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#12 『味まで変わる料理の盛り付け』


料理の味まで変えてしまう盛り付け!?

実はこれ、嘘のような本当の話なんです。

全く同じ料理でも盛り付けだけで味が変わってしまうなんて、にわかには信じ難いかも知れませんが、これは人間が美味しさを感じるメカニズムに起因するもので詐欺や魔法のように怪しげな話ではございません。

むしろ料理のプロの世界においては常識です。

そもそも、あなたが料理を食べたときに『これは美味しい味だ』と判別しているのは身体のどの部位だと思いますか?

おそらく最も多い回答は『』でしょうけども残念ながらそれは誤りです。

確かに『』は味覚や食感を捉えるセンサーとしての役割を担っていますが実は人間は匂いや見た目が全く分からなければ舌から得られる情報だけでは、その食べ物が美味しいのかマズイのかという正確な判別ができません

美味しさの判別どころか鼻をつまんで目隠しされた状態だと人は自分が何を食べているのか分からないことすら多々あるのです。

有名な実験ですが、鼻をつまんで目隠しをした状態で『りんごの銘柄』を言い当てる味覚テストと称し、生のジャガイモを食べさせたところ、被験者はリンゴだと思って銘柄を答えたそうです。人間の舌で判別できる味の精度なんて所詮その程度のものだということです。

さらに味の判断に全く関係なさそうな耳(聴覚)も実は味の捉え方に大きな影響を及ぼします。

こちらも有名な実験ですが被験者全員に同じチョコレートを4つづつ渡し、そのうち2つを食べている時は鈍い音の金管楽器で調子の低い音楽を聞かせ、残り2つを食べている時は軽やかなピアノによる調子の高い音楽を聞かせたところ、全員が調子の低い音楽を聞きながら食べたチョコレートのほうが苦く感じたという結果が出たのです。

このような実験は他にも世界中で数多く行われていますが、つまりは料理の美味しさとは目で見た視覚的な情報、匂いや音や温度などの周辺環境、舌触りや刺激などの触感、過去の経験によるイメージ、その日の気分や感情に至るまで…ありとあらゆる要素に影響を受け、最終的に『』が判別していると言えます。

そして多くの人にとって『この料理は美味しい(はず)!』と捉えられやすい盛り付けができていれば全く同じ料理でも格段に美味しく感じてもらえるという原理が成り立つのです。

少し前置きが長くなりましたが今回はそんな味すらも変えてしまうようなプロの盛り付けの極意を料理初心者の方でもすぐに取り入れて実践できるよう、できるだけ丁寧に解説していきたいと思います。

騙されたと思って、ぜひ今夜の夕食にでも試してみてください。

料理そのものは全く同じでも『前よりも美味しくなった』と言われるかもですよ!?

① 盛付極意《其の壱》 『彩り』

まず手っ取り早く盛り付けレベルを上げるのに有効なのが『彩り』の要素です。

例えば人気おかずの超定番『鶏の唐揚げ』で『彩り』による盛り付けレベル段階的に見ていきましょう。


《彩りレベル1》

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料理初心者さんや一人暮らしの方などにありがちな『とりあえず家にあった白い皿に適当にのせただけ』という盛り付け。

食べられさえすれば見た目なんてどうでもいい…といった盛り付けに無頓着な典型例です。

もちろん食べるのが自分一人だけなら構いませんが、誰かにこの状態で『さぁ、食べて!』と出されると正直、あまり味に期待はできないなぁ…と先入観をもってしまいそうじゃないですか?

