「効率化」について思うこと

以前は、効率化と、無駄を省くことがとても大事だと思っていました。しかしある時からその先にあるものを長期的に考えるようになり、効率化崇拝こそが様々な問題を引き起こしているのではないかと思うようになりました。

ところで突然ですが、ロジスティック回帰という言葉。数学や確率・統計をある程度学ばないと出てこない用語なので、聞いたことがない人も多いと思います。しかし実は、私たちの感覚を数学で表現したものとも言えます。例えば、救急車の音を聞く回数を考えましょう。最近、救急車の音を聞く機会が増えた気がする、出動が多そうだ、と感じますね。出動頻度が増えているんじゃないか、と。しばらくすると、救急車がすべて出動してしまった、救急が追い付いていない、というニュースを耳にすることになります。あ、やっぱり増えていたんだ、と納得します。でも、完全に飽和してしまう前にも、増えていると把握できるはず。「救急車の音を聞く機会が増えた気がする」を定量化すれば良いわけです。例えば救急車が出動している時間の割合(確率)や、単位時間あたりに救急車の要請があった回数を分析する(できる)手法がロジスティック回帰分析になります。

言い換えると、何となく頻度が増えたな、と感じることをモデル化していることになります。
そしてきちんと分析できる情報があれば、どの位の救急車、人員、そして対応できる病院を確保すべきかなど、計算できます。それこそ数学が活用される場面ですね。

さて、今日2023年1月7日朝。中部空港にジェットスター成田発福岡行きが緊急着陸しました。この事態に対するジェットスターの対応はどうなっているのか、ホームページで確認しました。しかしHPに一切の情報なし(昼現在)。さらに言えば、嘘の情報が記載されていました。


ジェットスターの運行状況


中部空港に緊急着陸したのは朝7時半ごろ。つまり成田発福岡行きの第1便です。中部空港にいるのに、「到着済み」と書いてありますよ!

あえて言えば、ジェットスターの運行案内に、中部空港閉鎖中なので欠航になった便があるこの記載はありました。

一方の福岡空港のページはこちら。

8時15分到着予定だった便は、「到着時刻未定」です。これが正しい情報。


今回考えたいのは、嘘があることではありません。なぜこのようなことが起きるのか、です。

私見ですが、これは「効率化」の悪影響だと思っています。ジェットスターのような会社は、利益ぎりぎりで物事を動かしているはず。コロナ禍で乗客も減って、さらなる「効率化」を強いられているはず。だとすれば、このような緊急事態の時の余裕はあるでしょうか?恐らく今中部空港にいる乗客(ケガ人も出た)、乗員、そして機材をどうするか、空港閉鎖による別の便の欠航への対応など、すったもんだあるでしょう。だからこそ、上で指摘した「到着済み」の修正さえできない。余裕がない。


日本では、高度成長時代と言われた時代に作ったインフラが、どんどん老朽化していると言われています。事故が起きなくても、メンテナンスが大変になってきている。それが漏れてしまうと、時々とんでもない事故が起きる。最初に私がはっきり感じたのは、10年前(2012年12月)の笹子トンネル崩落事故でした。マニュアルを見直すことをせず、昔のままのマニュアルどおりの点検しかできない。この原因は「効率化」という掛け声でぎりぎりのメンテナンスしか行ってこなかったツケだと思います。そして恐らく、これからも時々、何らかの事故が起きてしまうのではないでしょうか。。。


無駄は省いてもいい。でも効率化ばかりに注目したら、いつか破局する。

だから最近、私は余裕こそが大事だと感じて。余裕があれば、まず人はリフレッシュして、頭も働くようになります。新しいことにトライする元気も沸きます。余裕があれば、他の人とのギスギスも減るでしょう。他人への過干渉やヘイトも減るかも知れません。人間らしく生きるには、余裕が大事。
組織にとっても、余裕があれば柔軟な対応ができる。突発的な事故や事件へも落ち着いて対応できるでしょう。

以上、ジェットスターの緊急着陸から効率化について思うことを書いてみました。