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言葉はいつも多すぎる。

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朗読用に書いた作品のまとめ
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記事一覧

ヒミツノアト

あの日、秘密を打ち明けたこと
君は後悔しているだろうか
渡り廊下の向こうから近付いてくる上履きの音
すれ違うたび言葉をくれた
君の視線が好きだった

あの日、秘密を打ち明けたこと
僕は後悔しているだろうか
僕らしくあることと、君らしくいてくれること
天秤にかけて生きるのならば
隣に居られる日々がいい

君がいない毎日は、風に吹かれて倒れそうで
明るかった日差しの色も
白いだけの絵の具みたいだ

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夜の静脈

眠れない僕は家を出る

寝静まった街の中でも
耳を澄ませば音が聞こえる

風が揺らす木々や
唐突に弾ける電線の群れ

歩くたびに触れ合う衣擦れと
思い出したように現れる車のエンジン

それはまるで、耳の奥で鳴る静脈のよう
生きている限り、続いていく

ふと、空を見上げる
煌々と灯る街灯に、小さな蝶がはためいている
光の周りを行ったり来たり
集まりすぎてノイズのようだ

近付きたくないと思うのに

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