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認知症ライフハック

今年は認知症についての変化の年

今年は、認知症と診断された人にとっては制度や施策が変わる年になると思います。年末にはレカネマブが使えるようになり、1月1日から認知症基本法が施行されました。認知症の早期診断のみならず、認知症の人や家族の人権が重視される年になると思います。

今年の抱負といっては何ですが、2024年は、認知症ライフハックを見つける年にしたいと思います。

ハックとは、「(プログラム)を改造する」、「(コンピュータに)不法侵入する」といったコンピューター用語から始まりました。
今では、ライフ(命・生活)という言葉とつながって、ライフハック「仕事や日常での生活に役立つちょっとしたスキルやアイデア」という意味で使われています。

私は大きなことではなく、小さな生活のヒントやアイデアを皆さんにシェアすることで、認知症と診断されてからの生活も、豊かに続けられるような支援につなげたいと考えて認知症ライフハックと名づけました。

若干軽めの言葉にしたのは、20代から30代の皆さんとも共有したいと思ったからです。ともすると、深刻になりやすい、認知症への支援ですが、案外発想の転換、視座を変えることにより生活の工夫はできるものです。そのためには、抱えている課題から少し距離を置いて、発想を自由に浮かべ、失敗を恐れずトライアンドエラーを行える環境が大切だと思います。協働も大事です。

この記事では、認知症の人が診断された後、どんな支援が必要なのか、他の疾患との比較をしてみたいと思います。特に生活の不自由さに焦点をあてて、支援の時期と必要度を考えてみました。

先に答えからお話しすると、在宅では段階によってさまざまな支援と必要度の組み合わせが必要と思いました。その多様性に我々がいかに気づいて、共有し、社会資源を適用して支援していくかが、認知症ライフハックにつながりそうです。




病気になったときの支援のパターン

まずは、認知症以外のなじみのある病気や病状への支援から見ていきましょう。そのパターンから認知症の人の支援に当てはまるパターンがあるか探っていきたいと思います。


<急性の疾患や外傷(軽症)の場合>

皆さん風邪をひかれたことがあると思います。
風邪をひいたときは、一番の大変なピークは風邪をひいたときで、その後は徐々に良くなっていく経験をされていると思います。通常入院もしません。かかりつけ医を受診して、お薬をもらうでしょう。
ちょっとコンビニで食べられそうなものを購入したり、友達や家族が差し入れてくれたりしたものを食べたり、安静にしていれば治ってしまうレベルのものです。
転んでちょっとすりむいた、などという軽い外傷もこの中に入ります。
後遺症や生活機能の障害はほとんどなく、自分で何でもできる状態です。特に支援は必要ないですし、その後も必要ではありません。


<急性疾患や外傷➡後遺症>

肺炎を患って、後遺症があるときなどが当てはまります。一番病状が悪化しているときは、肺炎の状態のときです。その後、後遺症など、急性期に起きた障害が残存して療養されておられる方も多いと思います。

また長期間の療養であったり、高齢者の場合は、どんな病気の後であったとしても、退院後に体力がなく、リハビリが必要な状態になることが良くあります。

神経感染症と呼ばれる分野のヘルペス脳炎などの感染症や、ワクチン接種後にまれに起きる急性散在性脳脊髄炎なども重篤な後遺症が残りますし、リハビリが必要な場合も多いです。

骨折した場合も、受傷したときが、一番状態が悪いことが多いです。その後手術をしたり、安静を保ち、骨癒合が得られことを目標にします。その後、リハビリを行いますが、障害が治療が困難であったりすると、後遺症が残ります。長期間にわたり寝たきりに近い状態で、体力が衰えていて、リハビリが必要になることも多いです。

後遺症が深刻か軽度かなどの程度の差はありますが、生活機能に支障が出ることがあります。支援の量は、いったん決まると一定である場合が多いですが、一生涯続くこともあります。若い方は障害者手帳を取得したり、障害者総合支援法の枠組みで支援が受けられます。65歳以上では原則介護保険を利用、40歳以上の方の場合は、疾患により介護保険を利用する場合もあります。


