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【箱根駅伝2023】馬券的予想 駒大3冠の可能性は?

 区間エントリーが明らかになり、いよいよ開催が迫ってきた箱根駅伝。出雲駅伝、全日本大学駅伝を制した駒澤大学は、同校初の3冠を達成できるのか。ここでは馬券さながら、過去の傾向から優勝予想をしてみたいと思う。

 ひとまず、2002年度以降の約20年間のデータから分析してみた。02年度の箱根は、駒大が4連覇のうち2勝目を挙げた年。まずは出雲、全日本を制して箱根に挑んだ、歴代の2冠校の箱根の成績から調べてみた。

【出雲、全日本2冠校の箱根駅伝の結果】2勝3敗(勝率40%)
09年度 日本大学→箱根優勝:東洋大(日大15位)
10年度 早稲田大学→3冠
13年度 駒大→箱根優勝:東洋大(駒大2位)
16年度 青山学院→3冠
18年度 青学→箱根優勝:東海大(青学2位)

 負け越しだが、連対率は80%と悪くない。

 この中で唯一シード権すらも落とした日大は、G・ダニエルが4年生を迎え無双していた時期。出雲、全日本どちらもアンカーを任され、逆転優勝に導いている。ただ、出雲も全日本もまだ留学生の一人縛りが無く、当時1年生のG・ベンジャミンをダニエルとともに起用。ベンジャミンは出雲は1区3位、全日本は4区1位だった。4年生に谷口恭悠や丸林祐樹、2年生に堂本尚寛ら脇を固める日本人選手の主力も粒ぞろいだったが、全日本は1区、2区が2桁順位で負けており、優勝できたのは4区ベンジャミン、8区ダニエルのダブル区間賞の貢献が相当大きかった。

 今回の駒大には充実の選手層がある。日大の結果を異常値とみれば、データ的には優勝の確率は50%で、2位以内には100%入ると言えそうだ。

 では、3冠達成に戦略的な法則はあるのか。日大以外の4パターンから探ってみた。

 1つ見えてきたのは、勝ちパターンは序盤で首位に立ち横綱相撲をすること。3冠した早稲田も青学も3区までで首位に立ち、平塚中継所では2位以下に1分以上の差を付けている。早稲田は5区で一時柏原に逆転されたものの、その差を30秒以内に抑え、6区で再び首位を取り戻している。青学はその後一度も首位を譲ることなく優勝している。

 一方、負けたパターンの2校も3区までで一度首位に立っている。13年度の駒大は、1区中村匠吾→2区村山謙太→3区油布郁人と前半にエース格を並べ、前半で首位に立ち、優位に駅伝を進めたい狙いが表れていた。18年度の青学は吉田圭太や鈴木塁人を復路に回してはいたが、1区は出雲1区1位の橋詰大慧→2区は2年次から箱根を走り、全日本8区3位の4年生・梶谷瑠哉→3区は前年箱根2区区間賞の森田歩希なので、やはり有力者を並べている。

 ただし、負けたパターンはいずれも4区以降に逆転されて小田原中継所では2位以下に落ちている。結果的に優勝するチームが小田原ではその前を走っていたのが、3冠を達成した2校との違いだ。かつ5区の区間順位でも優勝チームに負け、山で借金を挽回できず、復路でも逆転には至らなかった。

 今回、駒大は田澤廉(4年)が2区にエントリーされたこともあり、ブレーキが無ければ3区までのどこかで首位に立つ可能性は高い。だが、その大エースの存在を生かし、小田原でも首位を維持できているかは一つの見どころになりそうだ。

 もう一つは、駒澤大自身にフォーカスしてみた。前述の通り、01年度からのうち2冠で迎えた唯一の箱根駅伝は2位に負けている。では、得意な全日本を制して迎えた箱根駅伝はどうか。

【駒大が全日本制覇した年の箱根結果】4勝6敗(勝率40%)

