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ストレイト・アウタ・コンプトン(2015年/アメリカ) 感想 いまだ色褪せない言葉とスタイルとかっこよさ。


超伝説的ヒップホップグループN.W.Aが、なんで未だに多くの人達からリスペクトされ続けているのか、この映画を観るだけでだいたいわかっちまうんだ!


〘ストレイト・アウタ・コンプトン〙

(STRAIGHT OUTTA COMPTON )

ストレイトアウタコンプトンポス

画像引用元:amazon prime https://www.amazon.co.jp

以下、一部にネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー

1980年代後半、カルフォルニア州コンプトンで誕生したヒップホップグループN.W.A(Niggaz Wit Attitudes)は、そのあまりにも過激なリリックと強烈なメッセージ性で瞬く間に人々に支持されスターへと昇り詰めていく。

しかし、その成功の影では次第にメンバー間に亀裂が生まれ始めていた。


■内容

N.W.Aの全盛期とその後を描いた伝記的映画です。

なぜN.W.Aがここまで絶大な支持を得る事が出来たのか、その理由が端的にストーリーの中で描かれ、同時にヒップホップ音楽史における彼らの存在とスタイルの重要性が再確認できる、非常にコアで熱量に溢れた映画です。

とはいえヒップホップ好きだけに向けられたような作りになっているわけでも無い点が特徴です。

2018年に超ヒットしたクイーンの伝記映画"ボヘミアン・ラプソディ"のような、主要な出来事を繋ぎ合わせたり一部に事実とは異なる改変を交えつつ、ひとつの物語としての面白さを追求したような構成となっています。

その為、N.W.Aの事を知らなくとも、この映画一本観ればだいたい彼らのヤバさが伝わると思います。

実際N.W.Aに関する殆どの出来事や逸話なんかを知る事ができるんですが、この映画では最初期のメンバーであるアラビアンプリンスがその存在を抹消されたかのように名前すら登場しない点や、N.W.A以前/以後のヒップホップシーンやスタイルの変遷という、わりと彼らを語る上で重要なファクターが割愛され気味だったりするので、全て詰まった映画という訳では無い点は注意です。



■感想(ネタバレあり)

N.W.A結成からイージーEの死去までの、彼らの生き様を凝縮したような映画。何を隠そう僕もこの映画でN.W.Aのリリックのヤバさを認識した側の人間で、それまであくまでギャングスタラップの始祖としてだけ、或いはトラックのかっこよさだけで聴いていたN.W.Aの楽曲に対する聴き方が大きく変わった過去があります。今回で観るのは3回目。

もちろんこの映画で描かれている内容はおおよそ事実とは言え物語的な脚色が加えられているため、全てが真実でも無いし全てが分かるわけでも無いんですが、それでも根底にあるコンプトンという街の現実とそこで生きてきた彼らの主張や言葉の力強さは偽りないものとしてしっかり物語に落とし込まれています。

彼らがなぜ全米で受け入れられ熱狂を呼んだのか、当時のアメリカ社会の貧困層の黒人蔑視の風潮も併せて描かれます。

この映画の公開タイミングが、ブラックライヴズマター(BLM)運動の過熱と重なっているのは中々考えさせられます。

N.W.Aの主張は現代でも通用するもので、同時に当時の彼らが怒りを覚えた社会情勢や環境が、彼らの大成功以降も変化していない実態と虚しさも少し感じる事ができます。



ただ、この映画のなによりも凄い点って、多分この映画を観るだけでギャングスタラップとは本質的には何だったのかが分かる点じゃないかと思うんですよね。悪い言葉や悪い行為をラップで表現したからカッコいい、という訳じゃないって事です。

これはもう、なんというか、ファッション感覚でヒップホップを利用してるだけのような連中に対してのそれなんですが。

その地域その街のリアル、地元とか自分達の生活、生き様をラップしたからかっこいいわけであって、多少の脚色はあれどフェイクとまではいかない、ちょっと話盛ってるよねくらいのバランス感が、やっぱりかっこいいラップなんだなって思います。スチャダラパーのサマージャム`95は超リアルだって俺が何年も何年も言い続けてる理由がこれだよ。

ギャングスタラップの始祖とされるN.W.Aのそれは、彼らのリアルそのものを一心にストレートに伝えた結果である事を改めて考えてみるべきですよね。

だからこそ、その後に出てきたネイティブタン一派のギャングスタラップとは正反対なスタイルも受け入れられたり、逆に刑務所からリアルな内情をお届けしたライファーズグループのような存在が受け入れられたりしたわけで、そういう点でもやっぱりN.W.Aって凄い後世に影響残してるなって思います。


ここまで殆どこの映画についての感想じゃない。


この映画の登場人物の見せ方も結構面白いんですよね。

イージーEとDr.ドレ―、そしてアイスキューブの三者を主役に、MCレンやDJイェラ、そしてマネージャーのジェリ―ヘラーが脇を固めるような座組。アラビアンプリンスなんて、居なかった。


中盤以降の、アイスキューブとドレ―の脱退辺りからのN.W.A衰退期の描き方も決して悲壮感一辺倒じゃないのはこの三者の描き方で上手く雰囲気を調整しているからなんでしょうね。




ちょこっと登場するスヌープとか2パックとか、なんか良いよね。

あとアイスキューブ役の人アイスキューブに似すぎだろと思ってたらアイスキューブの実の息子だったらしくて驚愕。それにしたって似すぎだろ。


■〆

個人評価:★★★★★

ヒップホップが好きだよって人が理解できない人にこそ観て欲しい映画だったりします。僕たちが何を以ってそのカルチャーや音楽性に惹かれていったのか、その一端が良く描かれた映画でもあると思いますし。

なにより単純にN.W.Aの伝記映画として、というか普通に映画としてめちゃめちゃ出来が良いと思っているんで、観視聴の方には本当にぜひとも観て欲しい一本です。

ではまた。

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