舞を通して1度失いつつある日本が大切にしてきたことを伝えていきたい 桐崎地唄舞稽古会主宰 桐崎鶴女さん

桐崎地唄舞稽古会を主宰している桐崎鶴女さんにお話を伺いました。

出身地:千葉県
活動地域:東京都
経歴:
1966年   生まれ
1969年   日本舞踊の手解きを受ける
1993年より 閑崎ひで女に師事
1999年   名取を許される
2001年   株式会社東芝を退職し、舞に専念
2002年   早稲田大学大学院演劇映像専修(舞踊研究)
        修士課程中退
2002年より 師の体調不良により大伴清女に師事
        地唄舞研究会「花の実会」会員
2011年より 桐崎鶴女として独立 桐崎流主宰となる
        桐崎鶴女 舞の会開催
2013年より 「桐崎地唄舞稽古会」主宰
2014年より コレド室町にて「鑑賞・体験教室」主催
2015年   『世界のダンスⅡ』(不昧堂出版刊)にて
        「東京の地唄舞」を執筆
2015年より 「日本橋地唄舞の会」講師
2017年   アーツカウンシル東京の事業として、
        リトアニア共和国にて公演及び
        ワークショップ開催
現在の職業及び活動:舞踊教授

舞を通して1度失いつつある日本が大切にしてきたことを伝えていきたい

記者:桐崎さんはどのような夢やビジョンをお持ちですか?

桐崎:舞を通して1度失いつつある日本が大切にしてきた考え方とか、他の国、文化の方にも参考にしていただけるようなものがいっぱいあると思うので、それを伝えていきたいと思っています。

 私ができるのは舞なので、これを通して知り合った方とか、舞を通じて興味を持ってくださった方に伝えていければいいなというのが1つ。あとこの舞というのを私のお稽古場にいらしてくれる方々に、その方たちの魅力を加えて、その方たちならではの人間性を加えて、自分を見つめるツールとして広めていけたらいいなという風に思っています。

記者:日本が大切にしてきたことというのは具体的にどのようなことですか?

桐崎:舞とつなげてお話しすると、例えば体の使い方1つにしても、脳があって、その脳が体に指令を与えているっていう中央集権的な考え方があります。日本の動き方ってそんなのじゃ全然ないのですが、体の方が賢いんですね。体の方が自分で考えて自分で動いてくれる。それを日本の体の動き方というのは使おうとするわけです。体の構造を使うというか。脳みそを信じきっていません。脳みそも体の中のひとつの機関にすぎない。だから腑に落ちるとか日本の言葉で体を使った言葉って凄く多いと思うんですよ。腹黒いとか内臓にも人格があるっていう、そういう感覚を日本人は持っていましたよね。それもひとつの考え方でもあり体の使い方のひとつ。

 あと不器用なものを使う方が観る人の想像力を引き出すという部分。例えば長谷川等伯の松林図屏風あるじゃないですか。あれほとんど空白ですよね。空白だけれども、あれは真っ白な空白ではなくて、あの空白を見ることで、見ている人はそこに湿度を感じたり、風の音を感じたり、前からそれを見ている自分の気持ちを感じるわけです。その中に自分を投影できたりとか。要は全部を語らないから、だから想像できるし、だからその中に入り込めるし、その人その人の対峙の仕方っていうのが自分で作り出せるわけじゃないですか。自分の脳内とか想像力とか。想像力ってイメージっていう視覚的なものだけではなくて、嗅覚だったり皮膚感覚、湿気とかも皮膚感覚全部含めて想像力ですよね。それを引き出そうとするのが日本のやり方なんだなっていうのを舞をやっているとつくづく感じます。 

自分の手の届く範囲で手を抜かず、ひとつひとつ丁寧にやっていく

記者:その夢を具現化するために、どんな目標や計画をたてていますか?

桐崎:戦略は必要ないと思っています。なので自分の手の届く範囲で手を抜かず、ひとつひとつ丁寧にやっていくことを心がけています。

 私は目標や計画、戦略的に物事を考えるというのはうまくいかないんだと思っています。だから戦略は必要ないと思っていて、行き当たりばったりですが、逆にその方が色々なご縁を大事にしていける。あと想像通りになんてなりはしないし、思った通りなんて絶対にならない。それに縛られてしまうのもつまらないことなので、自分の手の届く範囲で手を抜かず、ひとつひとつ丁寧にやっていこうと思っています。

人と比べない仕組みを使ったお稽古
一人一人の個性が自然と出てきて楽しめるように

記者:桐崎さんはどのような活動指針をもって活動されていますか?