02年度→優勝
04年度→優勝
06年度→7位(箱根優勝:順天堂大)
07年度→優勝
08年度→13位(箱根優勝:東洋大)
11年度→2位(箱根優勝:東洋大)
12年度→3位(箱根優勝:日体大)
13年度→2位(箱根優勝:東洋大)
14年度→2位(箱根優勝:青学)
20年度→優勝

 窪田忍、油布郁人、村山謙太、中村匠吾らが主力となり、全日本を4連覇した11~14年度で一度も箱根を優勝できなかったのが響いて、こちらも負け越し。ただ、その頃は5区の距離が長く、山の神の有無が総合成績も大きく左右した時代。全日本4連覇期間中は箱根も2位3回、3位1回と常に優勝争いはしていたが、この間、箱根を制したチームは柏原竜二、服部翔大、設楽啓太、神野大地という絶対的な存在を擁していた。駒大も馬場翔大が好走したり、村山謙太を5区で起用したりと対抗策を打ってはいたが至らず、ライバルの後塵を拝した格好だ。

 上位からこぼれたのは10回あるうち06年度、08年度の2回だけなので、全日本を制した年の駒大は、高い確率で優勝争いに加わると言える。

 では、ここからも戦いぶりから読み取れる傾向はあるのか。

【小田原中継所の駒大のチーム順位と、5区の区間順位】
02年度 4位 5区2位(優勝)
04年度 3位 5区2位(優勝)
06年度 9位 5区7位
07年度 5位 5区2位(優勝)
08年度 8位 5区7位
11年度 4位 5区4位
12年度 10位 5区8位
13年度 2位 5区3位
14年度 1位 5区17位
20年度 2位 5区4位(優勝)

 強いて言えば、負けた年は小田原中継所までで6位以下と出遅れるか、5区の区間順位が7位以下と山が振るっていない傾向にある。これに当てはまらない敗戦は10回中、11年度と13年度の2回となる。

 ただ、往路のセオリーは前述した、過去の2冠校の戦績データの方が法則性の説得力が高そうだ。そちらでは、小田原中継所で首位にいないといけないわけで。

 他に法則性はないのか……。これがなかなか難しかったのだが、一つの仮説を立てて数字を検証してみた。上りなら大塚祥平、下りなら千葉健太と時折名手が出現するが、駒大は伝統的に山で優位性を作れていないような印象がある。そこで、全日本の成績に関わらず、5区と6区の区間順位を02年度以降検証してみた。

【駒大の5区、6区の区間順位(順位の合計)】
21年度 5区4位 5区6位 (=10)
20年度 5区4位 6区1位 (=5)※優勝
19年度 5区13位 6区6位 (=19)
18年度 5区5位 6区6位 (=11)
17年度 5区16位 6区14位 (=30)
16年度 5区1位 6区18位 (=19)
15年度 5区4位 6区10位 (=14)
14年度 5区17位 6区3位 (=20)
13年度 5区3位 6区5位 (=8)
12年度 5区8位 6区1位 (=9)
11年度 5区4位 6区5位 (=9)
10年度 5区6位 6区1位 (=7)
09年度 5区4位 6区1位 (=5)
08年度 5区7位 6区16位 (=23)
07年度 5区2位 6区12位 (=14)※優勝
06年度 5区7位 6区2位 (=9)
05年度 5区2位 6区9位 (=11)
04年度 5区2位 6区5位 (=7)※優勝
03年度 5区1位 6区3位 (=4)※優勝
02年度 5区2位 6区5位 (=7)※優勝

 ここから読み取れるのは、5区2位以上もしくは5区と6区の区間順位の合計を5以内にまとめれば、優勝できるということ。これに当てはまらないのは約20年間で09年度の1回だけだ。コース変更で5区の距離が長くなり、成績を左右する比重が高い時期とそうでない時期を含めてこの傾向なので、現在にもまずまず有用なデータと言えるのではないか。

優勝予想は青学!