これでは唐揚げ自体がどんなに美味しくても感覚的に美味しく感じられなくなってしまうため僕に言わせれば非常にもったいないです。

では、ここに少しづつ簡単な彩りを追加していって、どのように変わるかを見ていきましょう。


《彩りレベル2》

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唐揚げの下に緑の葉野菜を敷くことで彩りが1色増えました。極めてシンプルですが、これだけでも先のものとはかなり印象が違います

実は料理に緑色を添えることは非常に重要なんです。

緑の食材としてはレタス、グリーンリーフ、サニーレタス、キャベツ、水菜、サラダ菜、大葉、ブロッコリー、ピーマン、ホウレン草、春菊、キュウリ、ニラ、刻みネギ、熊笹、オクラ、サヤエンドウ、各種フレッシュハーブなどいくらでもあります。

一説によれば、自然の緑色人間の遺伝子レベルで食と結びついてるとも言われています。は基本的にどんな料理と組み合わせても見栄えが良くなるほか、健康上のバランスも良くなりますので少し面倒でも積極的に取り入れるように心がけましょう。


《彩りレベル3》

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菜野菜の緑ミニトマトの赤を追加してさらに1色の彩りが増えました。

最初の何倍も美味しそうになりましたね!

鮮やかな赤色は単に目立って存在感があるだけでなく、食欲を増進する色としても知られています。大手飲食チェーン店の看板やテイクアウトパッケージ等に赤色が多用されているのはそういった狙いがあるからです。

主な赤色の食材としてはミニトマト(トマト)のほか、赤パプリカ、唐辛子、イチゴ、スイカ、タコ、まぐろ、エビ、梅干しなどがあげられます。

盛り付けに赤の要素が含まれているかいないかだけで料理を見た瞬間の美しさと食べたくなる衝動が劇的に変化しますので、たとえ少量でも加えておきたいところです。


《彩りレベル4》

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さらに唐揚げと相性の良いレモンで黄色を加え、さらに彩りが増えました。

黄色は料理に華やかさを添え、お皿全体のイメージがパッと明るくなります。

また、レモンのさわやかな酸味と香りは揚げ物の脂っぽさを緩和しつつ、レモンの果汁としてのコクも旨味を引き立ててくれるので唐揚げに添えるには最高に相性のよい食材ともいえます。

主な黄色食材としてはレモンのほかスイートコーン(トウモロコシ)、ヤングコーン、黄パプリカ、カボチャ、黄ゆず、黄ミニトマト、玉子、たくあんなどが良く使われます。

一般的な家庭料理レベルではこのくらいまでの彩り(皿を含めて4~5色)を意識すれば充分でしょう。

パーティー料理やお弁当などでも同じですが基本的にはメインとなる食材に追加して、白と緑と赤と黄の4色の彩り要素を取り入れれば大半の場合でバランスよく華やかに仕上がります

さて、ここから先はやや高度なプロの現場でも通用する領域になります。


《彩りレベル5》

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緑・赤・黄などの定番カラー以外の彩りも上手に加えると、よりご馳走感が増します。

特にオレンジなどの彩りがおすすめです。

主な紫色の食材としてはナスビ、紫キャベツ、赤タマネギ(アーリーレッド)、アンディーブ、トレヴィス、ラディッシュ、紅芯大根、桜カイワレ、ブルーベリー、ビーツ、キドニービーンズなど意外と多くの種類があります。

オレンジ色の食材では扱いやすい代表格のニンジン、オレンジミニトマト、オレンジパプリカ、サーモン(スモークサーモン)など。

黒色の食材では黒オリーブ、ワカメ、黒ゴマ、ひじき、椎茸、きくらげなど。

白色の食材ではチーズ、白髪ネギ、オニオンスライス(タマネギ)、大根、白菜、豆腐、イカ、カニの身、ちくわ、米など。

また天然食材を利用するだけでなく、ソースやドレッシングやディップなどを活用することで豊かな彩りを演出することもできます。

ソースやディップの主な活用例ですとマヨネーズやシーザードレッシングなどの白、とんかつソースやチョコレートソースなどの黒、明太子ディップやオーロラソースなどのピンク、ケチャップやトマトソースやコチュジャンなどの赤、バジルソースなどの緑、人参ドレッシングやフレンチドレッシングなどのオレンジ、マスタードなどの黄色etc…。

少し考えてみただけでも実に豊富な選択肢があることが分かりますね。


《彩りレベル6》

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さらに高度なテクニックにはなりますがプロの料理人や飲食店舗では食材以外の器や小物なども有効利用して全体の彩りバランスを考えます。

