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ブルーライト・ゲームキッズ

 暗いベッドルームに一人の少年がいた。ゲーミングチェアに座る彼は白いパーカーを着ていて、茶色の髪は中性的な長さにカットされている。目の前にはPCモニターがあり、唯一の明かりとなるブルーライトを放っていた。少年の頭部にはヘッドセットが装着されている。手元にはレバーレスコントローラ―。これは細長い箱の表面に12個のボタンがついた奇妙な代物だ。

 モニターの中では対戦が行われている。二人のキャラクターによる、一対一の戦い。格闘ゲーム。

 ヘッドセットの向こうから少女の声が聞こえる。早口で、甘ったるい声。「端の起き攻めでとりあえず設置するのが最近のトレンドなんですが~」

 少年は画面を凝視しながら、両指でボタンを操作する。形勢は不利。焦燥が表情に表れている。

 少年の操るキャラが画面端に追いつめられた。ダウンを奪われる。少女は宣言通り、設置技を仕掛けた。

「これって冷静に考えればフレーム微妙だしあんまりよくない気がするけど、猫くん相手にはこれで勝てるし逆に猫くんはなんでこれを許すのかって疑問があるけどまあ」

 喋りながらガード崩しの連携を仕掛けてくる。彼は受けるしかない。いつもの負けパターン。せめてもの抵抗として、叫ぶ。

「死ね! セットプレイ厨!」

「あは、このセットプレイは相当ダメだけどね~59個ある内の下から5番目、つまりこれは舐めプだけど猫くんって」

「死ね!」

 中段技からガードを崩され、やたら長いコンボを食らう。心だけが削られる暇な時間。そしてそれが終わる時、体力がゼロになった。彼の負け。

「……ッ!」

 ――バン!

 少年は叫ぶ代わりにコントローラーを殴った。

「うわ、台パン? 怖っ……」

「痛っ……」

「まあ負けるのも経験ですよ猫くん、でも負けから学ばないやつはつまり愚か者で、猫くんがそうじゃないことを私は信じ」

「死ね」

 彼はボイスチャットを切った。


 猫とレザ。それが二人の名前。毎日一緒に遊ぶ、顔も知らない友達。

【続く】

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