エンタメとマーケティング9 山上兄弟のリブランディングを考える

「てじなーにゃ」のフレーズで一躍有名になった小さなマジシャン、山上兄弟。このブーム、もう10年以上前になる。小さかった彼らもいまや20歳を超えた立派な大人に成長している。

しかし、彼らはそのせいで苦悩しているようだ。

先日のテレビ朝日の番組「しくじり先生」のコーナーで同じく子供の頃から芸能界で活躍していた内山くんこと内山信二さんに相談していた。

最年少マジシャン、小さくて可愛いてじなーにゃの山上兄弟を「売り」にできなくなっているのだ。

そんな彼らは今後どうすればいいのか、マーケティング的な視点からリブランディングをするとどうなるか、考えていきたい。

まず、彼らの最大の問題点は「子供の可愛いてじなーにゃ」のイメージを自分たちが持ち続けていることだ。確かにショーやテレビで可愛く「てじなーにゃ」と言えば視聴者は「あぁ山上兄弟か」と解るだろう。挨拶だけで「誰」なのかが伝わる便利な言葉である。

しかし、現在あの可愛らしいポーズを20歳を越した二人が、低くなった声で言うのだ。不自然を感じざるを得ない。その上、彼らが「てじなーにゃブーム」を巻き起こしたのは10年以上前である。若い世代は記憶にない、知らない世代も増えてきている。

今の「てじなーにゃ」という言葉には当時ほどの効果効用はない。

では「てじなーにゃ」を止めるのか、というともったいない。「てじなーにゃ=山上兄弟」という図式は多くの人が持っているのも事実なのだ。なので、この言葉や要素を生かして「今の山上兄弟」に最適な形にすればよいのだ。

幸運なことに、山上兄弟は成長して「イケメン」に育った。その要素を活かさないのは勿体無い。

では、どうやって生かすかが問題だが、これは簡単だ。

元のイメージは「可愛い子供」だった。ならば単純ではあるが「セクシーな大人」になるのが最良の策だろう。大人の男になった、イケメン兄弟を売りにすることで大きなインパクトがある。印象の異なった演出のイベントやテレビ出演を行えば、知名度もあることからマスコミに取材の期待もできるため、パブリシティ広告も可能である。

「大人のセクシーなマジシャン」は多くいる。

テレビで活躍しているプロマジシャンでは「セロ」が有名である。しかし、セロはあくまで外国人的な海外向けなセクシーである。

日本的なイケメンは今のところいない、その上兄弟である。今の彼らに無理のない差別化が可能である。セクシーに「てじなーにゃ」をどう言うかは置いておいて、猫イメージ等は日本のサブカル文化的にはセクシーさの象徴でもあるので、多角的展開にも良いだろう。

差別化はできた。しかし、問題は市場の方にもある。マジシャン市場はマジックブームのたびに、ある程度は大きくなるがブームが終わるたびに小さくなり、一定の小さな市場を維持している。

「しくじり先生」で彼らが相談していた「営業が減っている」という問題だが、これはマジシャンの営業市場、イベント、テレビ出演の市場の小ささが問題である。

ではなぜ、昔は多くの営業があったのか。

それは自分たちが「山上兄弟の市場」を生み出していたからだ。彼らがいたのはマジシャン市場だけではなく、子供タレントの市場と2つの市場を股にかけた「山上兄弟の市場」にいたのである。なのでマジシャン市場だけに留まっていなかった、そして自分たちでマジシャン市場を拡大していたため、多くの活躍の場があったのだ。

しかし、マジシャン市場は日本国内で、ある一定の需要は常にあるものの小さいものである。市場の成長としては小さく、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の分類では自ら市場を成長させるくらいでなければ「金のなる木(キャッシュ・カウ)」か「負け犬(ドッグ)」しかなれない。その中で彼らは知名度もあり、子供の頃から現在まで低い投資で大きな額を稼ぐ「金のなる木」に分類されていただろう。


しかし、今後を考えた時、大きな市場を狙い世界に進出するか、を考えると難しいだろう。彼らのマジックを全て把握しているわけではないが世界のマジック市場でウケるかと言ったら否であろう。語学の問題などもあるが、世界の市場で売るなら「CUTEな少年マジシャン」となり、再び年齢の壁にぶち当たるだろう。

それでは現在の悩みの二の舞だ。

これから、どうやって売っていけばいいか。「しくじり先生」の番組内では兄は「マジシャンを軸に俳優」と書いていた。

確かにあの顔ならイケメンの若手俳優にも負けないだろう。身長も他の共演者と比較して170㎝はありそうである。決して高くはないが大丈夫だろう。

しかし、現在の俳優市場を考えると、出遅れている。

空前の2,5次元ブームでイケメン若手俳優は溢れかえっている。演技も、勿体無いほどレベルが高い者、王道の変身ヒーローから成長を遂げているもの、滑舌もままならない者、それでも元の2次元の人気もあいまって、多くのファンがついている。今ほどの舞台ブームではない数年前から活動していれば先発優位性も期待できたが、現在は溢れている。

「しくじり先生」内でも指摘されていたが「マジシャンを軸に俳優」は無理だろう。現状の若手俳優市場を勝ち抜けられないであろう。

しかし、発想自体は悪くないと私は考えている。「しくじり先生」内で内山信二さんに「俳優業そんなに甘くない」と指摘されていたが、はっきり言ってこればかりはやってみないと解らない。もしかすると物凄い才能を秘めている可能性もある。

その上、彼らが別の市場で活躍することにより、別の市場で彼らのファンになったお客様が、マジシャンの彼らにも興味を持ってもらえれば市場は広がる。

既存のマジシャン市場が小さいなら自らの手で広げてしまえばいいのだ。

ただし、俳優業にも真摯に取り組んでいただきたい。これは言わずもがなではあるが、周りの目からも明確にわかる形「マジシャンを一時休業」して取り組むべきである。

本当に真摯に取り組んでも、目に見える形というもの大きなイメージやインパクトを与えるもので、もし俳優として売れて実質マジシャン休業よりも、俳優業修行に真摯に取り組むために休業の方が印象は良いだろう。

名前は売れている、話題性もある、後は本人たちの努力と才能次第にはなるが、俳優業進出は選択肢として良いと考えている。

今、山上兄弟は「マジシャンとしてのポジショニングの方向転換」の必要性、そして「市場開拓」という2つの大きな問題を2つ抱えている。これらを上手く乗り越えて、今後もマジシャンとしても活躍しながら芸能界にも残って欲しい。

そんな彼ら山上兄弟が、15周年を記念して2016年8月11日に大掛かりなマジック公演を計画しています。しかし、大掛かりなマジックは装置等を用意するお金が必要になるため、クラウドファンディングで集めています。期限は2月28日です。

「もっと宣伝しろよ!」「こういう告知の仕方しようよ!」等色々なツッコミはあるのですが、ひとまず頑張って欲しいです。

山上兄弟公式ブログ クラウドファンディング説明ページ

http://ameblo.jp/yamagami-b/entry-12123918119.html

クラウドファンディングページ

https://readyfor.jp/projects/6178

頑張れ山上兄弟!

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