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[朗読 3分] 「男の子と子犬」(『おかげ犬①』)

【ツマヨム】妻が自作の物語を朗読してくれました。【創作大賞素材】
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「男の子と子犬」

こうきは五歳の男の子。
ママに秘密のことがある。
駐車場に作った段ボールのおうち。
そこに野良犬を飼っていること。

出会いは近所の公園。
石のトンネルの奥で鳴き声がした。
覗くと薄汚れた子犬。
お腹が空いてるのかな。
こうきは持っていたクッキーを分け与えた。

「うちでは飼えないんだよ」
それでもぴったりくっついてくる子犬。
まるで影みたいに。
こうきは知恵を絞った。それがはじまり。
洗ってやると白い犬だと分かったが、名前は「カゲオ」にした。

「来月お引越しするからね」
ある日、ママが言った。
一軒家に住めるのだろうか。そしたら――
「今より狭くなる。田舎のアパート」

その晩、ママの目を盗んで外に出た。。
ミルクをあげカゲオに伝える。
「これで最後。あとは自分で買ってね」
白い巾着袋に、貯めていたお小遣いの500円を入れ、
マジックで「かげお」と書いて首に巻き付ける。
カゲオはワンと元気に鳴いた。

次の朝見ると、いなくなっていた。
こうきは泣きそうになって目をつぶる。
いつか、いつか、カゲオと暮らせますように――

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