例えばこの写真の場合ですと周囲が赤縁で中央部分が黒い器を使い、そこへ白の耐油ペーパーを敷いて、緑と黄の食材を添えることで緑・赤・黄の基本カラーに白と黒の彩りも加えて仕上げています。

お店ではスムーズなオペレーション食材ロスの削減も要求されるため、全商品に数多くの食材で彩りを加えていくわけにもいかず、また同じ食材での飾り付けばかりだと盛り付けがどれもこれも似通ってしまうことになるため、器や小物を使ってうまく工夫しているというわけです。

なお、料理内容と器の形状との相性皿の彩りを活かすためにあえて余白を残すなど盛り付け上の配慮も必要になってきますので初心者の方にとってはやや難易度が高いかも知れません。

ですが、いつも盛り付けている食器の色や形状を変えてみるだけで雰囲気がガラッとお洒落になることもありますので、ちょっと冒険してみるのもおすすめですよ。まずは比較的扱いやすい黒いお皿四角いお皿くらいから試してみると、その変化の違いを手軽に実感できることでしょう。

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② 盛付極意《其の弐》 『立体感』

彩りを意識するだけでも見た目の印象はかなり変わりますが、そこに『立体感』の要素を取り入れることで、あなたの盛り付けレベルは限りなくプロの領域に近づきます。

ただ、ここで言う『立体感』とは単に料理を高く積み上げればいいという意味ではありません。

もちろん芸術作品などと同じように個人の好みやセンスで盛り付けの形も自由気ままにして構わないのですが忘れてはならないのが、これはあくまで料理の盛り付けであるということです。

食卓に座っている人へ提供し、その人がナイフやフォーク、箸などのカトラリーを使いながら一定の量づつを食べやすいように盛り付けるという前提は無視してはいけないのです。

人が食べやすい『料理の立体感』という前提で捉えるとき、当然ながらお皿で表現する『立体感』の盛り付けには、いくつかの王道パターンが必然的に発生することになります。

僕はフードコーディネーターのライセンスを取得する際、盛り付けのパターンについてはかなりの研究をしましたが、今回はその中でも特に再現しやすく、かつ汎用性が高い上に大きな効果が期待できると思われる2種類の立体的な盛り付けスタイルについてご紹介しようと思います。

立体という空間的な話を平面の文章でいくら説明しても伝わりづらいかと思いますので、こちらも実例の写真をベースに解説していきます。


《センター山型法》

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この『センター山型法』は立体感を意識した盛り付けでは基礎中の基礎一番最初に覚えるべき手法です。

特徴は至って簡単

読んで字の如く、単に『料理を盛り付ける際にセンター(中央)を山型にする』というだけです。

たったそれだけのことなのですが、適当に平らに盛った料理や凸凹になっている料理に比べると圧倒的にスタイリッシュに見えるようになります。

たとえばパスタの盛り付けで見た目の比較をしてましょう。

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例えばこちらのペペロンチーノ

この画像の感じが、僕もよくインスタなどで目にする一般の人が作って普通に盛り付けたパスタのイメージですね。コンビニのパスタなんかとも大差ないかと思います。

みなさんの中でも毎回こんな感じだよという方が多いかもしれません。

よく観察するとパスタは全体的に平らに広がっていて、表面は様々な箇所で凹凸していることが分かります。お皿のセンター部なんて凹んでいますよね。

さて、これを『センター山型法』で盛り付けてみるとどうなるか。

それが、こちらです。ドン!

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いかがでしょう?

これなら、お店で千円くらい払っても納得できるような気がしてきませんか?

