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鳥撃ち 水辺で狙う

ハンティングの新しい楽しみ方はこれだ

鳥撃ちのフィールドに出かけるとヤブや野バラに行く手を遮られ回収できないことがしばしばある。カモ撃ちでは、落水したカモを回収できないことも多いのではないだろうか? 

風が穏やか日であればカヤックは有効な手段であるし、鳥屋撃ちや大名撃ち(船頭付きのボートでカモ撃ちをすること)などではなく、広いフィールドをひとつひとつ探っていけるのだ。また、猟犬がいなくても落水した獲物を回収できるのも魅力だ。

クリークをカヤックで流すのはとても効率のよい方法だ。
撃ち落としたコガモを回収する

僕は定期的にまわるポイントがありそこでカモ撃ちをする。ひとつはポンド(沼)で、もうひとつはクリーク(小川)だ。どちらも水面に張り出したヤブがあり、日中カモが身を隠すのには最適なポイントがある。そこに潜む鳥たちをどう飛ばすかが獲物を得るうえで重要な駆け引きなのだ。

特に水鳥は、その駆け引きが面白い。ふたつのポイントでカモが出たのだが、ポンドでは高く飛ばれてしまい逃がしてしまった。

飛び立って急上昇してしまうと、散弾が届かない。
この日は、朝はキジ、日中はクリークのコガモと林のなかのキジバトを狙った

その後、クリークへと移動した。カヤックを浮かべ、こぎ出してすぐにヤブ下に数羽のカモがいるのが見えた。できるだけ刺激しないように流れに乗せる。20mほどまで近寄ると、ヤブの下から飛び立つコガモの姿が確認できた。周囲はヤブが濃い、飛び上がるのを待ってオスに狙いを定め引き金を引いた。くるりと反転して水面に落ちた。残弾を抜き、落ちたコガモの回収に向かう。

コガモはマガモ、カルガモに次いでうまいとされている。
味はよいのだが、 小さくて肉が少ない

上陸してコガモの腸を抜く。獲物はできるだけ早く血抜きや腸抜きをしたほうがよい。特に腸はガスが発生し、解体のときに破裂することもある。カヤックを撤収しているとキジバトが多く飛んでいることに気がついた。キジバトは味噌漬けにしてじっくり焼くと骨まで食べられる。

キジバトはだいたい午前7時ごろに飛び、エサ場に向かい、午後2時半ごろに寝屋に戻りはじめ、3時ごろには飛ぶ姿をほとんど見ることができない。通勤時間がある勤勉なビジネスマンのような習性をもっている。現在の時刻は午前10時。キジバトが飛ぶ時間ではないが、先ほどの銃声でエサ場から飛んだのだろう。エサ場をつつけばキジバトは飛ぶのだ。ヌマヤナギが生える河川敷を歩き、エサ場を移動する個体を狙う作戦だ。

キジバトは日中、エサ場の木やアシのヤブにいる。
竹ヤブにもいるが、跳弾があるので竹ヤブには発砲しない

猟場に着くと数羽のキジバトが僕の姿に気がついて飛び出した。しかし、木の上にいるキジバトが狙いではない。ヤブにつぐんでいる個体を狙うのだ。木にいる個体よりも飛び出しが遅いのだ。そのため十分に距離を詰めることができる。

倒木とバラのツルとアシがまばらにある場所に着くと、キジバトが飛び出した。飛行体勢に入る前に撃ち落とす。キジバトを確認して構え、射撃まで1秒に満たない時間だ。それ以上時間をかけてしまうと射程距離以上に飛ばれてしまう。

この時期キジは、一羽のオスが数羽のメスを連れている。
オスはメスを飛ばしたあとに飛ぶことが多い

一羽を落としその場にしゃがむ。できるだけ身を隠すようにする。すると、銃声で驚いた別のキジバトがまわってくる。それをさらに狙うという作戦だ。しばらくすると倒木に一羽のキジバトが降りた。これは「居鳥射ち」といって飛んでいない鳥を撃つのだが、相手に悟られなければじっくり狙うことができる。ゆっくり引き金を引くと、照星の先にいたキジバトが羽根を散らしながら落ちた。

キジバトは樹々の間を身を翻(ひるがえ)しながら飛ぶ。
射撃用クレーはハトの代わりにつくられたのだ

鳥猟はフィールドにいる狩猟鳥類の行動特性や、習性を理解することが猟果につながるのだ。

column

水辺の鳥狙いのウエアは濡れ対策を重視し、レインやウェーダー、
ウェーディングブーツを着用し、沈(落水)対策のためにベストと銃をつないでいる

❶ 散弾銃
鳥撃ちには上下二連銃か自動銃を使用する。重たいが安定性のあるレミントンの12番の自動銃を使用
❷ウエアなど
すべてモンベル製のウェーダーとレイン、ダウンパンツを着用
❸実包
12 番、5 号と7.5 号のマグナム弾を常備している
❹インフレータブルのボート
コンパクトで浮力がありリペアが容易なところが魅力。北米ではメジャーな方法だ

※当記事は『狩猟生活』2017VOL.1「リアル・ドキュメント鳥撃ち 水辺で狙う」の一部内容を修正・加筆して転載しています。

Profile

あらい・ゆうすけ
ワイルドライフクリエーター。フライフィッシング、ブッシュクラフト、ハンティングなど幅広いジャンルに携わる。著書に『サバイバル猟師飯』『アウトドア刃物マニュアル: ナイフや鉈、斧の使い方からナイフメイキングまで』『タープワーク: キャンプ、災害時に役立つ基礎知識と設置法』(誠文堂新光社)がある

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