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映画『残像』をみて:過去にある未来、いや今

やること、やらねばならぬことは山のようにあるのに、ついつい動画配信サービスで映画やらTVドラマやらを観てしまう今日この頃です。

現在、Amazon Prime Video のほかに、U-NEXT を契約しています。U-NEXTのコンテンツの豊富さに触れたらなかなか解約できません。もともとは無料体験だけで済ます予定でしたのに…

コンテンツが多い、ということは、私のような年代のものには懐かしい映画も多いのです。

そこで、最近見たのがアンジェイ・ワイダ監督の『残像』でした。

アンジェイ・ワイダ

映画の話をする前に、監督であるアンジェイ・ワイダについて簡単にご紹介しておきます。もしかしたら、知らない人の方が多くなっているかもしれませんので。

アンジェイ・ワイダ (1926-2016)は、ポーランドの映画監督。

1955年『世代』でデビュー。1957年『地下水道』を発表します。この映画は第10回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞受賞。1958年『灰とダイヤモンド』を発表。この三本が初期の「抵抗三部作」と呼ばれる傑作となります。

私も20代のころ、『地下水道』『灰とダイヤモンド』を観て感銘を受けました。たしか池袋文芸坐地下だったと思います。

社会主義政権下の現実、理想を求め勝利したはずの社会の実相を、抗う人々の思いを描いています。不確実な時代、遅れてきた世代の私たちにとっても切実な思いを抱かせる作品でした。

その後、1981年『大理石の男』、そしてポーランドの民主化を導いた連帯のレフ・ワレサを描いた『ワレサ・連帯の男』など、多くの映画を残しています。

映画『残像』

私が今回観たこの映画『残像』は2016年に発表された、ワイダの遺作となった作品です。

実在の前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの後半生を描いています。

時は第二次世界大戦後、スターリニズムの吹き荒れるポーランド。前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキはソビエト共産党の影響力の強いポーランドにおいて、全体主義に抗いながら、情熱的に創作と美術教育に打ち込んでいきます。しかし、最後まで抵抗を続けますが、体制側の締め付けは厳しさを増し困窮の中人生を終えます。

この映画が描くのは未来、いや今の社会

芸術家が政治のため、体制側の意に染まないために、迫害されていく。全体主義国家、専制主義国家ではよくみられる構図です。

しかし、昨年問題になった愛知トリエンナーレ、そして、中止が決定した広島トリエンナーレの問題を考えると、ワレサの描いたあの世界が、まるでいままさに起きつつあることにつながっていることにゾットします。

現在の自民・公明による政権やそれらを称賛するネトウヨたちは、なにかというと北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や中国(中華人民共和国)などを目の敵にしていますが、目指すところは同じに見えます。

権力の意に染まぬものは認めない。

まさに、近親憎悪。いや、うらやましくさえ思っているのはないかと思います。

こんな今の社会。今回の 新型コロナウイルス COVID-19 の影響で、今の自公政権の、その無能ぶり・無責任ぶりがあらわになってきました。

今のこの日本こそ『残像』の世界そのもの。これを機に私たちはしっかりと目を見開き、未来のために行動していかないと、ストゥシェミンスキの思いが、抵抗が、人類の未来が、無駄になってしまいます。

今でも私は『インターナショナル』を口ずさみます。私たちは希望を胸に『インターナショナル』を口ずさんでいたのですが、この映画で流れる『インターナショナル』なんと無慈悲でグロテスクなこと。

ぜひ多くの人に観てほしい作品です。

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