パスタはお皿のセンター部分高くなるよう、トングなどで麺をねじりながら山型を意識して盛り付け、山の頂上をさらに立体的に高くする目的と彩りのバランスを考えてホールタイプの鷹の爪を飾りに追加。刻んだ生パセリも多めに散らしてあります。

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パスタの味付け自体は全く同じでも、盛り付け一つで期待度イメージ料理としての価値が一気にレベルアップするということがご理解いただけたかと思います。

なお、パスタの場合、具材が入っているタイプのものもありますが、これも先に麺だけをセンター山型に盛り付け、具材はできるだけ後から配置のバランスを考えつつ盛っていくほうが確実にきれいにまとまります。

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山型の形状だけでなく、前述した彩りの要素も複合できれば、提供時に思わず歓声が上がるような色彩の美しいパスタだって作ることが可能です。

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パスタ以外でもセンター山型法は和洋中、デザートなど料理ジャンルや器の大小に関係なく様々なシーンで広く活用されています。

一見、違うように見えても応用されているだけの場合も数多くありますので近隣の飲食店などをご利用の際には盛り付けの形状も観察されてみてください。

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《奥行き遠近法》

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次いでご紹介しておきたいのが『奥行き遠近法』です。

これは複数の食材や料理を一つの皿に盛り付ける際などに見栄えが良くなる手法で、要は皿の手前側を低く小さいものでまとめ、皿の奥側に行くにつれて高く大きく盛り付けていくという立体表現技法です。

手前を低く小さく、奥を高く大きくすることで小さなお皿の枠の中にも遠近法による錯覚が生まれ、奥行きとボリュームが感じられるため、適当に盛りつけたものよりも豪華でダイナミックに見えるという特徴があります。

和食の刺身盛りなどで頻繁に使われている定番の盛り方ですが、実はオシャレなカフェなどで見かけるワンプレートランチのようなメニューにも活用されています。

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また主にスライスされた肉料理と付け合わせを盛り込む際にも良く使われたりします。今まで特に気にされたことは無くても、こういった形の盛り付けに心当たりがある方は多いのではないでしょうか。

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さらには日本人なら知らない人はいないような、超お馴染みのこんな大衆料理にも実はこの盛り付け技法が使われていたりします。

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専門店などでカツカレーが目の前に出てきた時のあのなんともいえない圧倒されるようなダイナミック感奥行き遠近法によるものだったというわけです。自宅でカツカレーを作っても何か印象が違うのはこの盛り付けの違いによる影響が大きいのかもしれません。

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こちらの技法も彩りの要素と組み合わせることで素晴らしい相乗効果を生み出します。

やや応用にはなりますが奥側に高さを演出するために器の上に別の器段差になる台座などを利用して盛り付けるという手法も比較的ポピュラーです。

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ただ、複数の器を組合わせて盛り付けるのは器同士の材質や色味などの相性もあって確実に難易度は上がってきます。とはいえ、100円ショップのココットやミニグラスくらいでしたら、おそらくご家庭でも取り入れやすいのではないかと思います。

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これらはプロの世界でも人気の技法ですので、ご自宅でおかずを盛り付ける際に、ちょっと奥行き遠近法を意識してみると想像以上のグレードアップが期待できるかもしれません。


③ 盛付極意《其の参》 『余白』

彩り』と『立体感』。

この2つを意識するだけでも料理の見た目レベルは飛躍的に向上しますが、ここに『余白』という第3の要素を加えることで盛り付けに『美しさ』と『高級感』まで演出することが可能になります。

どんな絵画や写真、創作品でも全ての余白を使い切ったデザインは美しくありません

余白の部分をあえて意図的に残すことで空間的なデザインとしての美しさが表現されるのです。

ただ、この『余白』の技法を使いこなすには、どうしても一定の美的感覚が必要となってきます。単にお皿に対して適当にスカスカに盛り付けるだけでは美しさは成立しないのです。

では、デザインセンスにも特に自信があるわけでもない料理初心者はどのような部分に気を付ければ、この『美しい余白』の強みを正しく引き出せるのでしょうか。

ここでは、あまり難しいことを考えなくても実践できる技法を中心にご紹介していきたいと思います。


《皿の縁枠を残す》

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まず、もっとも基礎的で簡単な余白活用法は縁枠がある皿の場合、縁枠部分には一切の食材を触れさせず内側だけに料理を盛り込み、はねた一滴のソースや指紋の汚れすらも一切残らないようキレイに拭き上げて仕上げるということです。

