見出し画像

司法試験・予備試験対策 租税法(所得税法)1問1答

割引あり

第1 所得税の基礎
Ⅰ 所得の概念
Q1 包括的所得概念とはどのような考え方か。
 人が収入等の形で新たに得た経済的利得をすべて所得と捉える考え方。
 (cf.消費型所得概念、制限的所得概念)
Q2 現行所得税法が包括的所得概念を採用していると理解できるのはなぜか。
 一時所得と雑所得に課税しているから。
Q3 帰属所得とは何か。
 自分の労働力や自分の所有資産から生じた消費を帰属所得という。
 (ex.自分で行った掃除、自己所有のDVDで映画を観賞)
Q4 帰属所得が原則非課税とされる理由を説明せよ。
①収入を基礎として所得を考える通説からすると、収入が得られていないのに所得があるというのは不自然である。
②あらゆる耐久消費財の所有や自己の労働から帰属所得が生じ、最終的には余暇も帰属所得になり得るなど、範囲が明確ではない。
③把握することも評価することも困難であり、税務上の執行可能性が乏しい
④帰属所得は基本的に非常に少額であり、かつ、低所得者層に集中しているため、これを課税の対象にしなくとも税負担の公平の観点から問題が少ない。
Q5 帰属所得に課税する特別の規定の内容を説明せよ。
①棚卸資産等を自家消費した場合、その資産の時価が事業所得の総収入金額に含まれる(39条、令86条)。
②農産物を収穫しただけで、その時価を総収入金額に算入する(41条、令88)。
 これらの規定は棚卸資産(売るための資産)を時価譲渡した場合との公平性を確保するための特則である。
Q6 損害賠償金の非課税を定めた規定を指摘せよ。
 所得税法9条1項17号、同施行令30条
Q7 損害賠償金を非課税とする理由を説明せよ。
 「これらの金員が受領者の心身、財産に受けた損害を補填する性格のものであって、原則的には受領者である納税者に利益をもたらさないからである」(マンション建設承諾事件判決:大阪地判昭和54・5・31)。
Q8 非課税とならない損害賠償金にはどのようなものがあるか。
・心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金(令30①)
・不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金(令30②)
・心身または資産に加えられた損害につき支払いを受ける相当の見舞金(令30③)
Q9 違法な所得も課税対象となるか。異なる見解を挙げ、その当否を論ぜよ。
 まず、違法な所得への課税はその所得の国家による承認につながること、②違法な所得はいずれ被害者に返還されて利得者が失うものであることから、違法な所得は課税対象とならないという考え方がある。
 しかし、所得税法が採用する包括的所得概念のもとでは、純資産の増加の事実が重視されるから、違法な所得も現実の管理支配が及べば課税対象となると解すべきである(利息制限法違反利息事件判決:最判昭和46・11・9)
Ⅱ 課税単位
Q1 所得税法はいかなる課税単位を採用しているか。
 原則として、個人単位主義を採用している(5条1項、2条1項3号、21条参照)。

ここから先は

10,579字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?