小説③お金や仕事のない世界での人の価値

爆発したターミナルは炎に包まれていた。数十メートルにわたって炎上しているところに警備用のドローンが無数に集まってきて、消火活動に当たっている。警備用ドローンは普段は街中のモニタリングのために飛んでいるが、こういう緊急事態の時には、すぐに駆けつけてくる。消化機能も搭載しているので、空から消化に当たってくれている。消防専用のドローンも数分で駆けつけてきたので、あたりは100対くらいのドローンが鎮火に当たっている。警備用ドローンが駅の構内に逃げ遅れたものがいないか偵察に入っていくのが見えた。

イブ『中の状況が速報で届きました。映像をご覧になりますか?』僕たちのこめかめに埋まっているチップのイブとは会話ができるようになっている。会話といっても音声でやり取りするわけではなく脳にダイレクトに届く。僕たちは頭の中で『思う』だけでイブには言いたいことが伝わる。昔の人が見ていたら、テレパシーでコミュニケーションをとっているようなイメージを持たれるかもしれない。

レンジ『中の状況がもう届いたの?見せてくれる?』イブに伝えると僕たち全ての国民に与えられているドローン『アダム』がホログラムを出した。彼は多機能である。

駅構内の映像は火炎放射器でドローンを威嚇している人間の姿を映し出していた。その数は5人。他にも数人見えるが、煙でよくわからない。

イブ『どうやらテロのようです。人造人間が人質にとられているようです。』  

全てAIで管理されている世界なので、火災や爆発が起こること自体がかなり珍しいのにテロだなんて・・・

レンジ『犯人のグループは普通の人間なの?こういうのって評価ポイントはどうなるのかな?』

イブ『ええ。5人とも人ですね。評価ポイントはおそらくかなり下がるものと思われます。』

僕はふと思ったことを彼女に聞いた。

レンジ『ペナルティの内容って何?』

イブ『お答えできません。』

続                                     

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