藤本 柊

気ままに綴ります。 ごゆるりお付き合いいだだければ幸いです。

藤本 柊

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マガジン

  • 木曜日の朝に。 <weekly>

    とある家庭の、木曜日の朝の風景。 週に一度の、ちょっぴり長いつぶやき。 コーヒー、紅茶、お茶のお供にどうぞ。 ビール、焼酎、ワインのお供にもどうぞ。

  • 「読書感想文」

    図書館で、あるいは本屋さんで出会った本たちとの時間をエッセイ風に。ジャンルはさまざま、その時の興味や関心に、素直に手に取り、呼応する自分の声を綴ります。

最近の記事

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フォーブル平井202号室

アパートの玄関ポストに手を突っ込んで、内側にテープで貼りつけられたカギを慎重に剥がし取り(もしも落とせば部屋へ入れない)、カギ穴へ差し込む。 カチャリ 自分の部屋へ帰るのに、なんだか侵入者みたいな緊張感だけれど、昨夜のバカみたいな楽しさの名残りなだけに可笑しかった。 薄暗い部屋の電気をつけると、 「来た時よりも美しく」 どこかの研修施設の張り紙にあったみたいに、きれいに片付いていた。 ドサッ コンビニのビニル袋を置いて、制服を脱いで手洗いを済ませ、小さな1人用の冷蔵

    • 今日は力みすぎてなかなか芯がとれなかった。目を閉じ、手に触れ、優しさを取り戻すこと、寄り添うこと。力任せに言うことを聞かせてはならない。 仲良くできそうな気がしてきたのは、土に触れてから一時間半を過ぎたころだった。

      • 木曜日の朝に。 52朝

        「おはようございます。」 会ったことはないけれどいろいろを知ってる素敵な女性と、腕を組んで歩いて、それは旅行先で、ホテルに帰るフェリーに乗り遅れて、USJのウォーターワールドみたいな世界観のアメ車風のボートに乗せてもらって、水銃に撃たれながらエメラルドグリーンの綺麗な海を渡り、地中海風のホテルへ着いた── 目が覚めて、知らないうちにアラームを止めて寝ちゃってたことに気がついて、慌てて起きる。次女も三女もすでに起きていて、洗面所からスマホで流す音楽が聴こえる。 もっさんも

        • 「From木曜日の朝に」スタエフ📻ご拝聴いただいた方々、レターくださった方々、ありがとうごさいました♪ https://stand.fm/episodes/6627405f712a38afe8ef8413 アーカイブ残ってます。ゆるっとお越しいただければ幸いです☕٭𓈒𓏸

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        フォーブル平井202号室

        • 今日は力みすぎてなかなか芯がとれなかった。目を閉じ、手に触れ、優しさを取り戻すこと、寄り添うこと。力任せに言うことを聞かせてはならない。 仲良くできそうな気がしてきたのは、土に触れてから一時間半を過ぎたころだった。

        • 木曜日の朝に。 52朝

        • 「From木曜日の朝に」スタエフ📻ご拝聴いただいた方々、レターくださった方々、ありがとうごさいました♪ https://stand.fm/episodes/6627405f712a38afe8ef8413 アーカイブ残ってます。ゆるっとお越しいただければ幸いです☕٭𓈒𓏸

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        • 木曜日の朝に。 <weekly>
          52本
        • 「読書感想文」
          35本

        記事

          だから僕は花を贈る

          至極透明な涙をためて 唇をぐっと噛んで 「全部 全部 嘘だったのね」 哀しみや苦しみや諦めや 寂しく冷たく言い放つ そんな訳ない 僕は君がとても好き

          だから僕は花を贈る

          一筋の芯をただ見つめる。

          午後に用事が入ってしまい、陶芸教室を午前にふりかえた。 土曜の午前は、初心者向けの教室で、土練りからはじまり、今日はロクロの芯出しをただひたすらに教わっていらした。 何年か前に教わったとおりの手順を、耳に聴きながら、私は先週の作品の「削り」の作業にとりかかる。 「全然あがらないんだけどっ」 「うわっ」 「っあ、きれちゃった」 土の凸凹と、ロクロの回りに、揺さぶられないように腹に力をこめて、ぐっと芯を出していく作業は、基本中の基本ながら、なかなかに力がいり、一番集中

          一筋の芯をただ見つめる。

          4.23 Tue. 13:30-14:00 https://stand.fm/channels/637a0fb3b4418c968df28ea8 フリートーク♪ゲストは あおさん です メッセージお待ちしております⇩ https://stand.fm/channels/637a0fb3b4418c968df28ea8/letter

          4.23 Tue. 13:30-14:00 https://stand.fm/channels/637a0fb3b4418c968df28ea8 フリートーク♪ゲストは あおさん です メッセージお待ちしております⇩ https://stand.fm/channels/637a0fb3b4418c968df28ea8/letter

          カムフラージュ。

          気まぐれにきたメッセージは、 ちょうどまあるいオレンジの夕陽が 家々の窓に丸ごと映っているのを、 運転しながら見かけた帰り道だった。 良妻賢母な彼女らしいメッセージに、家族のために夕飯の下ごしらえをするキッチンでの姿を思い出す。ソファーに座って編んでいたのは子どもの習い事用のカバーで、自分用の物すら編まなかった。 車を停めて、霞む空にぼんやりと沈んでいくオレンジを見届けながら、そう返す。 彼女を待ちながらよく本を読んでいた。二つの月のある世界*へ逃げ込んでは、根気よく彼

