が落とされ、セキュリティがOFFになるという致命的な欠陥があり、その裏技を使って、モッゲとヘルマーは資料室に忍び寄りますが、そこにクロウスホイも乱入。
焦ったモッゲはセンサーをONにし、ヘルマーとクロウスホイを資料室に閉じ込めます。
一歩も動けなくなった二人が睨み合う構図が、にわかに笑いを誘う。仰々しいBGMまで流れ始め耐えきれない。

モナのカルテは結局ヘルマーが手にいれ、これで一安心かと思いきや、愛人リーモアの手によってラブレターにすり替えられていました
最初はヘルマーは人を見下した最低な人物だと思っていましたが、ここまでくると愛嬌を感じる。がんばってほしい。

第8話 悪魔の巣窟

ヘルマーの愛車であるボルボが、ドルッセ夫人とその息子が運転する車によって破壊されていたのですが、それが修復して戻ってくる。
ご満悦のヘルマーは受取書にサインするのですが、その書類は裁判の召喚状で、まんまと騙されたヘルマーはモナの裁判に出廷する法的義務を負ってしまいます。そして直後、ドルッセ夫人のセスナの破片が空中から落下し、ボルボが廃車に。うん。上質なコメディだ。

悪魔崇拝の本拠地を空中偵察により発見したドルッセ夫人。サバトの現場に潜入。
サバトでは、弱者を一掃せよ。という唱和で埋めつくされ、ヨーロッパの負の歴史であるナチズムを想起させます。

一方、脳に障害を負ったはずのモナは、文字が彫られた積み木を使って、看護師に何事かを訴えようとする。
それはヘルマーに関する告発のようで、のちにクロウスホイがこれに気づく。

そしてがん肝臓を移植したボンド教授。怪しげな霊能外科医に貴重な肝臓を奪われたかに思えましたが、無事だった。いや無事じゃなくてがんに侵されてるわけだが、ともかく手術をしないと助からず、骨髄液の提供者を探していた。すると、病院内にボンド教授の異母兄弟が見つかる(!)しかもそれは、ドルッセ夫人の息子だった。キングダムの世界は狭い。

この回が最終話なのですが、怒涛の勢いで物語が終わらない
自由連想法を使って、院内の悪魔崇拝者を暴き出そうと考えたドルッセ夫人。手当たり次第にそれっぽい人に連想法を仕掛けていきますが、モッゲに生首を渡された女医がこれに引っかかり、夫人の繰り出した「ベルゼブブ」という言葉に、「悪魔」と返してしまい、悪魔崇拝者であることがバレてしまう。

グロテスクなおっさんを出産してしまったユディットは、徐々に徐々に巨大化していく息子を目の当たりに、それでも生まれてきた子供に愛をそそいでいた。
赤ん坊はついに、頭部だけおっさんで、腹は妖怪あずき洗いのような感じにぽっこり突き出し、手足は末端のみ巨大化。腕と脚は枯れ枝のように細いという、人間離れした形相に変わり果てていた。
懸命に生きようとする息子も、自分の運命は自分で決めたい、殺してほしいとユディットに頼みます。
赤ん坊は荷重を支えきれないのか、ベッドから起き上がらせ、壁に固定するような形で直立させていた。
それが、多分ですがキリストの磔刑図とかかっているのではないかと推測します。確証はない。
ユディットは息子の頼みを聞き入れ、拘束具を解いてかれを死なせ、地面に下ろしてやる。

病院内で行われる狂気の賭けレース。
ファルコンは心身ともに病んでいて、とてもレースなどできる状態ではない。
そこでボンクラ学生モッゲの友達が、気になるあの子に振りむいてほしいという理由で、二代目ファルコンを襲名。
フロントガラスにワックスを塗って見えなくした状態で逆走する、ブラインドレースの走者をやらされてしまう。
しかし、そのレースの最中、モッゲと気になるあの子が同乗している車に正面衝突してしまう。

ゾンビ化したクロウスホイは、なぜか闇オチしていて、弱者は一掃しなきゃ……という悪魔崇拝のスローガンを口走り、実行に走ります。
そして病院内の、患者の呼吸器とかと繋がっている電源のブレーカーをすべて落としてしまう。
病院内では、ボンド教授とその弟が、骨髄移植のための手術をしている真っ最中だった。

そしてヘルマーを告発しようとするモナも、どこかに消えてしまう。

終わり。

全ての要素が投げっぱなしのまま、ドラマは1997年の放映で幕を閉じ、その後ヘルマー役のキャストが亡くなり、続編は製作が不可能になってしまう。ところが2022年、完結編である『キングダム/エクソダス』がついに製作。
25年間も謎を放置されたファンの心境というものをお察しします。
これで終わりだといわれても、気になって仕方がない。

途中まで見た感想としては、ホラーで始まった前半が、後編は完全にコメディになり、爆笑度の高いギャグで笑わせてくれます。このドラマを個人的、新年初笑い賞に決定したいと思います。おめでとうラース。

まだまだ書ききれていない要素とかたくさんあるし、細かいギャグは拾いきれないので、ぜひ、この記事を読んだみなさんそれぞれで鑑賞して、感想をアップしていただきたい。

ブルーレイも出てるらしく、高いけどここで買わなければ確実にプレミアになってしまう……。ラース作品も順次ブルーレイBOX化して発売されるようで、レアな作品が見れるのはうれしいが……お金…。

最後に完結編『キングダム エクソダス〈脱出〉』を鑑賞して、すべての謎に決着をつけたいと思います。それでは。

再びキングダムの世界に戻る際は、善も悪もあることを心得よ。🤟


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