診療情報管理士の仕事が面白くないという後輩への手紙

病院の外来課から診療情報管理課へ異動したスタッフが仕事が面白くないと言っていたのでこれはいかんと手紙をしたためた。

まず一つに一般的な医療事務と言われる仕事と比較して管理室業務は達成感を感じにくいことがあると思います。ただ毎日パソコンに向かってカルテの内容を読み取り、地道に入力する仕事は苦行に近いものがあると思います。毎日忙しくくるくると仕事をこなす外来とは大きく異なります。何のために苦行を行っているかが今は明確でないために不毛な入力をしていると思われても仕方が無いと思います。しかし間違いなくその入力一つ一つの仕事が最終的に病院のためになっています。今後少しずつ理解してもらえるように集計の仕事等も行っていってもらおうと思っています。そうすれば今の苦行も意義のある仕事として認めてもらえると思います。どの業務を遂行するときも気持ちや目的の持ち方でモチベーションが変わりますので、その部署に適したマインドセットに変える必要があります。僕個人の考えですので正解とは言えませんが少しのヒントを示したいと思います。本当の正解は毎日の業務の中で自分なりのものを見つけていってください。

診療情報管理室では自分で仕事の進捗管理や、課題を見つけ解決していくスキルが求められます。医療情報の入力、整備、抽出、分析の一連の仕事は学校で基礎を学んでいてもイメージしにくいものだと思います。もし忘れていたとしてもこれから経験を積み重ねていけば大丈夫ですので安心してください。様式1の入力をしながら一つ一つの症例を詳しく見てくださいと言っているのもスキルアップの第一歩で医学的な知識や当院の診療の流れを知ることは先生とお話する際や病院の運営を考えるにあたって必要になるためです。わからないことは随時調べておくようにして欲しいと思います。また当部署で仕事をするにあたり視点を変えた方がよいと思われることは僕ら管理室の仕事は誰のためにあるかという問題です。外来会計は患者さん対応の表舞台が主であるのに対し、管理室では患者さんとはほとんど接せず、病院の軸を裏方で支える立場にあります。毎日入力してもらっているデータは決して不毛なものではなく病院を病院として機能させるための提出資料に繋がることだけでなく、経営層や医師、看護師等への様々な資料の源になります。広義で考えれば脳神経外科や循環器科の学術資料としても実際に提出し利用され医学の発展にも微弱なれども寄与しています。みなさんはまだ若いですので難しい話はもう少し経験を重ねた時にわかってくることですので、今は目の前の仕事を一生懸命丁寧に、たまにリフレッシュしながらこなしてくれればと思います。

まずは前述の正確な入力と、抽出を自在にできるように日常の業務に取り組んで欲しいと思います。整備というのは一旦入力した情報であっても人間による手作業であるため、どうしても間違いが出てきます。仕事に慣れてきたら、日々の入力の中で見直しをする手法や再発防止策を考え出し、データの精度を常に維持するにはどうしたらいいかみんなで考えていきましょう。データの精度は当部署の生命線であります。経営層や医師から提出する資料の信頼を得られなければなりません。これまでも絶対に間違えないことを念頭に資料作成をしてきました。ある程度の信頼関係はできているのでこれを維持するように自分が作成する資料はこれでもかと言うほど見直しをして絶対の自信を持って出すようにして欲しいと思います。最も恐れていることは信用を失い、どうせ間違っていて当てにならない資料だと思われることです。データの精度が100%でないときは、エラーが起きている部分を把握し、どの程度信用できる資料かを説明できるようにしておく必要があるでしょう。資料に記載された数値は勿論ですが、意見を訴えていく上で見た目も相当重要であるためデザイン的なところも学ぶ必要があると思っていますのでこれらを心に留めておいてもらえればと思います。

ICDコーディングの知識もIT化で今は必要性が薄れてきていますが、ICD11等への動向は診療情報管理士として押さえておく必要があります。IT化に関しては業務効率化をする上では進めて行くべきと考えています。緑本を開いてコーディングしている病院もあるようですが今となっては不要な手順と考えます。ただし、緑本の構成やコーディングの仕組みは理解しておく必要がありますので実習生に教えられる程度にはたまに開いて思い出してください。
 IT化が進むにつれデータの持つ潜在的な価値はどんどん上がっています。データもただ存在するだけでは無価値なので僕らの仕事でデータに新しい価値を付加して行きましょう。たくさんの数字から一部を切り取って意味を説明できればそれは立派な価値になります。見せ方も人それぞれで、ある意味クリエイティビティな部署と言えます。(実際は非常に地味な作業の連続ですが)自分で考えたその価値を受け入れられた時に今の仕事が楽しいと感じてくれればと思います。
外来会計が無ければ病院は回りませんし、診療情報管理室も同じく無くてはならない存在です。これまで診療情報管理室が行ってきた仕事は決して完成形ということはありません。世の中も常に前進しており、最新の技術について学ぶことも大事だと思います。今はまだ酷な話かもしれませんが、新聞などで新しい情報を入手しておくことを習慣化しておくと見識が広がります。ITリテラシー(ITに対する理解すること)、AIリテラシーはこれからの診療情報管理士に必要です。今行っている入力、整備、抽出、分析は必要でなければならない業務ですが、本質ではありません。本質は出てきた結果を基に深く考察し、発信することにあると考えます。いつでもこれが今の最適解なのかを考え、みなさんのフレッシュな意見も取り入れていきますので楽しい部署を作っていきましょう。僕の目標は極限まで効率化し1クリックで全ての業務を完了させ、なるべく仕事をしないようにすることです。

相談はいつでも受付中です。気負わず楽にいきましょう。

#診療情報管理士

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?