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せっかく彩りと立体感の要素を上手に取り入れて盛り付けた料理でも下の写真のように食材が皿の縁枠にはみ出ていたり、縁がソースや油分などで汚れていると一気に印象が悪くなってしまいます

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一流シェフなどのプロフェッショナルな料理人の中には皿の縁枠まで上手に活用した美しい盛り付けをされる方も多数存在しますが、この技術を素人が真似しても概してあまり良い結果は得られません

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縁枠がない皿の場合でも周囲2~3cm程度に縁枠があると想定して、料理を皿の中央寄りに集め、周囲に一定の余白を残すよう気を付けてみてください。それだけでも見た目がスタイリッシュに引き締まるはずです。

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料理を盛り付ける際にソースがはねて汚れてしまったり、皿の縁枠部分に目立つ指紋の跡などがついてしまった時はそのまま放置せず、面倒でも清潔な布巾かティッシュペーパーなどで丁寧に拭き取るクセをつけましょう。

ちなみにプロの現場では水で湿らせた布巾などで皿を拭くと、かすかな拭き跡が残ってしまうので、それさえも残さないよう食品用アルコールレモン汁を少量含ませたペーパーで拭き上げたりします。こうすることで油分や指紋や拭き跡もほとんど残さずに提供することができます。

もちろん、せっかくキレイに拭き上げた縁枠に食卓へ運ぶ過程でベタッと親指を押し付けたりしてしまわないよう、できるだけ気を付けてください。もっとも自宅ではそこまで神経質になる必要はありませんけどね。

ちなみに『余白』『余白』と繰り返し書いてますが、これは必ずしも白色の皿のみを指しているわけではありません

確かにという色は高級感や清潔感を演出しやすいカラーなのでおすすめではありますが黒や赤や青の皿をはじめ、柄、模様、イラストなどの入った皿であっても盛り付け方の原則は同じです。

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また色だけでなく、どんな形状であっても皿の縁枠には料理やソースや汚れを一切付けず、キレイな状態で残すことがこの手法唯一の重要ポイントです。

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《あえて偏らせる》

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こちらはシンプルに皿の中央に盛るのではなく、あえて料理の配置バランスをアシンメトリー(左右非対称)に偏らせることでスタイリッシュ&クールなデザイン性を演出するもので、プロのシェフたちの間では『余白の美学』などとも称されている中級者以上向けの技法になります。

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この技法を活用する上で特に気をつけるべきなのは皿の中心部分に実質的な料理は盛らずとも、ちゃんと中心位置と皿全体の形状を意識しながら盛り付けていくということです。

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皿の中心部分と全体の形状が意識できていないと単にバランスの悪い、盛り付け位置から料理がズレ動いてしまっただけのような残念な仕上がりになってしまいます。

単純そうに見えて極めて難易度の高い盛り付け方ですが、初心者の方でもこういった盛り付け手法もあるということを頭の片隅に覚えておいてください。


《小ポーションに分割する》

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前菜の盛り合わせなどに多用される余白の美しさを活用した盛り付け方で、少ポーションに分割した料理間隔を空けながら盛ることで華やかでお洒落な一皿を演出できます。

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見た目が可愛らしい上、多種類の料理を少量づつ食べられますので女性には特に喜ばれる傾向があります。

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実はこの盛り付け方は難しそうに見えて意外と初心者の方でも手軽に再現しやすいのでおすすめです。料理の品数もたくさん作らずとも3種類くらいだけでも構いませんし、寂しければカットした生野菜やチーズ、生ハム、刺身、ボイルしたエビなどでも盛り合わせの中の一品として充分に活用できますよ。

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自らで料理の配置をデザインするのが不安でしたら仕切皿を使うことで、さらに難易度を下げることも可能です。

