見出し画像

落語その2・3・4

 いろいろあって素人落語をすることになったのは、下の「素人落語で初高座をやった日」に記したので、今回はその後の記録である。

 さて、落語を覚えるためにいろいろ本を買ったが、中でも筑摩書房の「古典落語」(全5巻)は、仕草や目線なども事細かく書いてあってわかりやすかった。そしてCDやYouTubeでその噺をいくつも聞いて、好きな噺家さんを見つけ、後はそれを聴きまくってタイミングを覚える。みたいな感じである。
 よく「速記本を読んだだけで覚えたというのはいかがなものか」みたいな批判を眼にすることがあるが、私だって落語教室なるものがあればそこに行っているのだ。私の住んでいる県にそれがないから、独学で覚えるしかないんであるが、逆に自分の覚えたい噺を覚えられるというのはメリットだろう。それと、私が入っているグループは、いわゆる選手権みたいなのに出る、というような生真面目な取り組み方ではないということだ。「趣味でなんとなくやって、なんとなく披露できればいいか」ぐらいの感じなので、私には合いやすかった。

 2回目の高座は2月21日で、ある地域の町内会の集まりであった。やったのは「松曳き」である。たまたま立川談志の「松曳き」を聞いたらすごく不思議な感じで引き込まれてしまったので、やってみようと思った。ただ、これはマイナーな噺らしく(誘ってくれた素人落語家さんも知らないと言っていた)あまり演っている噺家がいない。しかも立川談志の「松曳き」はちょっと特殊で、三太夫と殿様、三太夫の家来ぐらいしか出てこない(一般的な『松曳き』は、植木屋の八五郎が出てきて一悶着ある)。談志の師匠である五代目柳家小さんの落語を聞いてみたら、八五郎が出てきたのでこれは談志が変えてやっていたのかもしれない。
 なんとか覚えてやってみて、まあまあウケたのはウケたが、その後YouTubeで春風亭一之輔師匠の動画を見たら「粗忽ものは粗忽の釘が入りやすい、松引きは難しい」と言っていて、あー素人が難しい話に手を付けちゃったなあ、と変な気分になった。

 3回目の高座は2月25日で、昨年の8月に観客として参加した某古本屋兼スナックが会場である。「一門会」と銘打って友人等と合わせて5名がやるという大規模なものとなった。私以外は新作(しかも創作)を演るというのだが、私はそこまで器用ではないので(というより創作にあまり魅力を感じてないので)、「後生鰻」を演った。私は好きな噺だがマイナーらしく、ややウケたのはよかったが、落ちにみんな驚いたようだった。私以外の演目も面白かった。

 4回目、3月5日、友人3人で「なんとなく」やる勉強会。会場は友人が営む定食屋(といっても、メニューはなく店主の気まぐれで料理が出るという不思議な店)。演ったのは「ぜんざい公社」の改作で、ある落語家が作ったもの(名前は卑猥なので敢えて言わない)。まあまあ、ウケたものの、終わった後「公社はもう古いよね」と友人が言い、そうだよね、古いよね…と納得。「ぜんざい公社」はぜんざいを食べに来た男が、公社(国が設立する法人組織)の杓子定規な対応に振り回されるという話しだが、今どき「公社」はないし、役所の杓子定規な対応、というのも今どきあまり聞かないし。いろいろ考えさせられる高座だった。

 とまあ、こういう風にいい加減にゆるく落語をやっているのです。(『李さん一家』みたいな終わり方)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?