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#5 『包丁と仲良くなろう』


手際よく包丁を扱っている人
ってかっこいいですよね。

包丁さばきが上手なら、きっと料理の味も美味しいんだろうなと期待させられてしまいます。なぜなら、それだけの包丁技術を自然と身につけられるほど多くの時間を調理に費やしてきたか、もしくは料理に対して真剣に努力してきた証だからです。

今回は包丁という料理には欠かせない調理道具についてご紹介します。

単なる食材を切るための刃物とはいえ際限なく奥深いものですので、ここでは特にこれから料理を学び始める初心者の方が最低限覚えておくべき基礎的な知識と扱い方手始めに習得すべき切り方だけに照準を絞り込んで解説していきたいと思います。

断言しますが急激に技術が上達する方法など絶対にありません。まずはここに書いてある内容一つ一つについて完全に理解し、あとはひたすら繰り返し実践してください。

これまでそれなりに料理してきたのに、なかなか包丁が上手く扱えないとお悩みの方も実はこの初めの第一歩を踏み外している可能性が高いです。

それでは多くの人が分かっているつもりで意外と理解できていない包丁の基本を紐解いていきましょう。

① 包丁はあなたの一生の相棒

その昔『キャプテン翼』という人気サッカー漫画でシュートを怖がる森崎くんに主人公のくんが『ボールはともだち、こわくないよ』というアドバイスを贈りました。世界中のプロサッカー選手を含め、多くの人が覚えている伝説的な名言です。

僕は本名がたまたまその主人公と同じ『』だった(読み方は違いますけど)がゆえに小学校の頃、サッカーをするとなると大概キャプテンに任命されていました。しかし特に上手だったわけではないため、ポジションは万年キーパーで哀しいかなシュートは打つよりも受けるほうが専門でした…。

そんなことはどうでも良いとして、まずは包丁にもこれと似たような感覚を持つべきだということです。全く思い入れがなかったり、包丁のことを恐がったり警戒していては上手に扱えるようになれるはずもありません。

以前の調理道具を紹介する記事にも書きましたが良質な包丁であれば、たった一度だけ買えば死ぬまで使うことができます。まずは確固たる愛着を持つためにも自分にとっての一生の相棒ともいえるマイ包丁を入手しましょう。

これにはプロサッカー選手に憧れる少年が初めて自分専用のサッカーボールを手にするのにも似た特別な意味合いがあるからです。

以下は以前にも紹介した僕のおすすめ包丁です。一般のご家庭では21cmの牛刀12cm程度のペティナイフがあれば必要充分でしょう。

【僕が推奨する家庭向けの高品質な包丁】
藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 口金付 牛刀 210mm F-808
藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 口金付 ペティナイフ 120mm F-801
この商品は僕が実際に自宅で愛用しており、家庭用包丁として自信を持っておすすめする商品ですが、もちろんこれでなくても構いません。専門店などで気に入ったデザインや握ってみた感触で最も愛着を持てそうなものをお選びください。人生で一度限りの特別な買い物です。くれぐれも2~3千円程度の包丁もどきは避けましょう。

いくら愛着があっても、さすがに四六時中持ち歩いていると逮捕されますが、せめて毎日1時間くらいは包丁と共に過ごす時間を作るように心がけてください。

様々な形状や固さの違う素材を使って切り方の練習をしたり、食後のデザート代わりに果物の皮を剥いてカットする習慣をつけるなど毎日必ず包丁に触れる時間を確保して、マイ包丁の重さや大きさや長さや様々な素材を切ったときの感触に慣れていきましょう。

幸いにも人は毎日ものを食べて生きています。他の技術を磨く場合と違い、包丁の練習で切ったものは全て食事として食べてしまうことで一切無駄にはなりません。

最初は違和感のあった包丁が次第に手にしっくりと馴染むようになり、自らの身体の一部であるかのように自由自在に動かせるようになることが華麗な包丁さばきを習得するための一番の近道です。

堺孝行 槌目ダマスカス VG10割込み 33層 牛刀210mm
こちらもお洒落で大変人気のあるシリーズです。


② 包丁を扱う前の準備

[まな板の準備]
包丁を出す前にまず、まな板を先に準備します。包丁を扱っている最中にまな板がガタガタ動くと大変危険です。一度水に濡らしてから固く絞った布巾をまな板の下に敷いておくことで滑り止めとなり安定します。

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サンベルム まな板マット K61512
最近では絞った布巾を敷くよりも衛生的なまな板マットと呼ばれるまな板専用の滑り止めシートも人気があるようです。確かに湿った状態で生肉などの汁にも触れる場合もあることを思うと抗菌マットのほうが安心ですからね。
それほど高額な商品でもないので小さなお子様やお年寄りがおられるご家庭など衛生面について気にされる方、日常的な布巾の消毒や衛生管理にあまり自信の無い方はご検討されてみてはいかがでしょうか。


[包丁の研ぎ方]

