翼 - Tasuku -

8年の下積みを経て渡伊。トスカーナ州の老舗4ツ星ホテルで修行し、帰国後は複数のレストラ…

翼 - Tasuku -

8年の下積みを経て渡伊。トスカーナ州の老舗4ツ星ホテルで修行し、帰国後は複数のレストランで料理長職を歴任。現イクシードグループ代表兼総料理長。日本フードコーディネーター協会の公式ライセンス保有。

マガジン

  • 僕のイタリア移住物語。

    イタリアという国に憧れ、期待と不安の交錯する中、手探りで暮らした1年3ヶ月に渡る移住生活の日々。

  • 独立開業|飲食店のつくりかた

    いつか飲食店で独立開業したいと考えている方を対象に、先輩経営者として伝えたいアドバイスやメッセージをお届けします。

  • シェフのステップアップ料理講座

    料理長として多くのスタッフを指導してきた経験に基づく、シェフの初心者向けステップアップ料理講座です。

  • プロの食卓|かんたん手抜き飯

    市販品や家庭の冷蔵庫内にある在り合わせの材料だけを使い、誰でも簡単に作れるプロ目線の手抜き創作料理を紹介します。

  • 人気バル|秘伝のレシピノート

    現役オーナーシェフである僕が開発考案し、自らの店でも実際に販売提供してきた人気バルメニューのレシピを公開します。

最近の記事

第15話 『ある大罪の告白』

① 同居人だョ!全員集合年末年始のフランス旅行へ出かけていた同居人のオルハンが戻って来たと思ったら、またすぐにスーツケースに荷物をまとめ始めたので『…え?また、でかけるの?』と尋ねると今度は2週間ほどトルコへ帰郷するのだとか。 つい先日、ブーラがトルコから帰って来たばかりなので、どうせなら一緒に帰れば良かったのになんて思ったりもしますが、同じボローニャ大学へ留学に来ている友人同士であってもプライベートでは色々と諸事情もあるのでしょう。 ちなみにイタリアからトルコまでは飛

    • 適正を見抜く従業員採用面接

      飲食店を開業する際、常にオーナーの自分一人だけで回せる小さな店舗を除き、多くの場合でお店を手伝ってもらうためのスタッフが必要となります。 飲食店において人件費の占める割合は極めて大きいため、可能であれば家族(配偶者や両親や兄弟、成人した子供や親戚)などの身内に特定の忙しい時間帯だけを手伝ってもらうことで運営していければ最も理想的なのですが、必ずしも誰もがそういった環境に恵まれているとは限りません。 そうすると、いわゆる従業員を雇用しなければならなくなります。 自ら求人告

      • 第14話 『狂宴のカウントダウン』

        ① 風船おじさん衝撃のイヴから一夜明けたナターレ(クリスマス)当日。 昨日の夕食時にガブリエッラがとった謎の冷たい態度が気になりつつ、朝食のためにキッチンへ向かうと彼女がパーティー料理のようなものを準備している現場に遭遇しました。 もしかすると冷たい印象を感じたのは僕の勝手な思い込みかもしれないと勇気を出して『ブォン・ナターレ(メリークリスマス)』と明るく挨拶してみました。 すると、ガブリエッラは老眼鏡越しに僕らを怪訝そうな表情で見つめながら『あなたたちはクリスチャン

        • #12 『味まで変わる料理の盛り付け』

          料理の味まで変えてしまう盛り付け!? 実はこれ、嘘のような本当の話なんです。 全く同じ料理でも盛り付けだけで味が変わってしまうなんて、にわかには信じ難いかも知れませんが、これは人間が美味しさを感じるメカニズムに起因するもので詐欺や魔法のように怪しげな話ではございません。 むしろ料理のプロの世界においては常識です。 そもそも、あなたが料理を食べたときに『これは美味しい味だ』と判別しているのは身体のどの部位だと思いますか? おそらく最も多い回答は『舌』でしょうけども残念

