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オトナの趣味に憧れる

 四十を過ぎたと言うのに、私にはこれといった趣味がない。
 だから「趣味は?」と訊かれると困る。
 差し障りのないところで「読書」と答えることもあるが、言うほど本を読んでいるわけではない。特に最近は小説もあまり読まなくなり、主に実用書をブックオフで安く買って読んでいる。
 積んでいる本は文字通り山となっているが、一月に読めるのはせいぜい五、六冊。近所の図書館で本を借りると、返却期限があるためそちらを読むことが優先される。山脈はなかなか崩せない。
 その間にまたブックオフに行って、新しい本を買ってくる。読書よりも、むしろ本を買うことが趣味なのではないかと思えるほどだ。 
 また、テレビゲームは子どもの頃から変わらず好きだ。大人になってもゲーム好き、というのは、自分では別に恥ずかしいことではないと思っているが、人に「私の趣味はゲームです」と言うのは、どこか憚られる。
 いっそのこと、eスポーツプレーヤーや、金を稼げるくらいの超絶ゲーマーであれば自信を持って言えるのだろうが、それはもはや趣味ではなく仕事だ。残念ながら私が好むゲームは基本ソロプレイのRPGであるし、ゲーマーを名乗れるほど変態的なやり込みまではできない。

 自分でもわかっている。ここは格好良く「創作です」と答えるべきところなのだろう。そりゃ職場やら友人やら、身近な人々と比べれば、書いている方だと言えるだろう。だが、自信を持って答えられるほどの量は書いていない。何かしら書いてはいるが、書かない時期もある、そんな中途半端な状態では、とても言えない。
 それに、言えば「見せろ」と言われるのが目に見えている。私は「いやいや」などと誤魔化しながら、心の中で(それを言うなら読ませろ、だろうが)などと毒づくのがオチだ。
 いや、根本の部分では、仕事にすることを目標としている(いた?)という自負だかなんだかが邪魔をして「趣味」と割り切ってしまうことができないでいるのかもしれない。中途半端な状態の癖に。

 世間一般の、壮年の男性が持つ趣味は、どのようなものだろうか。
 おそらく車やバイク、タバコ、酒、それに競馬や競輪などのギャンブル、と言ったところだろう。だが、私はそれらのどれにも興味がない。
 悔しいので調べてみたら、ギター、ドライブ、旅行、映画鑑賞、釣り、ゴルフ、自転車、写真などなどが出てくる。なるほど、なかなかに幅広い。
 アコースティックギターは持っているが弾けない。指が短すぎてコードが抑えられず、挫折した。
 田舎なので車は趣味というより生活必需品である。たまに遠出もするが、運転を楽しいと思ったことはない。
 旅行はコロナで行けない。知らない場所に行くのは好きだ。一人旅もたまにしていた。コロナ前、最後に行った旅は、一人で離婚直後に行った福井県の東尋坊だ。自殺する気はなかったが、自殺の名所を見てみたかった。観光客で賑わっていて、とても自殺どころではなかった。
 映画は好きだが、趣味まではいかない。蘊蓄を語る人は嫌いだし。平日に二時間の映画を観るのはなかなか難しく、かと言って休日は「せっかくの休みだから」という思いから外出してしまう。テレビで録画した映画をまとめたブルーレイが何枚も溜まっている。
 釣りは単純に面倒くさすぎる。嫌いではないので、ハマちゃん的な人が連れて行ってくれるのであれば、ぜひ行きたいのだが。
 腕を大きく振る動作はペースメーカーに良くなさそうなのでゴルフはできない。
 自転車は『弱虫ペダル』にハマった時にロードレーサーを買ったが、不整脈が悪化してやめた。
 写真は何度か興味を持って挑戦したことがあるが、すぐに飽きてしまった。毎回、まずはスマホで挑戦しようとするのが良くないのだろうか。被写体は主に飼い猫か雲だが、数枚撮ったところで、これをどう作品にするのかがわからなくなる。
 なかなか難しい。

 調べるなかで、グルメという趣味も見られた。所謂食べ歩きというやつだろう。
 確かに、私も趣味を問われ答えに窮して「食べ歩きかな」と答えたことがあった。
 しかし、それも思い返してみるとなんともおこがましい。
 私にも行きつけの店や、人に薦めることができる名店がいくつかある。だが、それらのほとんどは、人に教わったものであり、自分で食べ歩いた結果、発見したものではない。
 もちろん志を持って新規開拓を試みることもあるが、現実は『孤独のグルメ』のようにそうそう良い店に出会えるわけではない。食べ歩きを趣味とするハードルの高さは、おそらくやったことがない人の想像の遥か上である。
 とは言え、美味しい店を発見したいのは確かだ。だが私の現在の生活および仕事の状況から、休みは実質的に週に一日しかない。毎回いちいち遠出しているわけにはいかず、どうしても近場が中心となる。
 そうなると、大体の店は
 1.知っている・行ったことがある
 2.行ったことがなく、行ってみたい
 3.行ったことはないが行きたいと思わない
 4.それほどでもないという情報を得ている
 5.高級店なのでちょっと……
に分類される。無論、2はほとんどない。4も自分の舌で確かめる必要があるとは思いつつも、つい尻込みしてしまう。5などは食べ歩きスト(食べ歩きを趣味とする人のこと)を名乗る上では致命的だ。私にとって、二千円以上はすべからく高級である。
 私はケチを自覚しているが、高級店に行きたくないのは、ケチだからではない。安くて美味しいものが好きなだけだ。だが、昨今は原材料の高騰などから、どの店でも価格が上がっており、安い! 美味い! と感動することは稀になってしまった。特にラーメンに関しては、千円を超えてはならないという法律を制定すべきである。

 何の話をしていたのだろう。そうだ、趣味の話だった。
 このように、私にとって趣味とは非常に困難なものである。確固たる趣味を持っている方が羨ましい。
 というか、人生百年時代。趣味でもなければやっていけない気がする。
 とりあえず、こうして何かしらを記述することを趣味と言えるくらいまで続けてみようか。作品としてでなければ、趣味でもよかろう。
 まあ、これまでいくつものブログを立ち上げ放置している私が何を言っているのか、と自分でも思うのではあるが。
 

 

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