どんなに良く切れる包丁を買っても時間が立つと徐々に切れ味は落ちてきます。切れ味の悪くなった包丁を使うことは単に作業効率が落ちてイライラさせられるだけでなく、素材が潰れて料理の仕上がりにも悪影響を及ぼす他、良く切れる包丁よりも余計な力を加える必要があるために怪我もしやすくなってしまいます

購入した最初の頃よりも少し切れ味が落ちてきたなと感じたら使用する前に予めロールシャープナー包丁研いでおくようにしましょう。

京セラ 手動 研ぎ器 ロールシャープナー Kyocera RS-20BK(N)

包丁を研ぐと聞くと何やら難しそうな空気が漂いますが、このロールシャープナーを1つ常備しておけば超簡単です。

包丁の刃を溝にあてて10回ほど前後に押引きするだけ。

このたった10秒程度の簡単な作業をするだけでトマトなんかも包丁を軽く滑らすだけでスパッと驚くほど気持ちよく切れるようになります

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ロールシャープナーを扱う時のコツはちゃんと刃先から刃元まで刃の全体を同じくらいの力で均等に前後させること。刃の一部だけが切れるようになっても使いにくいですし、一部だけを何度も研ぎ続けていると、ほんの少しづつですが刃の形状が歪んできてしまうので要注意です。

研いだ直後の包丁金属汚れが付着しているかも知れないので一応、洗剤で洗って水気をキレイに拭き取ってから使用しましょう。


[包丁の置き方]

包丁まな板の上に置いておく時は、まな板の奥側に刃を自分とは反対の方向に向けて置くのが常識です。これは何かの拍子に足元に落としてしまったり、切り終えたものを回収しているときなどに刃に指が触れてしまったりといったような不慮の事故を未然に防止するためです。

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[包丁の握り方]
包丁はいわゆるのように柄の部分だけをグーで握って使う道具ではありません。基本型は親指と人差し指で刃元の中央付近をしっかりと挟むように持ち、残りの3本の指と手のひら全体で柄を包み込むようにして握ります。この時、柄を巻き込んでいる小指に少しだけ力を入れると安定して包丁を動かすことができます。

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もう一つ。人差し指を包丁の峰(みね)にのせて握る人指し型と呼ばれる持ち方もあります。人差し指がガイドとなって力が伝わり、刃先がぶれにくくなるため、ピンポイントに切り込みを入れたいときなど繊細な作業をするときに向いている握り方です。

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最初は違和感を感じるかも知れませんが初めてお箸や鉛筆の正しい持ち方を学んだときも同じような感覚だったはずです。繰り返しているうちに、いつの間にか慣れますので当面は正しい持ち方を常に意識しながら練習しましょう。

[包丁の構え方]
足を肩幅に開いてまな板と平行に立ち、そこから右足を半歩後ろに引いた姿勢(体の正面はまな板に対して斜め45度)が理想的です。まな板と体の間は軽く握りこぶし一つ分くらい空け、まな板の上で素材を押さえる左手、包丁を持つ右手、体の正面の三点で三角形を作るようなイメージで構えます。包丁まな板に対して直角、素材を抑える左手はまな板と平行になっている状態が包丁を扱う際の正しい基本姿勢です。

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[素材の持ち方]
素材をきれいに切るためには素材の持ち方も大切です。左手を丸めて食材を押さえ、包丁の腹(側面)を人差し指の第一関節に付けてガイドにしながら作業します。よく猫の手などと表現されている添え方ですね。

初心者の方が忘れがちなのが親指です。他の指は全て猫の手になっているのに、なぜか親指だけは真っ直ぐのばしたままになる方が大変多いです。そして、そういう方は注意をしていても高確立で親指の先を切って悶絶します。親指も人差し指の内側に曲げ、必ず全ての指を猫の手にすることを忘れないでください。僕はちゃんとお伝えしましたからね!

素材は左手の指先でしっかりと固定しつつも、余分な力は入れ過ぎないように意識してください。ガシッと必要以上の力で強く押さえ付けていると均一な大きさに切りにくくなるだけでなく、腕が疲れて作業を継続するのが苦痛になってきてしまいます。

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③ 包丁の使い方

包丁が苦手だという方や初心者の方は基本的な扱い方そのものを勘違いされている場合も多いようです。実は包丁の切り方は以下の2パターンしかないのです。

・ 押し切り
・ 引き切り

大切なことは包丁とは『奥に押したり手前に引くなど前後に動かしたときに切れるもの』であり、決して真上から真下へと力を加えて使う道具ではないということです。

巨大なマグロをさばく時でも小さなパセリの葉を刻む時でも、要は手前から奥に向かって押すのか、奥から手前に向かって引くのかといった前後のスライドの動きを利用して素材を切ることに変わりはないのです。

