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障がいを持つ30歳女性の果てしない恋

小学生の時からの友人は
障がいがある。


生まれた時の事故で、自分でトイレに行ったり食べたりする事ができない。

今年30歳になる。

もう、20年以上の付き合いだ。



毎週2回の電話を欠かさない。
毎週2時間、家に行って話し相手になる。

これをルーティンのように何年も繰り返してきた。ここまで長い付き合いは私くらいだと思う。

彼女は全力で人と繋がろうとする。今持っているすべての手段を使って。

私は押しに激弱い人間なので、「会いたいから来て」と言われると行ってしまう。(だからここまで続いているのだが)

彼女は恋多き人生だ。
誰かをいつも全力で恋している。
全身全霊で「好きだ」と表現する。


職場の職員さんに。仲間のスタッフに。


直接アプローチするし、好きな人に少しでも会えるように、社長に直接言いに行く実行力がある。(結果、毎週話す時間を確保して貰っていた)


ところで、

私は手紙を書くことを頼まれる。

彼女が言うとおりに手紙に書くのだ。

Aさんへ

 いつも支えてくれてありがとうございます。
 この前話を聞いてくれて嬉しかったです。

 他の職員さんに「Aさんのことを本気で好きだけど、職員とスタッフが付き合えないよね?」と聞いたら、「お互いが良ければ付き合えるんじゃない?」と言われました。

Aさんがフリーだと聞いて、嬉しく思いましたが、もし他の人に取られたらと思うと焦ってしまいます。だから、好きと今伝えたいんです。
私は諦めません。


私は言われたまま書きながら、つい書くのを止めてしまいたくなる。
「またキズつくよ」とか、「好きっていうのはもっと仲良くなってからにしたら?」とか。

曖昧な言葉に変換させようとしてしまう。これまでに何度も大泣きしてきた彼女を見ているし、おそらく私自身の中に〈障がい者の恋愛は難しい〉と思っている部分があるのかもしれない。

障がい者を主人公にした映画は、主人公が美女orイケメンであり、障がいを持っていてもほとんどの生活を自力でできる設定が多い。

彼女には、儚くて、恋心を胸の内に秘めるヒロインのイメージはない。
『こんな夜更けにバナナかよ』という映画化された小説があるが、そのイメージがぴったりだ。

とにかく押しが強い。
出来ないことはないと心から思っている。
押して押して押し倒せば何とかなると
思っている。

「言わずに後悔したく無いから、今言う」

そう言われると、へい、書きます。としか言いようがない。

きっと彼女はこれからも誰かを愛し続けるんだろうなと思う。

恋が叶わなくても次の恋を求めて。
私はその度に手紙を書いていくのだと思う。
変わりなく迷いながら。





#障がい者 #恋愛 #エッセイ

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