見出し画像

二年前のあの日と今

私は、焦っていた
約束していた時間に確実に遅れる事がわかって
彼にLINEしたらもう着いているらしい
タクシーという選択肢もあったが
どっちにしろ間に合わないのでバスに乗った
平日の昼間だというのにさすが都会の街中である
逆行する人々もまた私と同じように
何かの目的に向かって足早に、時にゆっくりと
その方向へ歩いたり止まったりを繰り返している
その中にひときわ目立つ晴れ着姿の女の子が二人いた
友達なのだろう、信号待ちに何か話していた
あぁそうか、今日は成人式なのか
そういえば私にもあんな日があったなぁと
丁度二年前の日から今の私までを思い出した
私はあの日から何も変わってなかった
人はそう簡単に、本質的に変わることはないんだと思った
ただ、あの日から私は二年という歳月があの日より
大人を演じるのを上手にさせたし
より女性らしく大人っぽくなったと思う
ただそれだけである
だけど、それが大事なんだとも思った
パンパンに丸い顔とピチピチの肌が
徐々に薄れていくのが分かる
女って生ものみたいだ
期限付きの生花みたいでもある
造花にはない美しさや瑞々しさはやっぱり
限られた短い美しい命だからこそあるのだとも
だからこの先も私は
自分の人生に色どりを付けてくれるような
時に都心の真ん中にあるとは思えない緑の場所のような
そんな男たちに愛でられて過ごしたいと思った
今日は、ただランチをするだけのために彼と会う
前に会ったとき、彼はセックスなしで女に会うのは
俺のポリシーではないとかなんとか言ってたけれど
今は、君とのセックスはおまけみたいなものだよなぁ
とまるであの日そんなポリシー語ってなかったかのように
さらっと言ってきたから
人ってこんな短期間で、人に対しての思いや考えは
変わるものなのだと少しうれしかった
少し贅沢なランチを済ませた後
少し時間があったので神社に初詣をしに行く途中
あまりにも恋人のようだったので
「天気がいいっていいね」と当り前のことを
しみじみと、私の中にこの瞬間を閉じ込めたくて
つぶやくと彼は笑っていた
目的地の神社に着いたけれど
もう元旦から二週間が経とうともいうのに
お参りの行列ができていて
彼はランチに30分一人で並んだからもう
並ぶのは嫌だとお参りしなかったが
私は、その横の夫婦神社でお参りした
彼も一緒に参らなかった理由は
少し寂しいから考えないようにした
別に夫婦神社でも安産祈願が有名な神社でも
お参りしとけばいいじゃんと思うのだが
彼の中では違うようだ
今日もこの国は平和である
彼と何気ないことで笑いあってくっつく時間が
何よりの今の私のすべてである
隣にいる男たちは、二年前の
晴れ着に身を包んだ頃と違うけれど
求めている何かは何にも変わってない
いつか、また晴れ着を着た女の子たちをみる日に
隣にいる男がその先も同じ人であればいいなと
そんな風に思った、大人二年目のあの日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?