見出し画像

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(2017年/アメリカ) ネタバレあり感想 モンスターバトルまでの道のりが長すぎた映画。

2018/7/29に『趣味と向き合う日々』に投稿した感想記事の超加筆修正版です。


イムホテップが女体化してトム・クルーズに恋するという事で、公開前大変話題になった映画です。

 

『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』

(The Mummy)

マミー映画ポス

 

■ストーリー
 

封印されしエジプトの王女アマネットをうっかり蘇らせてしまったニック。

ニックはスーパーパワーを持ったミイラと化したアマネットからの執拗なストーキング被害に遭う。

 

■感想
 

ダークユニバースの第一陣を華々しく飾るはずだった本作ですが、結果としてその一大企画の息の根を止めてしまいました。

 劇場公開当時から不評を聞く映画だったんですが、個人的にはそこまで悪い映画とも思えない、ただ確かに突出した面白さも感じない、そういう印象です。

 

この映画が何を指向しているのか、ジャンルが掴み辛い曖昧さが全編漂っていて、その辺りに違和感を覚える事が多かったです。 

それは本作がリメイク作品のリメイク作品である、という部分が問題の根幹にある気がします。

クラシックホラー作品である『ミイラ再生』というオリジンの作品が在り(続編みたいなのもたくさんあります)、それをリメイクした『ハムナプトラ』シリーズがあり、その上での本作という流れなので、リメイクの上書きみたいな状態になっています。


『ミイラ再生』のリメイクは他にも存在しますが、ハムナプトラシリーズは間違いなく今作に影響を与えていると思います。

砂塵の中に浮かび上がる人間の顔、生者のエネルギーを吸収し肉体を取り戻すボス枠のミイラ、異様に湧き出るムシ、この辺りの演出の方法が凄く似通っていました。


本作の全体的な雰囲気やテイストをおかしくしている要因のひとつがこれなんじゃないかと思うんですよね。

『ハムナプトラ』と言えば、ホラーというよりアドベンチャー主体の方向に舵を切り狂っているシリーズです。

そしてオリジン作品である『ミイラ再生』は、ホラーでありつつ、イムホテップの時を超えた恋愛活劇という、中々に味が濃い映画です。

そんなアドベンチャー全開なリメイクから要素を引っ張ってきている一方、オリジン作品のようなホラーテイストや悲しい恋愛脳要素も組み込もうとして、更に言えば後述しますがモンスターバトルアクション要素も兼ねさせようとしているので、結果として本作はチグハグなホラー映画になってしまったんじゃないかと思います。

 


最大の問題なのがダークユニバースそのもののスタンスというか、方向性だと思います。

ダークユニバースは、ユニバーサルモンスターを単に現代リメイクするのではなく、それらが一堂に会してのお祭りモンスターバトルを展開させてしまおう!という意図を明確に感じ取れます。

クラシックホラーの有名モンスターでアベンジャーズをやろうみたいな。

つまりダークユニバースは、モンスターバトルに重きを置いていたっぽいんですよ。

本作でも、モンスターバトル要素がかなり前に出ている印象です。

 

中盤くらいにさらっと登場するジキル博士が、バトルモードよろしくハイド君を解放して暴れたり、主人公がラストバトルで覚醒モードになってセテパイ圧倒したり、とにかく要所で展開されるバトルアクションが目立つ印象です。



つまり、この映画がモンスターバトルがメインだという事が判明するまでの過程に、あまりにも多くの要素が混在しすぎているのが問題なんだと思います。

ホラーや冒険活劇に寄り道しながら、演出面に過去作へのオマージュなんかも投入し狂った結果、中途半端に様々な要素が混在しただけの謎映画みたいな評価が生まれたんだと思います。

なにがしたいのかわからない、というよりもやりたい事をやるまでに寄り道が多すぎる映画というイメージ。

この映画が本当にやりたかった事と、ダークユニバースの方向性が噛み合ってない感じも相まって、とにかく要素が混在した謎映画が誕生する事になったんだと思います。

しかし、これもバランスの問題なのかと思うと惜しく感じます。

どこかの要素が突出しすぎているのか、或いは薄味すぎるのかそれは分かりませんが、もう少しこれらの要素がバランスよく配分されていたら、評価もかなり変わっていた気がします。

 

 

ところで、『ヴァン・ヘルシング』という映画が存在します。

ホラーテイストで行うモンスターバトルの正解が詰まっている映画がこの『ヴァン・ヘルシング』だったんじゃないかと思います。

 

或いは、今後展開していくのであろう各作品でそれぞれ別の要素の映画として小出ししつつ、最後にモンスターバトルムービーとしてデカい一撃を放つ予定だったのかもしれません。

そう考えると、ダークユニバースの初陣を飾る『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』がなぜこれほどまでに混乱した作風になってしまったのか、ちょっとだけ見えてくるかもしれません。

 


■〆

個人評価:★★☆☆☆

シェアードユニバースというスタイルが流行る中、ダークユニバースはその出鼻を大きく挫かれ、第二作目に予定された『フランケンシュタインの花嫁』のリメイク版は二度と日の目を見る事が無さそうです。


ただ、ダークユニバースは捨て置くにはあまりにも勿体無いと思うんですよね。

『フレディVSジェイソン』や『エイリアンVSプレデター』、日本でも『貞子VS伽椰子』といった作品がヒットしたのは記憶に新しいと思います。

これらの映画が成功したのってたぶん単純な話で、有名モンスターが作品の垣根を超えて戦うという面白さで一点突破する事に注力したからなんじゃないかと思っています。

そういう意味でダークユニバースがモンスターバトル路線を目指したのは悪い選択じゃないはずです。

『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』は、終盤までまとまりが無いような印象を受けると思いますが、見方を変えれば、最終盤でようやく何映画なのか判明する、非常にトリッキー且つ斬新な映画なのかもしれません。

ではまた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?