⑥継続または終結過程について


はじめに
 これまで、システムズアプローチの面接過程を順番に追ってきましたが、いよいよ最後の継続・終結過程になります。面接の目的が未だ達成されていない場合は変化を持続したり、増幅していく継続過程となり、同様の面接過程を繰り返すことになります。また、問題が解消したり、面接の目的が達成された場合は面接は終結し適切な状態で治療システムも解消されることになります。場合によってはフォローアップ面接ということもありえます。

継続過程について
 セラピストは一回の面接が終わると、その面接で得た情報(コンテクスト・相互作用やパターン・不随するそれぞれの個人の枠組み)を整理・分類し、システムの概要を記したり、図示化したり(パターン図・家族構造図・枠組み階層図など)します。また、セラピスト自身がどのような仮説を設定し、どのような意図で振る舞い結果どうなったのかと、次回までに予想される相互作用のシミレーションなども記述して次回面接のための仮設を設定しておきます。
 そして、最新の面接で前回から今回までの変化(差異となる情報であり、それが追加情報なのか変更情報なのかをしっかり検討する)を確認しながら、その変化を増幅・定着させていきます。実際の面接では、ジョインニングをしながら来談者と家族が語る前回からの経過を質問していきます。そして、必要な情報収集を行いながら仮説の修正・設定・検証を繰り返し、設定した仮説を来談者と家族と共有したり、面接のニーズやモチベーションを面接の目的とつなげながら、来談者と家族の意図や期待、既に持っている能力や資源(SFAでいうリソース)や例外、現状の負担と今後の可能性それにともなう情緒的反応、変えやすいとこころ変えにくいところをなどを来談者と家族とやりとりしながら、治療的介入となる下地となる文脈を構成し、必要な介入(もしくは新たなコンテクストや相互作用やパターンの形成)を行う流れになります。

終結過程について
 面接を終結する過程で必要なことは、どのような状態になったら面接が終結といえるのかの定義です。吉川(1997)は、終結の見極めとして、「具体的な主訴の解消」と「具体的な来談者と家族のコンテクストが変化しているのか」の2点をあげています。また、システムズアプローチのセラピストの最後の仕事として「問題解消までの経緯の物語作り」をあげています。この仕事は、セラピストが来談者や家族と「どうしてよくなったのか?」をやりとりすることで、来談者と家族がセラピストの影響で変化したのではなく、自分たちが変化を起こしたのだという物語作りを手伝うことになります。
 実際の面接では、「ここまでの流れで、なにがよかったと思われますか?」と質問することで、来談者と家族の主体的な反応や行動に問題解消を文脈づけていくといえます。この物語をやりとりすることで、来談者と家族自身が、これまでの経過の反応や行動をコンプリメントできたり、問題をノーマライズできたりと、自らの置かれたコンテクストをリフレーミングできれば、今後に起こる変化に合わせて柔軟に適応できる能力や資源(SFAでいうリソース)を持っていることを確認できます。
 また、家族ライフサイクルを活用して、今後起こるかもしれない変化について話し合っておくことで。今後の問題の予防や、家族システムの対応の選択を増やすことができると考えられます。そのひつとに、「今回、来談することができたこと自体が問題の解消につながった」と来談者と家族が選択した行動(他者に相談できる能力など)をコンプリメントした上で、今後必要な情報や選択肢を検討することで問題の予防ができると考えられます。

おわりに
 簡単にですが、以上がシステムズアプローチの仮説設定過程になります。ちなみに、この一連の記事は必要があれば修正と加筆を行ってよりよいものにしたいと考えています。

引用文献
吉川悟(1993)家族療法ーシステムズアプローチの〈ものの見方〉,ミネルヴァ書房.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?