        第15話 『ある大罪の告白』

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        記事

          第13話 『場違い最前列ナターレ』

          ① ボローニャの食卓事情僕が滞在しているボローニャを含む北イタリアのエミリア=ロマーニャ州は世界的に有名なパルミジャーノ・レッジャーノを代表とするチーズ類、パルマ産プロシュート(めちゃうまい!)やボロニアソーセージなど生ハムやサラミを中心とした食肉品の生産が盛んで手打ち生パスタ発祥の地としても広く知られています。 グリルした魚介や生鮮野菜、完熟トマトやレモン、塩とオリーブオイルなどを中心にシンプルかつ豪快に仕上げ、素材そのものの美味しさを楽しむ、いかにも地中海的な南イタリ

          第13話 『場違い最前列ナターレ』

          シビカラ麻辣チーズよだれ餃子

          プロ目線のかんたん手抜き飯シリーズ。 最近あちこちの飲食店や居酒屋などで『よだれ鶏』というメニューを目にする機会、多くないですか? ご存知の方も多いかもしれませんが『よだれ鶏』とは四川料理の一つで本場中国では『口水鶏(コウシェイヂィ)』と表記されます。 茹でた鶏肉に唐辛子や花椒やラー油の入ったシビ辛だれで食べる冷菜なのですが、口水鶏の口水がいわゆる『よだれ』を意味することから日本では『よだれ鶏』と呼ばれるようになりました。 なんともインパクトのある料理名ですが、その昔

          シビカラ麻辣チーズよだれ餃子

          第12話 『進撃のトルテッリーニ』

          ① イタリアの謎物体イタリアの一般家庭や学校などには日本ではあまり見かけない謎の金属器具がほぼデフォルトで設置してあります。後付けの器具がそこに置いてあるというよりは、建物を建造する時点で構造の一部を壁に埋め込むような形で完全に固定設置されているのです。 実はコレ、本体が熱くなることでストーブ的な役割を果たす暖房器具なんですが、ファンヒーターやエアコンのように温風が出るわけではないので気分が悪くなることもないですし、石油ストーブや電気ヒーターのように触るとヤケドを負ってし

          第12話 『進撃のトルテッリーニ』

          鰆のエスカベッシュ

          今回はイタリア料理、フランス料理、スペイン料理などの各種西洋料理店から、バルや洋風居酒屋などでもすっかりお馴染みの『エスカベッシュ』という料理の作り方をご紹介したいと思います。 『エスカペチェ』、『スカペーチェ』、『エスカベーシュ』などと呼ばれることもありますが、どれも読み方が微妙に違うだけで同じ料理のことです。 ちなみにイタリアでは地域によって呼び方が違い、この料理がもっとも代表的といえる南イタリアでは『スカペーチェ』、北イタリアでは『カルピオーネ』、魚介類豊富なヴェネ

          鰆のエスカベッシュ

          第11話 『まめつぶキッコの憂鬱』

          ① ボローニャ市立サラボルサ図書館今日はボローニャの中心、マッジョーレ広場に面したアックルシオ宮殿(…舌噛みそう!)の中にあるサラボルサ図書館を訪問してみることにしました。 出入口周辺にはいつも観光客、市民、学生などがワラワラと溜まっていて、日本の一般的な市立図書館よりは人気がありそうな施設です。 建物の大きさの割には地味で小さい入口を入ってしばらく歩くと突然、目の前に3階層吹き抜けの巨大なアトリウム空間が出現! 『わー、中身すげぇっ!』 外観は恐ろしいほどレトロで

          第11話 『まめつぶキッコの憂鬱』

          飲食店|レイアウトの決め方

          飲食店の開業にあたって、もっとも重要な要素の1つが店舗レイアウト(間取り)の構築です。 独立開業を目指している人にとって自店のレイアウトを考えることは夢が膨らんで楽しい作業かもしれませんが、かなり気を引き締めて慎重に取り組まなければなりません。なぜなら、ほんの少しの配置の違いが後の営業に大きな影響を及ぼすことになるからです。 【店のレイアウトが営業に及ぼす影響】 ・客席数と満席時の実質収容可能人数 ・通常営業に最低限必要なスタッフの数 ・提供可能なメニューの種類 ・注文か