<内部障害(慢性疾患)、術後の合併症持続など>

慢性心不全や腎臓病、肝臓病などの場合は、進行する場合と再発緩解を繰り返す場合などがあります。日常生活上の支援が必要な場合とそうでない場合もあります。最初のうちは、病勢が強くなければ、日常生活や社会生活を送ることも問題なくできる時間が10年単位で続く場合もあります。逆に体調が悪く動けない時間が長期間続くと、体力が衰えて、支援が必要な状況になる場合もあります。この場合は、おおむねご自身からの体調不良の申し出がある場合が多いです。

支援の量は、病状により変化します。病状が悪化した時は、医療的ケアがより多く必要になります。時に医療ケアが必要で訪問看護に多く入ってもらったり、入院や老健施設への入所などを行う場合もあります。どちらかというと、病状に悪化がみられる時に、介護度が上がる、症状が強くなり、支援が必要な量が増えます。ケア・支援の量も不安定で、病状に大きく左右されることになります。


<末期悪性腫瘍>

悪性腫瘍の場合は、急激に悪化する場合もあれば、徐々に進行する場合もあります。発見から手術、治療などがあり、一進一退をきたす場合、悪化する場合、改善する場合など様々です。一方で介護が必要な状態になるのはかなり病状が進んだ時であることも多く、亡くなる前数か月程度のことも多いです。上記の後遺症のある方に比べると短いといえます。
実際介護保険を申請したのに、介護度が出る前にお亡くなりになることもあります。なお介護保険は申請日から利用できます。ケアや支援の量は、突然多くなり、緊急でチームを立ち上げる必要が出てきます。


<神経難病>

神経難病によっても様々ですが、だいたい1年ごとにゆっくり悪化していきます。生活に支障が出たところから、介護保険を利用し始めます。要支援から利用を開始して、要介護状態にゆっくりとなっていきます。生活に対する支援は、病状の悪化に伴い、年単位で増えていきます。介護度も数年単位で上がっていくイメージです。ただし、パーキンソン病のように、治療薬がある程度あると、支援が必要になるまでの期間が長くなったり、長く療養ができるようになってきています。ケアや支援の量は、病気の進行に依存します。


認知症の人への支援は応用編

認知症の場合は、実は非常に多様ですが、進行性の病気であるという定義があります。
ごく初期の場合は、身の回りのこともすべて自分でできる場合もあります。スマホのアラームを用いたり、メモリーノートを付けることで、忘れやすいことも記録して対応できることもあります。

治療ができる認知症疾患もあります。正常圧水頭症のように、シャントという管を入れれば、運動機能や認知機能が改善するような病気もあります。正常圧水頭症の場合で手術が成功すると、<内部障害(慢性疾患)>と同じような経過をたどります。緩解状態で生活は多少の支援があればできる状態になる場合もあります。

血管性認知症の場合は、慢性疾患の場合のように、適切な治療を来なうことで進行が止まる場合もあります。この場合は、<急性疾患や外傷+後遺症>と同じような支援のパターンになります。

一方で、進行性の疾患でもありますので、徐々に生活機能が衰えて、これまでできていたことが、できなくなってしまう場合も多いです。この場合は、<神経難病>と同じような支援の形がとられます。アルツハイマー型認知症もレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症も神経変性疾患ですので、このパターンをとることが多いです。

認知症性疾患の場合は、他の病気と異なり、10年以上の経過をとなることも多いです。その長い罹病期間に上記のパターンを行き来することもあります。様々なパターンがあることをご理解いただければと思います。


一人ひとりの患者さんでの医療と介護の共通認識が重要

上記のように、認知症の人への支援は、多様なパターンを取りえそうです。
この多様なパターンのどれを選ぶかは、ケアマネジャーに正確な病状や予後を伝えることが重要です。
もう3500字になってしまいましたので、やめますが、医療機関とケアマネジャー、介護事業者との連携については、また記事を書きたいと思います。

本日もお読みいただきありがとうございました🍀




最近出版した認知症に関する本です。こちらにもリンクワーカー制度を紹介しています。認知症に1人で向き合わない!を合言葉に、こんな症状が出たら、誰に相談するか、どんなサービスや制度を使うかに焦点を当てました。よろしかったらお手に取っていただければと思います。Kindle版もでました。iPADなどのタブレットをお持ちの方には結構お勧めです。

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