          カムフラージュ。

          木曜日の朝に。 51朝

          「おはようございます。」 目を開けると外の明るさに「!」となるけれどいつもの時間だ。モコモコパジャマを寝ながらにして脱いでいたみたいで、気が付いたら半袖で寝ていた。ひんやりお布団が気持ちいい…寝ていたい…。もっと…。 スヌーズでようやく起き出ていくと、三女は起きていて、次女はまだだった。部活はインターハイ地区予選が近く、延長部活もはじまって、さすがにお疲れのようで、「あ゛ー」とか「ん゛ー」とか言いながら起きてくる。 白湯に塩を(レモンをきらしたことに気が付いて早3日…)

          木曜日の朝に。 51朝

          言い負かしたかっただけ。

          「お父さんやお母さんから “うそはついてはいけません” と教わりませんでしたか?あなたはさっき“うそ” ついたんですよ、“うそつき” なんですよ」 受話器からそんなこと、まったくの赤の他人から、おそらく声からして歳下であろう関西なまりの人から、「うそつき」呼ばわりをされ、鼻息を荒く、指先が震えるほど、久々にフツフツと沸く怒りをフガフガ抑えていた。 電力会社(を名乗る)からのしつこいセールス電話に出てしまった、だけなのだけれど。 「うちは結構です、すみません」 とガチャッ

          言い負かしたかっただけ。

          春琴抄

          日暮れてくるころの部屋は、 放課後の図書館みたいで好きだ。 レースのカーテン越しなのが惜しく、ハンドル式のスライド窓を開け放ち、ジャッジャッとカーテンも全開にしたのは朝のこと。 黒猫が横切り 窓の番をする恒例。 風がゆるりとレースをひいて、半開きのカーテンはやがて影を、色気を、床に敷く。 筆慣れをしておくことを、そしてともすれば浮き足だち気味な(陽気に誘われ)心持ちを、サラサラと絵筆に整わせてゆく。 細く入り、太くしてスーッと力を抜く。 先端へ細かく気をあつめ、

          久しぶりのロクロ。 ブレない心で、腹を据えて。 集中力を使い果たしてきました。

          久しぶりのロクロ。 ブレない心で、腹を据えて。 集中力を使い果たしてきました。

          家を出たい姪っこへ。

          「はやく家を出て行きたい」 仕事を手伝いに来てくれる姪っ子が、いろいろ話しているうちに、そうこぼした。 彼女は、家族が大好きで、出先でもこまめに家族のLINEグループに連絡をして、終電には必ず帰ってくる。実際、傍から見ても仲良し家族だ。ただ、近ごろは、家に居たくないことが増えて、家族と食事をしたくなくて、一人でいたいことが増えたのだと。 こと、父親の言動に対してイラついてしまうのだと。 彼女は今、きっと大切な時期。 年頃の娘が父親のことを疎ましく思うようになる、という

          家を出たい姪っこへ。

          木曜日の朝に。 50朝

          「おはようございます。」 アラームをとめて、むくりと起きる。眠い目をこすりながら、もっさんもっさんの寝ぐせで白湯にひとつまみの塩とレモンを入れて、ズズズと啜る。 音楽を聴きながら洗面所にいる次女にも三女にも相手にしてもらえず、猫が足元へやってきて「ナァー」と擦り寄る。 「おはよー」 卵二つを割って白だし、チャカチャカと混ぜて、ジュンワーと卵焼きを焼く。炊きたてのごはんは小さなボウルに少し冷まして。 月曜日から学校がはじまって、二人とも 「聞いて!神クラス!!」 と帰

          木曜日の朝に。 50朝

          いざない

          図書館の前の、堤防の階段に並んで座って、川向こうの桜並木は満開に近くて。 私は唐揚げ弁当、あなたは味噌カツ弁当。 パチンと割り箸を割ると、上手に割れた私の隣で、あなたは片方が尖って不格好に割れて、残念そうな顔をしていた。 何も話さないでも静寂が気にならないのは、轟々と流れる川のせいかもしれない。 唐揚げを一つ、あなたのお弁当へ乗せると、味噌カツの端っこの一切れを、同じように私のお弁当へ乗せてくれる。 向こう側の堤防の道を、桜並木を、自転車がゆっくりと通って。 止ま

          いざない

          桜 来年も一緒にみる可能性のこと

          薄手の長袖を腕まくりしてちょうどいいくらいの、薄曇りの日差しが暖かな昼間、歩道を歩く人はいつもより多く、楽しげで。 ベージュや白のブラウスや、日傘や小さなチューリップハットやの、軽やかな装いで、手をつないだりなんかして。 早咲きの河津桜はひらひらと花びらを落とし、背も高い大きなソメイヨシノはゆっくり悠々と五分咲きで、川沿いを照らす。 心做しか水嵩の多い土岐川は、濃いエメラルドグリーンの流れを速めていた。 ようやく晴れた週末。 桜の木は、幹にしっかりと水気を蓄え、あたた

          桜 来年も一緒にみる可能性のこと