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恋の序章

高校生までの恋は甘酸っぱかった。

それこそ王道だけれどback numberや西野カナが似合うような、どこか小っ恥ずかしくて、それでも帰り道にスキップしてしまうような恋だった。


中学生までの恋はソフトなクッキーみたいなものだった。

コストコで配られている試食のような、少し気になってはいるけれども本気で買おうと思っているわけではない、そんな感じの恋だった。言うなればお試し。それがなければ買わないし、でもそこで本当に美味しかったらちょっと手を出してみようかな、というような。手探りの恋。


どんなに私たちがちょっと待ってとお願いしても、時は流れていく。気がついたら成人を迎えていて、21歳にまでなった私は世界中でお酒を飲める年になっていた。


大学生の恋は、少し違う。

「恋心」にも様々な形が存在していることを知った。

相手がいる人への微かな恋心。叶えたいわけではないけれどその人との時間に温かい幸せを感じた。

恋心を寄せてくれる人への同情から始まった恋心、「のようなもの」。叶えてあげたいけれど情熱は感じられなかった。


高校生の時のような、「この人と付き合いたい!」という強い感情はもはや湧かなくなってしまった。駅から家までの道のりを、立ち漕ぎして帰りたいような気持ちになるようなこともなくなってしまった。

不器用な心の中を曝け出すためにお酒の力を借りていた季節も過ぎ、出会いを求めてお酒を飲む季節も終わった。

今の私にとってお酒は美味しい餃子のお供であり、良い音楽と一緒に気持ちよくなるもの。本音を出すためのスタートラインになり得ることもまだあるけれど、ポップスとジャズの間に決定的な違いがあるように、前者から後者の雰囲気に姿を変えて私の日常となっている。


信号待ちのキスが好きだ。相手がお手洗いに行っている間にそっと口紅を塗り直すのが好きだ。お店を出て、誰もいないエレベーターホールで手を繋ぐ瞬間が好きだ。待ち合わせの前に何回も鏡を確認してしまう瞬間が好きだ。帰り際駅まで向かう道中に、もう一軒一緒にどうですか、と言おうか言わまいかドキドキする時間が好きだ。

改札の前で別れる直前、繋いでいた手を離す瞬間は寂しいけれど、寂しいと感じられる程相手に愛着が湧いていたのだなあと再認識する瞬間が好きだ。


こんな感情は高校生の時は湧かなかった。

もっと無邪気に恋をしていたからか。無邪気という言葉に対してはポジティブなイメージがある。

良い意味でも悪い意味でも無邪気でなくなってしまった今の自分。

これを大人になったと言って良いものだろうか。


SNSで皆にキラキラしたデートを見せるのが好きだった。

でもそれはいつからか義務のような気持ちにすり替わっていたような気がする。その場の時間を切り取って他人に発信することで、本来2人の間に流れている時間を何十人分にも何百人分にも切り取って分散させて、その結果薄い時間になってしまっていたのかもしれない。

チームラボに行くよりも落ち着いた本屋に行きたい。流行りの新作よりもスターバックスラテにバニラシロップを追加してベンティで飲みたい。イベントは好きだけれど、人が多いところは本当は好きじゃない。ゴンチャに並ぶなら一蘭に並びたい。インスタ映えするカフェに行っても写真は1枚で終わらせて欲しい。

あなたと話がしたい。


いろいろな本音を飲み込んで、恋愛の仕方もデートの仕方も周りに合わせていたことが多かった。

他人からのいいねは嬉しいものだけれど、彼らはきっと30秒後にはいいねをしたことなんて頭から忘れ去っているだろう。

そのたった30秒のために自分がやりたいことを我慢して行っていた行動たちは、果たして私になんの利益があったのだろう。


「はやく彼氏を作りなよ」と言われる。確かに周りは彼氏がいる女の子で溢れていて、たくさんの愛を注がれている彼女たちは本当に可愛いし愛おしい。

それでも私はシングルでいたい。

でもそれは「孤独」という意味を含んだようなシングルではなくて、「様々な選択肢がある中で、私はシングルを選びました」という立場をとりたいのであって、決して「必死になって相手を探していますが見つからないのでシングルでいるしかないのです」という立場ではない。変なプライドである。

だから私は毎週デートをする。

でも決して恋人ではない。


昔の私は肩書きを求めて求めて、必死だったと思う。

それが今はどこか一歩引いて、自分をきちんと見つめた上での関係構築をして行こうと考えている自分がいる。

私は私を自分で幸せにしたいのであって、その役目を他人に譲る気はさらさらない。


去年の夏から「他人を自分の軸にしない」ということを大切にし始めた。

時たまブレそうにはなるものの、未だに心のどこかにずっとある。

私を100点満点に幸せにできるのは私でありたい。

その上で、その幸せを120点まであげてくれるような相手が見つかった時に一緒になりたい。

相手の幸せも120点にしたい。



たくさんの経験を経て、自分なりのゴールを見つけていきたいと思う。

読んでいただきありがとうございました。





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