 以上のデータと区間エントリーを踏まえて、少しだけ今大会の戦力を踏まえた展望をしてみる。

 まず、2冠達成校を破った2校は、出雲と全日本も外していない(13年度 東洋大→出雲2位・全日本2位、18年度 東海大→出雲3位・全日本2位)。となると、打倒・駒大の有力候補は出雲、全日本ともに2位の國學院大學となるのか。

 國學院は、3区に前回同区間5位の山本歩夢(2年)、5区に前回2区12位で、出雲・全日本はどちらもアンカーで区間2位の伊地知賢造(3年)がエントリーされている。伊地知は1年生の箱根も終盤に上りのある8区。國學院の山上りは昨年4年生だった殿地琢朗というスペシャリストがおり、伊地知は他区間で起用されてきたが、5区起用は満を持した感があり、区間賞クラスの走りにも期待できそうだ。

 ここに、控えに回った青木瑠郁(1年)、平林清澄(2年)、中西大翔(4年)あるいは藤本竜(4年)あたりが1、2、4区に揃って起用されるようだと、隙のない布陣で往路優勝はあり得そう。単騎逃げになれば、2年前の創価大のように後続がずるずると差を縮められないまま優勝、というパターンも無くはなさそう。

 ただ、細かく他校のメンバーを記載すると長くなるので割愛するが、当時に比べ相手が強い。駒大や青学、順天堂、中央大、創価大あたりが往路に主力をつぎ込んでくるようだと、全員が100%の走りをしたとしても、相手が揃ってミスをしない限り大逃げを打つのは難しそうだ。

 個人的には本命:青学/対抗:駒大だ。前述の國學院大學、順天堂あたりも優勝争いの資格は有しているだろう。ただ、青学と駒大のあまりに分厚い選手層に対抗するには、エース格の質・量や特殊区間での優位性といった決め手には欠ける印象だ。2校にミスがあったらすかさず隙を付けるだけの戦力はあると思うが、優勝となると青学・駒大の2校で95%以上とみる。

 駒大は2冠の圧勝ぶりから盤石の印象で、これに異論を挟む人は少ないはず。区間エントリーは、全日本1区を手堅く走った円健介(4年)を引き続きスターターに起用してきたので、2区田澤とセットで出遅れのリスクは低そう。前回往路で振るわなかった7区安原太陽(3年)、8区花尾恭輔(3年)を復路に回してきたので、おそらく1~2名変更がありそうな往路は、篠原倖太朗(2年)やルーキーの佐藤圭汰・山川拓馬らが20kmに対応し、爆発力のある走りをできるかがカギを握るだろう。

 ただ、そんな中で青学を本命に推すのは、有力校が比較的ベストメンバーでミスの少ない駅伝をしてきたのに対し、今年度の出雲・全日本で唯一まだ底を見せていないとみているから。駒大が圧倒的なだけに、2回ともブレーキを避けられなかったマイナス以上に、伸びしろのプラスに期待をかけたい。実際、出雲・全日本からの上積みという点では前回、出雲4区6位、全日本6区12位の若林宏樹(2年)が5区3位、出雲・全日本未経験の太田蒼生(2年)が3区2位だったように、新星の爆走が優勝を引き寄せた実績もある。

 本命を青学にしたのは非常に難しかったのだが……。これは見方によって分かれると思うが、個人的には鈴木芽吹(3年)の5区回避と安原、花尾を復路に回したのが若干弱気に映るので、強いて言えば青学を推したい。これが伏線になり、2区終了時点では駒大が前にいるも、3~5区で青学が前に出て、復路でも駒大は青学に届かず、という青写真を描いた。ただ、近年の傾向からアンカーで並走するような競り合いにはならなさそうだが、一つの故障や病欠で勢力図はすぐ書き換わるほどの僅差だろう。

◎ 青学
○ 駒大
△ 國學院、順天堂

 過去の2冠校成績も全日本制覇後の駒大も優勝確率は何と同じで、過半数に届かない40%だったのも青学を推すポイント。優勝確率は青学:55%、駒大40%、その他5%だろうか(笑)

 ということで、楽しみに箱根を迎えたいと思う。

(敬称略)

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