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「ウルトラトレイルランナーに同行する薬剤師は、レース中に痛み止めをのむ危険性を知らせる責任がある」そんな風に結論づけられた論文に出逢ってしまう。

という訳でお知らせします。

自称トレイルランナーが、“走る“をテーマにnoteを書いてます。
今回は“ 本業から派生した論文“を書きます。

【痛み止めのリスク】

胃がやられるというのはよく聞く話だ。
だが、もっと重大なリスクがある。
それは、腎臓をズタボロにしてしまうリスクのことだ。

【この論文のスゴいところ】

この論文の冒頭にこんな風に書いてある。

ウルトラトレイルのような過酷なスポーツを実践するということは、『リスクを取る』ことを意味します。

Physiol Rep. 2024 May;12(9):e15935.

ごもっとな指摘だ。

【論文が最も伝えたいメッセージ】

10人中の4人は走っているだけで、腎臓の働きが普段の50〜75%まで低くなりますよ。
しかも、レースの早い段階なんですよ。
私はそんな風に理解した。

【知っておきたいコト】

その1
筋肉がなまらダメージを受けると、
壊れた筋肉から放出された成分ミオグロビンが腎臓を壊してしまうことがある。

レースの後に醤油とかコーラみたいな色のおしっこが出たコトがあるかもしれない。
あれは、ミオグロビンの色があんな色をしているからだ。
私が初めて経験した時は、「おぉ! これかー」とカンドーしたものだ。

その2
痛み止めは腎臓に繋がる血管を縮めてしまう。
(正確には非ステロイド性抗炎症薬に分類される痛み止め)
ちょっと縮まるくらいだとまだ耐えてくれるだろう。ここに脱水が加わると、ギューッと縮まってしまう。
血液が流れなくなってしまうと、さすがに腎臓は壊れてしまう。

【で、お知らせしたいコト】

走るだけでヤバイのに
痛み止めを重ねたらもっとヤバイぞ
‼︎
…というコトだ。

レース中にチェックしてください。
おしっこ出てますか?
手足がむくんでないですか?
電解質を含んだ水分は足りてますか?

スコット・ジュレクは書籍「EAT & RUN」で
『痛みは痛いだけ』と語っています。

走っても気分は良くならない。
筋肉痛になるし下痢もする。
車からクラクションも鳴らされる。
それでも、走って前に進む感覚が好きだった。

EAT & RUN

【私からの要望】

レース中に痛くなったら
痛み止めをのまない
というカードを1枚持って欲しいです。
そして、このカードは切り札として使うことも忘れないでください。

【論文のオリジナルが読みたい方へ】

ちなみにこの研究は、フランスで研究用に設定した156km(D+6000m)のレースです。ITRA score 144 - 914 の36名が、26km毎に腎機能を評価するために採血しています。腎機能が最も低下したのは52km地点。レース終了24時間後には腎機能は回復しています。腎機能はsCrを測定しています。そのため、筋損傷によるsCr 上昇の可能性は否めません。シスタチンCを測定できるだけのサンプリングは得られなかったと記載されています。

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