では、押し切り引き切りをどのように使い分けるのか見ていきましょう。

[押し切り]
主に固さのある素材ブロック状の素材を切るときなどに使う手法です。カボチャやサツマイモなど特に固い素材の場合は押し切りする際に包丁の峰(みね)に持ち手と反対の手を添えて両手の力を使うこともあります。しかし、この場合でも上から下に向かって圧力をかけるのではなく、あくまで手前から奥に刃をスライドさせるように力を加えますほとんどの素材はこの押し切りで切ることができます。

[引き切り]
主に柔らかい肉を切るときに使う手法です。力が入りにくい切り方のため、食材の細胞繊維が潰れにくくなるという利点があります。包丁奥から手前に引くときに刃渡りの長さを最大限に活かし、刃を斜めに滑らすようにして素材を切ります刺身などの断面も凹凸が少なくなめらかな仕上がりになります。


④ 包丁の切り方

どのような切り方で食材を切るかによって料理の見た目や味わいは大きく変化します。以下はどれも一般的なレシピに良く登場する主要な切り方の名称と種類ですので丸暗記して使い分けできるよう、ひたすら練習を繰り返しましょう

[みじん切り]
食材を1~2㎜角くらいに細かく切り刻む方法です。
主にタマネギ、ニンジン、セロリなどに使われます。

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[千切り]
幅は1~2㎜、長さは4~6㎝くらい細く切る方法です。
主にキャベツ、ダイコン、ニンジン、キュウリなどに使われます。

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[乱切り]
棒状の食材手前に転がしながら不規則な形に切る方法です。ただし、大きさは揃えます
主にキュウリ、ニンジン、ゴボウ、ナスなどに使われます。

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[くし型切り]
髪をとかすときに使うくしのような形に切る方法です。
主にタマネギ、トマト、リンゴなどの丸い食材に使われます。

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[輪切り]
棒状の食材切り口が輪の形になるように端から切る方法です。一定の厚みを保つように切ります。
主にダイコン、キュウリ、ナス、ニンジンなどに使われます。

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[半月切り]
輪切りを半分にした半月型に切る方法です。輪切りと同じ棒状の食材に使われます。先に縦割りにして半月型にしてから輪切りと同じように端から切ります
主にトマト、ダイコン、ナス、ニンジンなどに使われます。

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[いちょう切り]

半月切りを半分にした、いちょうの葉のような扇型に切る方法です。先に半月切りにしてから切るほか、4分の1に縦割りしたものを端から切っていく方法もあります
主にダイコン、ニンジン、ナスなどに使われます。

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[小口切り]

丸くて長細い野菜端から一定の幅で切る方法です。用途によって厚みを調節します。
主にネギ、キュウリなどに使われます。

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[短冊切り]

長さ4~5㎝、幅1㎝くらいの長方形を幅2㎜程度の薄さに切る方法です。短冊の形に似ているところからこう呼ばれます。
主にニンジン、ダイコンなどに使われます。

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[拍子
切り]
拍子木のような角柱形に切る方法です。長さ5〜6㎝、幅、厚さがそれぞれ7〜8㎜くらいを目安にします。
主にニンジン、ダイコン、サツマイモ、ジャガイモなどに使われます。

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[薄
切り]
 食材を端から2㎜の厚さを目安に薄く切る方法です。スライスとも呼ばれます。
主にダイコン、タマネギ、キュウリ、ジャガイモ、ナスなどに使われます。

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[角
切り]
食材を立方体に切る方法です。大きさは用途によって変え、拍子木切りのように棒状に切ってから角形になるよう端から一定の幅で切ります。角切りの中でも1㎝程度のサイズに揃えたものをさいの目切りダイスカット)、さらに細かく5㎜程度のサイズに揃えたものを霰切り(あられぎり)と呼びます。
主にダイコン、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、カボチャなどに使われます。

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[ささがき

細長い野菜を回しながら包丁で削るように薄く切っていく方法です。端から7~8㎜幅で切り、四角い棒状にします。
主にゴボウ、ニンジンなどに使われます。

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[ザク
切り]
葉野菜を3㎝ほどの幅にざっくり切る方法です。
主にキャベツ、ハクサイ、コマツナなどに使われます。

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[ぶつ
切り]
あまり一つ一つの形状にはこだわらず、食べやすい適当な大きさに切り分ける方法です。材料を無造作にブツブツと切るところからこう呼ばれます。
主に長ネギ、肉、魚などに使われます。

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[そぎ
切り]
厚みがある材料をそぐように切る方法です。包丁刃を寝かせて手前に引くようにして切ります。
主にシイタケ、鶏肉、ハクサイの根元などに使われます。

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⑤ 要点まとめ

・ 一生相棒のマイ包丁を入手し、毎日1時間は触れ合おう。
・ 包丁を扱う前には毎回、正しい環境と姿勢を整えよう。
・ 包丁とは前後のどちらかに刃をスライドさせて使う道具。
・ ほとんどは押し切りでOK。魚と柔らかい素材は引き切り。
・ 主要な切り方を覚えて使い分けられるように練習しよう。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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