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この盛り付けを魅力的に仕上げるコツは、一品一品のポーションが小さいからといって、それぞれの彩りや立体感に手を抜かないことです。カットした野菜の方向や角度、それぞれの料理に違った種類の緑野菜やハーブを飾るなど細やかなこだわりが最終的な仕上がりに大きく影響します。

また、隣同士で色味が近いものがかぶらないように、同系色の料理は距離を離す対照的な色の食材を間に挟むなどして全体の彩りに気を付けると良いでしょう。


《余白をソースで装飾する》

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最後に、皿の中に意図的に作った『余白』部分をその料理に合ったソースで装飾するという盛り付けテクニックを伝授しておきます。

ソースでデザインを描く際はスプーンなどでも可能ですが、100円ショップにも売られているソースディスペンサーなどを活用されると便利です。

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さてまず、もっともスタンダードかつシンプルなのが中央に盛り付けた料理の周囲をソースで円型に囲むデザインです。円を描く作業はフリーハンドになりますが、できるだけ正円になるよう丁寧に描くのがポイントです。

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また似たようなデザインで手前から半円だけを描くというスタイルも良く使われます。円型にしない場合は開始時点を太めにし、ソースが途切れる位置に向けてラインを細くしていくとソースで遠近法も表現できます

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半円の軌跡をドット型で辿るのも定番です。円型のドットで料理を囲むのも
スタンダードな手法と言えます。

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余白に真っ直ぐなラインだけを引いても潔くシャープな印象になります。

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複数の色のソースをランダムな大きさのドットで並べてみたり。

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多めのソースを料理の下にためるような表現方法もあります。

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遊び心で様々なラインデザインを複合させるのも面白いですね。

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さらにハイセンスなものになって来ると、こんなデザインや…

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こんなものまで…すごいですよね。もはや芸術の領域です。

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ただ、ここまで来ると個人的には食欲が湧くかどうかの次元ではないような気がしてきます。単なるコンテストや自己満足の世界で現実的ではないですね。

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…これ以上はキリがないのでやめておきましょう

これらのようにソースを活用した技法を扱う際、全てのパターンに共通するポイントはラインやドットなどを描く位置を予め計算した上で、料理盛り付けの段階から専用の余白を充分に確保しておくことです。

引き出しの多いプロの料理人でしたら盛り付けした後からでも皿の余白状況を確認しながら最適なデザインを模索することも可能ですが、引き出しの少ない一般人が見様見真似で挑戦する場合は事前にソースのデザインまでしっかり計算した上で計画的に盛り付けしていくことが重要です。

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盛り付けの技法には今回紹介したようなテクニック以外にも本当に様々なパターンバリエーションがあり、それらもまた日々進化しています。

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幸い今はインターネットを利用して世界中のありとあらゆる情報や資料を自宅に居ながらにして閲覧することが可能な時代です。

盛り付けの引き出しを増やし、美的センスも磨いて腕を上げたいという人は、今すぐにでも『美しい盛り付け』や『きれいな料理』などのワードで画像検索をして、プロの作った数々の素晴らしい料理デザインに触れることから始めていきましょう。

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一流シェフたちの盛り付けを見ていると僕自信もまだまだ未熟だなぁ…と痛感しますが優れた盛り付けには本当に味さえも変えてしまう力があります。

まずは簡単にできそうなことから一歩づつチャレンジされてみてはいかがでしょうか。



④ 要点まとめ

・ 優れた盛り付けは料理の味をも変えてしまう。
・ 盛り付けの極意は『彩り』『立体感』『余白』。
・ 『彩り』の基本5色は緑・赤・黄・白・黒。
・ 『立体感』の王道はセンター山型法と奥行き遠近法。
・ 『余白』の基本は皿の縁枠をキレイに残すこと。
・ あえて偏らせて盛り付ける『余白の美学』を知る。
・ 小ポーション分割して間隔を空けて盛り付ける技法。
・ 余白を料理と相性の良いソースで飾る技法
・ 美しい盛り付けに数多く触れてセンスを磨こう。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

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