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「秋」のせいにして。

好きな季節はなんですか?と聞かれ、「春」や「秋」と答える人は多い。暑くもなく寒くもなくすごしやすいから、春はポカポカ 花がたくさん咲いて綺麗だから、秋は清々しくて 美味しいものがたくさんあるから、などなど。私がかつて恋をした人も、秋が好きと言っていた。

残念ながら、私は秋が好きではありません。むしろ苦手です。

正確には、夏の終わりくらいから秋が深まりきるまで が苦手です。意外とそういう人も多いのでは?というのは、この時期は自殺率が高いとか、精神不安定に陥る人が増えるとのデータも見られる。実際、人身事故で電車がよく遅れたりもしていて、秋が過ごしづらいと感じている人も多いのかもしれません。

眩しいほどの日差しの中、陽気な曲の流行る夏。ほぼ布地の足りないような服装でいたとて、暑いやん♪でやりおおせた夏。ビールを飲みすぎても、水分補給やん♪と多めにみてくれてたおおらか(?)な夏。暑いしか言えんのか?くらいこぞって暑いと唱えた夏ーー。

その終わりにさしかかるころから、布地が足りないことに、飲みすぎでダルいことに、アップテンポすぎた語呂合わせな曲に、気がついていく。。。ラジオからの切なソングに夏の終わりを惜しみながら、容赦なく日は短く、空は高くなっていく。あんなに汗ばんだ肌が、サラサラと乾いていく。

誰に教えられずとも、秋の訪れは肌感で報らされる。半袖がこころもとない。

どういうわけか、それにともなって、夏祭りや海や花火を一緒に見てきた好きな人とも、温度が冷めていく。ような気がして。

秋は苦手です。

そんな秋を、私はどうやって乗り越えてきたのだろう?

秋の好きな恋人と一緒にいたら、好きになれるかと思って過ごしていたとき。美味しい食べものを一緒に食べたり、映画をみたり、星が綺麗だと眺めてみたりしたのです。それはそれは、楽しすぎて、美味すぎて、綺麗すぎて、いちいちがくっきりしていました。豊潤すぎて、時が駆け足で過ぎてしまいました。その恋人との秋は、のちに、切なすぎる思い出となってしまいました。

また、ある秋には、秋を堪能することなく資格取得に打ち込もうと、セミナーに参加して勉強に打ち込んでみました。8日間の合宿にまでいき、この資格でお客さんも取れますよ、という段階までいきました。が、それがマルチ商法に限りなく近いものだと気がつき、高い授業料を惜しみつつ、スッパリ退会しました。盲目的すぎた秋でした。

どうにも、秋は苦手です。

読書に勤しむ。うん、素敵、いつもどおりが1番いい。秋だからといって、身構えず。

そうね、いっそ冬支度をじゃんじゃん進める。コタツをだして、ストーブも出して、冬用の布団を干して。うっかり寒くなっても大丈夫なように。

そうか、身構えていたのだ。私は秋に。

秋は何をするにもいい季節です、スポーツの秋、芸術の秋、文化の秋、食欲の秋、さぁ貴方はどんな秋をすごしますか?

というお決まりのあれに。まんまと身構えていたのだ。なんだか何かをしないと勿体無いような気がして、いつの間にか。

秋だからといって、何もしなくたって。できなくたって。

なんだか身体の調子が悪いな、気分がなんかノらないな、なんとなく切なくなってしまうな…なんて思ったって。思い出をひっぱりだしてしまって、ふとため息の多い日をすごしても。カロナールを飲んで、暗くしてウダウダと横になっていても。夜中に目が覚めて、それから考えない方がいいことの堂々巡りで朝をむかえてしまっても。

秋のせいだもの。

うん、秋のせい。



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