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(32) 日産 マーチR その1(通勤用) (1988年)

日産 マーチR その1(通勤用) (1988年)
所有期間 2003年09月~2016年10月

■日産 マーチR について
1988年に日産が国内ラリーBクラス出場のためにデビューさせたスーパーウエポン。
当時、国内ラリーでは、Aクラス(1300cc未満)、Bクラス(1600cc未満)、Cクラス(1600cc超)の3クラスに分類されていたが、全クラス優勝を狙う日産は1600cc未満であるBクラスに軽量FFカーとしてマーチの投入を決定。
当時のレギュレーションではナンバー付き車両は排気量に1.4倍した数値を用いていたが、1.7倍になる可能性を加味し、1600cc÷1.7倍からマーチの1000ccエンジンを930ccまでボアダウン。
そして、このエンジンに、スーパーチャージャー+ターボチャージャーの「ツインチャージャー」を装着し、SOHCながら110psを発生するスペシャルエンジンを市販化し、ラリー用車両としてマーチに搭載した。
このラリー用車体が「マーチR」であり、エンジンの高出力化に伴い、前後ブレーキの強化と徹底的な軽量化を実施。また、クロスミッションを搭載し、国内ラリーフィールドに最適なギア比設定を施した。
マーチRはあくまでラリー専用車両という性格から、パワーステアリングやパワーウインドウなどの快適装備は一切用意されず、オプションは本来エアコンのくるスペースにオイルクーラーを設定していた。(このため、オイルクーラーを装着した場合はエアコン装着不可であった)
もちろん、ラリーベースであることから、ステアリングやシート、標準タイヤは交換前提でコストダウン品が装着されていたが、反面、モータースポーツ用パーツのオプション設定は充実していて、ラリーオプション装着状態の車体を日産ディーラーから購入し、即投入可能となっていた。
(余談ではあるが、マーチRはあらゆる格式の国内ラリーを席巻し、ラリーBクラスのスタンダードを確立した)
また、翌年、日産はこのマーチRのエンジンを用いて一般ユース向けに「マーチ・スーパーターボ」をデビュー。こちらはギヤ比が一般向けになったほか、スポーティーパーツを装備し、初代マーチ末期モデルのラインナップのなかの「コンパクト・ホットスポーツハッチ」として人気を博した。

■現車紹介
Beostの部品取りのあと、このマーチRは大幅改装(笑)を受け、まったく異なるクルマになりました。

①改装前のマーチR

フロントビュー。ボンネットのフードバルジがMA09ERTエンジン搭載の証。 ちなみに、この時期、ノーマルのマーチはすでに最終マイナーチェンジによりカラードバンパーやファッショングリルに変更されているが、マーチRは何年も前の初期型の部品のままであった。
これがツインチャージャーであるMA09ERT。 加給のコントロールを各配管のエアーを用い、追加のソレノイドバルブで制御しているため、こんな状態。 キツキツなエンジンルームであるが、整備性は見た目ほど酷くない。

②改装後のマーチR(通勤仕様)

■「インチキなマーチ」概要

まずは、フロントビュー。
一見して、中期型NAマーチの顔になっています。 もともとマーチRのボディは中期型マーチLという廉価版(下から2番目)がベースになっていて、サイドウインカーは後期仕様、シートは中期5ドア用を使用し、フィレットプロテクターを装備しています。
というわけで、グリルを部分塗装(中期マーチi・z以上のグレードはこうなっている)し、ボンネットを入れ替え、バンパーに白いラインを入れれば、もう、マーチRとはわかりませんです。
サイドビュー。
中期NAマーチとの違いはフロントフェンダーのウインカーが後期型の丸タイプになっている点くらいです。 そこで、今回は、サイドウインカーをわざわざK11マーチ初期型の社外クリア品に交換しております。 また、マーチRには採用されていないドアモール(中期マーチi・z用)を装着しました。
リアサイド周辺。
フィレットプロテクター(リアフェンダー前方についているモール。マーチRと後期マーチターボのみ採用)を外したときの穴を塞いだような樹脂部品がついていますが、よほど注意しないとわからないと思います。
あと、リアサイドガラスがハメ殺しになっているため、「マーチi・z」や「マーチG」ではないと判断されます。
(もっとも、そこまで詳しい人は一握りの人間だけっす)
マフラー(フジツボ・レガリス)。
純正の2本出しマフラーはマーチR、マーチスーパーターボ、後期マーチターボに採用されたのみで、NAマーチにはポン付けできません。 というわけで、リアサイレンサー~出口をマーチスーパーターボ用のフジツボ・レガリスに交換しました。 NAマーチで2本出しマフラーというのもどうかと思うんですが、現にやっている人もいるんで、まあ、いいかと。
リアビュー。
マーチのデカールはどのグレードのものかわかりません(ディーラーのメカに選択を任せた) リアガラスはスモークフィルムを貼りました。
内装の白い部分を黒く塗ったり黒いビニールテープを貼ったりして処理しているため、透明なままだと、それらが丸見えだったもんで。
フロントシートとリアシート。
シート自体はBe-1用で、ヘッドレストはマーチスーパーターボ用を装着しています。 これらは色違いなのと、Be-1のシートがわりと特徴的なので、とりあえず市販品のシートカバーを装着しました。 室内を覗き込んで、シートカバーのかかっていない部分を見て分かる人にはBe-1のシートだとバレる可能性もありますが、そもそも、そこまで分かる人はほとんどいないでしょう。
室内 その1
Beost同様、汎用品のパワーウインドウ、集中ドアロック&キーレスエントリーを装着しています。 センターコンソール類はNAマーチの内装部品を流用しています。
室内 その2
ドアの内張りはマーチRのままで、内側上部の鉄板むき出し(白い塗装のままの部分)は黒いビニールレザーシールを貼りました。
(取っ手の下部についている黒い袋は、パワーウインドウモーターを隠すために装着しています)
ダッシュボード下のトレーは、マーチRには無い装備ですが、他のマーチの部品を流用しています。
(写真はありませんが、リアのトノカバーや内張りも同様に流用しています)
メーター周り
メーターは後期型マーチi・zのものに変更しています。(これにより、このクルマがマーチRだとはわからなくなっています) メーターの左にある四角い箱は、電子LEDタコメーター「ルミタコ」です。 (メーター交換によりタコメータがなくなったため、これで代用しています) また、メーターフード下の左右のスイッチは、各々、パワーウインドウのメインスイッチ、ECUモード切替スイッチとなっています。 ステアリングはマーチターボ(初期型の小変更後)のものを流用しています。
追加した室内灯。
マーチRの室内灯はルームミラー横に小さなルームライト(ドアスイッチ無し)があるだけだったので、エルグランド用の室内灯を追加しました。
サイドウインカー。 K11初期型の汎用品(クリアタイプ)に交換しました。
ブリジストン スーパーラップです。
本来、ホワイト塗装されているアルミホイールを、シルバーに再塗装しました。(鉄ホイールにみえるかな?)
エンジンルーム ボンネットをNAマーチ用にするため、インタークーラーを撤去し、アルミパイプで配管しなおしました。 また、吸気系の配管レイアウトを一部変更しました。 バッテリーは小型ドライバッテリーに変更しました。
真上からエンジンルームを撮影。
ボディ色をマーチRやマーチスーパーターボでは採用されず、マーチi・zのイメージカラーであるベルベットブルーパールに塗装し、各部を変更したことで、「フツーの中期NAマーチ」に見えるようになりました。 オーナーの性格の悪さがそのまま具現化したようなマーチです(笑)

