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「餃子の皮って6角形でもよくないですか?」

プロダクトデザイナーの辻村哲也です。
今回は、2023年11月、ちょっと話題になった餃子の皮の話です。

ある朝、寝起きにスマホでTwitter(自称X)を眺めていると、愛知県の製麺所さんの呟きが目に入りました。

餃子の皮の製造工程で麺帯(生地をシート状に伸ばしたもの)を円形の型で抜いた残りがたくさん出て、再利用するにも限度があって廃棄が出てしまうということのようです。想像するに、打ち粉などの影響で再利用すると品質に問題が出るのでしょうか。

これを見て、最初は残りの皮を使った商品をぼんやり考えたりしていたのですが、おそらくそれはすでに試されて、それでも使いきれないからこその呟きでしょう。

ではデザイン的な解決策はないか、と切り替えた瞬間に「6角形でよくない?」が浮かびました。6角形は隙間なく敷き詰めることができる形です。単純に考えれば4角形ですが、現状ロスがありながらも円形の餃子の皮が市販されているのは、ワンタンや焼売の四角い皮とは違う、丸い「餃子の皮」が市場で求められているからでしょう。6角形ならロスをなくしつつ餃子の皮としてもいけるのではないかと思いました。

すぐに紙でラフを作ってみて、どうやらいけそう、となったところで、製麺所さんの呟きを引用するかたちで昼前に投稿したのがこの2つ。

とりあえずいつものメモ用紙(無印良品ブロックメモ)で試作しました

6角形にすることで
・角が目安になって包みやすい
・見た目がかわいい
・ひらひら部分がカリッと焼けて美味しい
・材料ロスがなくエコ
とかのメリットが出ないものかと。

と書いたように、この時点では効率以外のメリットが何か出たらいいよね、くらいの諸々未検証の状態です。

その後、6角形以外にも敷き詰められる形状を検討したのですが、やはり餃子として種を包むことを考えると、円に近い6角形がよさそうです。

よくあるアイデアかも(既出かも?)、と思ったのですが、想像以上に反響がありました。

togetter まとめ
餃子の皮を製造すると、一回の作業で残皮が3.6キロも発生する→頭いい解決方法が出てきた「革命やん」

・包装、流通過程で変形などの問題が起きないか
(→パッケージで対応できないか、それが商品の特徴になるかも?)
・生産設備の大幅変更が必要では
(→中小規模の工場では手で抜いているので問題ないと思われ)
・業務用では包む機械の変更も必要になる
(→とりあえず家庭用に売っている皮だけでもいいのでは?)

などの意見もありましたが、概ね好意的に受け止められました。
また3Dプリンタで6角形の抜き型を作って実際に試された方もいらしゃいました。(すぐ僕がやるべきでした!)焼き餃子も試され、特に問題はなかったそうです。

最初にツイートした時点では金属のロール状のカッターで切る大規模工場のような工程を想像していたので「金型費用」と書きましたが、その後餃子の皮の製造工程を調べたところ、中小規模の製麺所ではセルクル(ステンレスの輪っか)のような丸い型で手作業で抜いているようなので、そう大きな投資をせずに実現可能なのではないでしょうか。

現実問題としては、今稼働している製麺所で6角餃子の皮を導入して効果が出るかどうかは、使用している製麺機によって決まっている麺帯の幅と、餃子の皮として売りやすい6角形の大きさの納まり具合(レイアウト効率)次第だと思います。また、カット後向きを揃える必要性の有無、それが可能かどうかとその手間、包装・流通で不具合が出ないか、そもそも消費者に受け入れられるか、などの検証も必要でしょう。

その後、ネットメディアHint-Pot の記事になり、Yahooニュースにも掲載されました。

件の製麺所さんから反応はなかったので、すぐ採用できる話でもないのでしょうが、メーカー、ユーザともにメリットのある、何かの形で繋がればよいなあと思っています。


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