春満月君なきあとのメタバース
「死んでいいやつで戦おうね」
満月を見上げ言葉を反芻する。
死んでいい奴……なんかいないけど。
マイクラの話。
息子の誘いで初めてお互いをやっつけ合う遊びをやった。
格ゲーみたいなもんだけど、私はついキャラに思い入れが出来てしまって……頭が固いのかな?
よく台本で「モブを入れて下さい」と発注を受ける。
物語とは無関係の、群衆の一人だったり主人公に倒される雑魚だったり。
若い声優さんが現場に入るきっかけとして必要なんだけど、演劇畑の自分には最初抵抗があった。
「通行人にも人生が」とやってきた人間。誰にでも交換可能なモブって……
メタバースでもアカウント複数持ちが当然の時代。
自身の分身とは別にいつ消してもいいモブも多数存在するのだろう。
ふと、そんなモブに恋した少年の話を思いつく。ある日、スティーブはいつも優しい言葉をくれていたアレックスのアカウントがなくなってることに気づき……
「パパ、月終わったらまたやるよ」
声がかかり、また殺されにいくかとスティーブを消した。
(はるまんげつきみなきあとのめたばーす)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?