・Beostとの比較
このマーチにより、私はMA09ERTエンジンを搭載したクルマを2台所有するわけですが、このマーチとBeostでは、まるで違うクルマになりました。

「エンジン関係」
最大パワーはBeostのほうが上ですが、日常使いでの気軽さはマーチのほうが良いです。
実際、マーチで全開走行することがないため、マーチのエンジンとBeostのエンジンを比較できないというのが実際のところです。
ただ、普段乗り(かなり優しい運転)のスーパーターボROM(スーパーチャージャーリミット2000rpmに変更)を用いているとき、BeostではまったくといっていいほどSC動作しないのに対し、マーチでは結構SC動作することや、レスポンス性はマーチのエンジンのほうが良いことなど、乗っていてエンジン仕様の違いがはっきり分かります。

「クロスミッションとノーマルミッション」
元気に走るならクロスミッションのほうが良いのは当たり前なんですが、通勤、特に高速道路の走行では、5速ギア×ファイナルギアのギア比が10%低いノーマルミッションのほうがありがたいです。

「パワステの有無と操舵性」
Beostは195-50-15のハイグリップタイヤなのに対し、マーチは155-70-13のコンフォートタイヤなせいもあり、マーチではパワステ無しでもBeostよりステアリングが軽いです。
また、走行中のトルクステアは純正ビスカスLSDではほとんど感じられないため、マーチの場合、重ステであることはあまり気になりません。

「足回りの違い」
そもそもタイヤが異なるため単純な比較はできないのですが、ハンドリング性といった部分では、「まったく異なるクルマ」といっていいくらい違います。
マーチのほうはNISMOラリーの中古品のショック&スプリングを入れていますが、Beostに比べれば、ヒジョーに軟らかくて普段乗りっぽいクルマです。

「使い勝手」
ロールバーもないし、フルバケットシートでもないマーチのほうが圧倒的に使い勝手が良いです。
なにより、マーチはハッチバックのため、気軽にトランクに荷物を載せることができます。(単にBeostの使い勝手が悪すぎという気もしますが)

■トータルで考えてみると
実際、勢いだけで復旧&仕様変更したマーチRですが、出来上がってみると、本当に通勤用にぴったりなクルマとなりました。
燃費もBeostがハイオクで12~14km/Lなのに対し、同じ走行内容でマーチならレギュラーで16~18km/Lとなります。
燃費に関しては、マーチはBeostより約100kg軽く、タイヤも細いなどのほか、インジェクターも小さいし、オルタネータ抵抗も小さいなど、細かい要因もあると思いますが、一番大きいのはギヤ比だと思われます。
マーチは基本的に通勤&チョイ乗り用(これは本当です)のみに使用するため、エンジンにしても足回りにしてもガツガツに仕様を詰めることはしないと思いますし、Beostのバックアップとしての価値もこれまで以上にあります。
(どちらかというと、Beostのバックアップというより、Beostの仕様変更によって発生した余剰パーツが搭載されていくような気がします。たとえば、Beostの足回りを仕様変更した場合、これまで使用していた足回りがマーチに装着される。といった関係になる)
もともと通勤用として購入したはずのBeostは、現在、すでにかなりハードな仕様になっています。
そういった意味では、マーチとBeostの2台所有は十分に成り立つ。そんな感じがしています。