夫婦別姓が続くと・・・というシミュレーションの式について

不思議な記事(シミュレーション)だと思った。単純すぎる。

夫婦同姓が続くと…2531年には「全員が佐藤さん」 東北大試算

という記事だ。何を計算したのだろうかと想像してみたら、簡単に計算式がわかった。それは、何年後、という数字を$${n}$$として、

       $${1.0083^n\times 0.01529=1}$$

という式を解くだけだ。現在の増加率がずっと続くと仮定しているだけだ。(1.0083は、佐藤性の増加年率、0.01529は現在の佐藤性の割合、そして1は全員という意味。)
答えは対数を用いれば簡単に計算できる。$${n=505.7688\cdots}$$である。実際には整数と考えればn=506、現在2024年なので、2530年の終わり、つまり2531年には全員(1、つまり100%)になるという計算なのだろう。

しかしあまりにも仮説、前提が単純だ。長期的視点に欠けていると思う。
特に2022年から2023年の1年間で0.83%増えたから、今後500年以上同じ増え方をする?単なる揺らぎなのでは?
そもそも夫婦同姓の時、選ばれる確率は1/2なのだから1つの苗字が何故増えると考えることができるのか?(詳しくは知らないが、チンギス・ハンのY遺伝子がモンゴル・内モンゴルで今でも25%の頻度であることとの整合性がないと感じる。)


記事には、選択的夫婦別姓が導入されると、という続きはあるが、あまりにも単純な仮定を置いていると思われるので、これ以上は計算しない。

ところで選択制夫婦別姓には大賛成だ。苗字を変えたい人は変えればいい。しかし名前の変更を強制されないことは、人権の1つだと思っている。それに反対する人は、他人の自由を奪おうとしている。人はこうあるべきだ、と他人の人生に関与したがっている。

選択制夫婦別姓に賛成の立場だからこそ言いたい。このような記事(シミュレーション)は、現実から大きくかけ離れている。確かに話題性はあるかも知れないが、少なくともこの内容を元に「そうだそうだ!選択制夫婦別姓が必要だ!」とは絶対に言えないはずだ。
(記事もシミュレーションした側もそう言ってはいない。しかし読み手が誤解する可能性があるという意味で懸念を感じている。)