桐崎:人と比べない仕組みを使ったお稽古をしています。
舞のお稽古をして人とは比べないように言って申し上げています。
こういう世界は数字では見えない世界です。数字が見えないということは誰が誰よりも上手いとか、誰が誰よりどうだとかそういう所で基準を作りたくなるんです。私が幼い頃お習いしてきた所はそういう世界でした。そうすると誰が早く入ったとか、あの人最近来ていないとか、ことごとく比べて、みんながどっちが上か、どっちが下かランキング付けして、自分がどこにいるかっていう確認をしたくなる。そういうところから悩みだとかストレスだとか同調圧力だとか色々なネガティブなものが生まれてくる。だから大事なのはやっぱり、昨日の自分と今日の自分と比べてどうかだけですし、それしかないと思うんですよね。そのお一人お一人によって事情が違いますから。その人にとっての舞との付き合い方はその人のものですから、他人がどうであろうとそんなのは関係ない。なので人と比べないように創っています。

記者:具体的にどのような比べない仕組みを使っているのですか?

桐崎:例えばお浚い会を実施するときの順番。伝統的には新しい人から古い人という順番で行います。なので順番を見れば誰がお稽古の日が浅いとか一目瞭然になり、お客様も「最近なのにうまいわねえ」とか、「古いのに下手だね」とかそういう基準にもなりがちなんです。それがすごくつまらないことだと思い、私のところではいつもくじびきです。

記者:くじ引きでやってみていかがでしたか?

桐崎:うらみっこなしのくじ引きは神様が決めるんだもん。間違いないですよ。本人たちも納得しますし。一番最初に引いちゃって、もう度胸が座っちゃってしょうがないって、言い訳もできなくなるし。

 見ている方の感想としては、誰がうまい、誰が下手とかさっぱりわからない。だから楽しめた。一人一人の個性が楽しかったとありました。それが一番だと思います。その人の美しさとか綺麗なこととか、良い感じの性格とね、言葉にできない良い感じがその人その人出てくるんですね。それを楽しめるんですね。

子供心に思っていたことの積み重ね

記者:そもそも「舞を通して1度失いつつある日本が大切にしてきたことを伝えていきたい」という夢をもったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見がありましたか?

桐崎:子供心に思っていたことの積み重ねがきっかけだと思います。

記者:具体的にどのようなことを思っていたのですか?

桐崎:例えば祖父母は着物を着ているのに、自分の両親はなぜ洋服を着ているのか?などの疑問や、漫画とか読んでノスタルジーを感じていました。あと時代劇を見てこの女優さん、お姫様の座り方が綺麗って思ったり、でも普段の生活自体は違うし、一体この違いは何なのだろうって子供心に思っていてそういうものの積み重ねだと思います。

 あと私は13歳からカトリックの学校に行っていたので、仏教とカトリックの違いってなんだろうとか、神道との違いはなんだろうとか、そういうのはしょっちゅう考えていました。だから西洋人の発想と日本人の発想って違うんだなっていうのは常日頃から違和感だとか疑問とかから感じていました。そのような子供心に思っていたことの積み重ねがきっかけだと思っています。

日本の忘れ形見の欠片みたいなものを拾い集めるのがとても好きだった

記者:「こども心に思っていたことの積み重ね」というきっかけの背景には何があったのでしょうか?

桐崎:たぶん日本の忘れ形見の欠片みたいなものを拾い集めるのがとても好きだったからだと思うんです。

 祖父母や父母と過ごした時間とか、幼いころに見ていたものへのノスタルジーがあったんです。生まれる前のドキュメンタリーとか映画とか見ると懐かしい懐かしいって言っていて、明治時代の日本とかも懐かしい。そういう日本の忘れ形見の欠片みたいなものを拾い集めるのがとても好きだったからだと思います。

記者:最後に読者へのメッセージをお願いします。

桐崎:自分が普通とか当たり前とか思っているものの一歩外にでると新しい発見があるかもしれない。その発見が自分を本当にエキサイトさせるしワクワクさせる。そのためにも、わかったつもりになっていないかという視点をもち、新しい発見というものを大事にしてほしいと思います。

 あと何故自分は日本が好きなのか?日本のどこが好きなのか?自分に問いかけてそれの正体が一体何のか?それは一体どこから来ているのかというところを問いかけて探していって欲しいと思います。

記者:桐崎さん今日は本当にありがとうございました!

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桐崎鶴女さんの活動、連絡についてはこちらから。

http://www.tsurujo.jp/index.html

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【編集後記】
今回インタビューを担当した渋谷&高橋です。
日本が大切にしてきたことを伺った時、なんとも言えない懐かしさと奥深さというのを感じました。と同時にそれが失われつつある現状への危機感も。1人1人の日本人がまず自分自身に問いかけていくことが大切だなと思います。

今後のさらなるご活躍を期待しています!

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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