          飲食店|レイアウトの決め方

          第10話 『あの丘の上の大聖堂へ』

          ① ヒゲなしマリオとパニーニイタリアへ来てからというもの基本的に食事はパスタづくしの毎日です。 僕はイタリアンのコックという職業柄、日々の仕事場でのまかないは99%パスタ、また自宅の夕食でも月に数回はパスタ、休みの日も勉強のために外食でパスタ…とイタリアに来る前から年間300食以上はパスタを食べながら生活してきていたので慣れっこなのですが妻は『もうええ加減、パスタ飽きてきたわ…』とごきげんナナメです。 渡伊前には『パスタ大好きやから無限に食べられる!』と豪語していた妻で

          第10話 『あの丘の上の大聖堂へ』

          #11 『ハーブの基礎知識と活用術』

          キッチンにずらりと列んだハーブの小瓶たち。 プランターで生のハーブを苗から育てている方も結構多くいらっしゃいます。 ハーブは単なるインテリアとしてもお洒落ですが上手に扱うことで、いつものシンプルな家庭料理がまるで本格レストランで食べているかのような奥深い味わいや風味に簡単に変身させることのできる魔法のスパイスなのです。 ただ、ひとたび使いみちや使用量を誤ると、せっかくの料理が食べられないほど不味くなってしまうこともありえる諸刃の剣ともいえます。 今回はハーブに関する基礎

          #11 『ハーブの基礎知識と活用術』

          第9話 『不思議な縁とカッカの儀式』

          ① 不思議な縁とカッカの儀式はじめは自分自身のための単なる日記のようなつもりで書き始めたブログでしたが一般に向けて広く公開していると、ときに想定外の出逢いをもたらしてくれることもあるようです。 僕のブログを読んだというボローニャ在住の日本人女性から『もし何かお困りのことがあれば私で良ければお力になりますよ!』という大変ありがたいダイレクトメッセージをいただきました。 彼女の名前はタマミ。 では早速、一緒に夕食でも!という話になり今夜、ボローニャのシンボルとも言える二つ

          第9話 『不思議な縁とカッカの儀式』

          リボンキャロットのボロネーゼ

          プロ目線のかんたん手抜き飯シリーズ。 今回はピーラー(皮むき器)と耐熱ボウルと電子レンジだけあれば誰でも10分以内に作れてしまうヘルシーメニューをご紹介します。 リボン状に削ったニンジンをタリアテッレというパスタに見立て、ほんのり甘くてバターの香りが立つグラッセ風に味付けし、手軽に市販のミートソースをかけて仕上げるパスタ風の温野菜サラダになります。 これなら、きっとニンジンが苦手なお子様でも気に入って食べてもらえるはず! また、日頃から忙しくてバランスの良い健康的な

          リボンキャロットのボロネーゼ

          第8話 『イタリア語のさよなら』

          ① プロ迷子今日は女神ことコズエに教わった彼女おすすめの『PAM(パム)』というスーパーマーケットまで行ってみることにしました。 ちなみにここイタリアではスーパーマーケットのことを『スペルメルカート』と発音します。とにかく英字は全てローマ字読みが基本です。分かりやすいのか分かりにくいのか分かりません。 語学校の帰りに急に行ってみようと思い立ったので所在地を記してくれていた市街地図は家に置いてきたままでしたが、ある程度の場所は把握しているので、まぁ…大丈夫だろうと散歩がて

          第8話 『イタリア語のさよなら』

          王様のカポナータ

          今回は『カポナータ』というシチリアを中心とする南イタリアの定番家庭料理をご紹介します。 このカポナータはフランスでいうところの『ラタトゥイユ』に似た料理で要は『野菜のトマト煮込み』と認識されていますが僕のレシピでは基本的に煮込みません。鍋も使わず、フライパンと大きめのボウル1個があれば作れます。 厳密にはお店で作る場合にはベースとなるトマトソースを仕込む段階で煮込む作業が発生しますが、今回のレシピでは市販のトマトソースを使って作りますので、いわば『野菜のトマトソースマリネ

          王様のカポナータ