雨宮まみさんは僕の最初のヒーローだった

新卒で出版社に就職し、初出社から3日後くらいのこと。
たぶん2007年だと思う。

先輩に「西新宿駅の改札にライターを呼んでるから、資料届けて来て」と言われた。でも時間通りに駅に行っても誰もおらず、30分くらい立ち尽くしてから、先輩に聞いていたライターの番号に電話をした。

「すいません、もう着いてるんですね! ◯◯さん(←先輩)のときは、いつも駅に着いたら連絡もらう段取りだったので」

5分後くらいに小走りで来たのが、雨宮まみさんだった。
その後は頻繁に連絡を取るようになり、原稿をお願いし、月イチくらいでかんたんな打ち合わせと称して喫茶店で雑談をした。

クイックジャパンとか、ロッキンオンジャパンとかを学生時代に愛読していたので、「フリーライター」なんて存在は最高にまぶしくてかっこよかった。
だから、生まれて初めて出会った本物の「フリーライター」である雨宮さんは、自分にとってあこがれの存在であり、ヒーローだった。

会社をやめたとき、次の職なんてなにも決まってないから「フリーライターとして食ってけばいいんだ!」と思った。
でも当然、仕事のアテはない。実家のタンスのウラに落ちてる小銭を集める日々。
そんなとき、雨宮さんの言葉を思い出した。

「フリーになりたてのころは、デザイン事務所でバイトしてたんですよ。いろいろ勉強になるし、その繋がりで仕事をいただいたりもするし」

ああ、それは良い。なによりデザイン事務所ってかっこいい。
だから自分も知り合いに頼んで、デザイン事務所でバイトをはじめた。

当時のブログ「弟よ!」もいつも読んでいた。
すごく気に入ったエントリがあって、手帳に手書きで書き写したりした。

たしか、4年か5年くらいまえ、ある企画にご協力いただきたくて、一度だけメールをしたことがあった。
「田島さん、ごぶさたですね。ご活躍拝見してますよ」なんて言っていただいた。
活躍なんてしてないのに。
でも、覚えててくださったことがうれしかった。
結局その企画は実現できなくて、「またいつかご一緒させてください」みたいなことをお伝えし、やりとりは終わった。


是枝監督の「歩いても歩いても」という映画の、「人生は、いつもちょっとだけ間に合わない」というコピーが好きだ。
はじめて見たとき、亡くなった祖父を思い出した。
「おじいちゃん孝行できなかったな」「両親には、生きてるうちに親孝行しなきゃな、間に合わなくなる前に」なんて思った。


伝えたいことは、伝えられるうちに伝えないといけない。
雨宮さんに「著書、いつも読んでます」と言えばよかった。
イベントとか、あんなにたくさんやっていたのに行かなかった。
「あなたは僕の最初のヒーローです」とお伝えしたかった。

こうしてまた、「間に合わなかった」ことがひとつ増えてしまった。

会社に入った当初に出会った、僕にとってのヒーローは、もうひとりいる。
その人には、ちゃんと向かい合って、感謝の気持ちを伝えないといけないと改めて思う。

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田島太陽

編集者。日々のメモ。

コメント1件

僕もフリーに憧れていますが
勇気がいりますね
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