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学力下位層の司法試験・予備試験受験

  1. 記事の目的
     この記事では、東京・京都・一橋・慶應(成績上位層)・早稲田(成績上位層)に属するような学力上位層に属さない方へ向けて、司法試験及び予備試験受験の心構えをお伝えしたいと思います。

  2. 学力差が司法試験・予備試験合否結果に及ぼす影響
    https://www.mext.go.jp/content/20230111-mxt_senmon02-000026579_6.pdf
     こちらの資料からも分かるように司法試験予備試験に合格する可能性が高いのは上記の学力上位層であり、それ以外の人が司法試験予備試験に合格するのは数字上は非常に困難であることが分かります。これは令和4年だけでなく他の年度のデータで見ても同じです。
     司法試験の場合は、合格者数が予備試験の約3倍なので、単純に間口の広さゆえに学力上位層以外の人の合格可能性は上昇すると思いますが、予備試験な場合と似たような合格者比率にはなっていると予想されます。
     すなわち、司法試験や予備試験受験以前の学力は司法試験・予備試験の合否結果に大きな影響を及ぼすといえそうです。

  3. 学力差とは何か
     次に、学力差とは、どのような力の差のことを意味するかを考えてみます。
    学力上位層の多くは有名私立中学の受験を経験し、そこからも勉強を継続して名門高校に進学、その後東大・京大・一橋などの最難関国公立大学受験に向けた受験勉強をしてきた人達です(早稲田・慶應の学力最上位層は東大にギリギリで落ちたようなレベルの人がほとんど)。
     このような人達が共通して有する能力の中で、司法試験・予備試験の合格と密接な関連性があると思われるのが、文章読解力と論理的思考力です。
     文章読解力とは、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力だと定義されています。要は、文章の意味を理解した上で、その理解した知識を使って、物事を深く考えられる力が文章読解力ということでしょう。
     論理的思考力とは、物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍なく、筋道を立てて考える力のことを意味します。これは、目的地(結論)に至るまでの道筋を順番通りに過不足なく説明できる力のようなものといえるかもしれません。
     私は、司法試験・予備試験受験の観点から、学力が高いというのは、以上の文章読解力と論理的思考力が多くの人たちよりも発達している状態のことをいうと考えます。したがって、学力に差があるというのは、これらの能力に差がある状態のことをいいます。

  4. 学力の差がなぜ司法試験・予備試験の合否結果に大きな影響を及ぼすか
     司法試験や予備試験においては、8〜10科目という膨大な試験範囲について、試験問題として提示される大量の文章を読み、当該問題の解決への道筋を体系的に整理し、矛盾や飛躍なく、筋道立てて考え、それを自分の言葉で文章化して説明することが求められます。このことからすると、司法試験や予備試験は先ほど述べた文章読解力と論理的思考力がもろに要求される試験だといえます。
     このような試験の性質上、上記の意味での学力差が試験の合否結果を大きく左右するのも当然といえます。
     また、試験対策として求められる勉強としても、司法試験・予備試験に出題される可能性の高い法律問題の解決へ向けた道筋が説明されているテキストを理解し、利用し、熟考することが求められます。なので、文章読解力と論理的思考力の差は普段の勉強の質にも大きな影響を及ぼすことになります。学力の高い人は合格に向けてより効果的な勉強ができて短期間でもぐんぐん合格に近づき、学力が低い人は効果的でない勉強を長期間継続せざるを得ないことになります。
     このように試験の性質及び普段の学習効率の両面で学力の差は大きな影響を及ぼすから、学力の差が司法試験・予備試験の合否結果に大きな影響を及ぼすことになるのだと思われます。

  5. 学力下位層の司法試験・予備試験受験の心構え
     学力上位層に属していない(正確に言えば、文章読解力と論理的思考力が早慶の成績上位レベルまで発達していない)場合、司法試験・予備試験の受験は非常に過酷なものとなる可能性が高いです。
     そのような方がどれだけ必死になって勉強しても、1年間の受験勉強で合格する可能性はゼロに等しいですし、2年、3年と勉強しても合格する保証はありません。基本的に、文章読解力や論理的思考力は1〜2年という短期間で急に向上するようなものではありません(学力上位層の人達は小学生の頃から勉強を続けているのです)。
     なので、自分が受験下位層に属する場合、司法試験・予備試験受験に挑戦することは、自分に向けられていないコンテンツに手を出そうとしているのだということを自覚する必要があります。自分に向いていないことを何年も頑張り続けるのは本当に苦しいことです。おそらく、何度も、やめた方がいいかもしれないという考えが頭をよぎることになると思います。
     しかし、司法試験・予備試験挑戦の道が長く険しいものになるのだとしても司法試験・予備試験に合格したいんだという強い覚悟をもって挑戦を始めるのであれば、これから立ちはだかる困難にも粘り強く立ち向かえるでしょう。
     何も積み重ねがない私でも1年、2年勉強すれば司法試験・予備試験に受かるかも(1年で合格するための講座があるのだから!)という考えは非常に危険です。学力下位層にとって司法試験や予備試験受験は想像をはるかに超える厳しい関門です。このことをしっかり理解した上で、大きなリスクをとることと、長く厳しい受験生活になることも覚悟した上で挑戦することを強くおすすめします。
     そのような覚悟をもって、尋常ではない努力をひたすらに続けることができれば合格への道が拓かれるでしょう。

  6. 最後に
    厳しい受験生活に身を置かれている方へ
     私は、大学2年生の頃に司法試験合格を目指すことに決めて塾には行かずに独学で受験勉強を始めました(塾にあえて行かないというよりは全くお金がなかったので行けませんでした)。初めは法学部だから弁護士になろうかなぐらいの本当に浅はかな動機だったと思います。
     独学で、何をすればいいのかよく分からないような状態から、5年間勉強して、やっとのことで司法試験に合格しました。
     この5年間は常に前に進んでいたわけではなく、むしろ後退しているのではないかと思われるような期間もあったように記憶しています。周りには1、2年で予備試験に最終合格するような人も1〜2名はいたので、この人達と自分を比べると自分に司法試験は向いていないのだろうと考えたこともあります。
     結果が出ず、何者にもなれない自分と向き合い続ける必要があった5年間は今思うと苦しかったです。
     あのような苦しさに耐えて勉強を続ける皆さんを本当に尊敬してます。なぜ司法試験に挑戦しようと思ったのか、今なぜ司法試験の勉強を続けているのか。皆んな色んな思いを抱えて挑戦を続けていると思います。
     時には自分を許しつつ、気持ちが続く限り諦めないで頑張ってください。皆さんの努力が実を結ぶことを心から願っております。
     

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