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静岡県磐田市見付地区・研修会REPORT :「いつもの私」が「もしもの自分」を守る~「いつも」からできること~

食べる支援プロジェクト(たべぷろ)では、災害に強いまちづくりを目指した自助互助領域での啓発活動を、国内様々な地域の方々と連携しながら進めています。
昨年度の取組みですが、フェーズフリーの考え方を礎にして対話の場を持った地域での研修会の様子をレポートします。

静岡県磐田市見付地区 地域づくり協議会主催 
災害時の食と栄養を学ぶ研修会
「いつもの私」が「もしもの自分」を守る ~「いつも」からできること~


開催日:2023年11月7日(火) 9:30-12:15
参加者:磐田市、自治会長、防災委員、福祉委員、包括支援センター職員など61名
オープニング 林浩巳氏 静岡県磐田市見付地区 地域つくり協議会 会長
第1部 セミナー
‐「災害時の食の問題」について  
‐ 食の問題が引き起こす「災害関連死」から見えること  
‐ 健康な身体をつくる「いつもの食」について  
‐ これだけは備えるしかない「災害時のトイレ問題」

食べる支援プロジェクト(たべぷろ)事務局 鳥山
竹内瑠衣子氏 栄養士/磐田市 健康増進課 健康支援グループ  
波多野友美氏 防災士/「暮らしのおくすり」代表

第2部 グループワーク 
第1部の振り返り・気づきのシェア
気づきをもとに実際の生活を振り返り、多視点で今日からできることを
具体化するグループワークの実施

食べる支援プロジェクト(たべぷろ)事務局 須賀

静岡県磐田市見付地区 地域づくり協議会のみなさまとは、研修会開催からさかのぼること半年前から議論を重ね、地域防災に携わる関係者内での課題感を共有しながら、「平時=いつも」に軸足を置いて「食」に対する意識を変えていくための進行を検討しました。
行政栄養士や災害時のトイレ問題に詳しい専門家の協力を得て進めたセミナーの内容をダイジェストにお届けします。

「災害時の食」の問題の解決は「いつもの食生活」から

たべぷろからは、はじめに「災害時の食」の問題を「災害関連死」のリスクとその要因をからめて解説しました。その実状を踏まえて「いつもの私」が「もしもの自分」を守るという本研修会のテーマに沿った平時での食の在り方の重要性をお話しました。

災害時には、日頃から改善を後回しにしている、または問題自体に気づかずにいる「脆弱さ」が問題として顕在化します。特に災害時の「食」の問題は、健康被害に直結し、最悪の場合は命に関わります。
突然の災害に見舞われても、体調を崩さないためにできることはなにか?
災害から助かった命を守るためには、いつもから健康な状態であることが問われる、つまり「災害時の食をどうするのか」ではなく、まずは「いつもの食をどうすべきか」を考えることが重要だということがわかります。

(NHK NEWS WEB「いのちを守る情報サイト」関西大学社会安全学部 奥村与志弘教授のインタビュー記事をぜひご参照ください)

普段の食事の栄養バランスを整える「ちょい足し」術

たべぷろからの解説に続いて、磐田市の行政栄養士・竹内瑠衣子さんが栄養の観点から「いつもの食生活」について考えるヒントをご提示くださいました。「食べることで得た栄養が健康な身体をつくりますが、これだけ食べれば健康になれるという食品はありません。バランスよく食べることが大切です」と竹内さん。
とはいえ、毎日3回、バランスよい食事にするのは、なかなかハードルが高い――そこで、竹内さんからおススメいただいたのが、みそ汁に豚肉を足して「豚汁」にしたり、サラダにツナ、うどんに冷凍野菜を加えたりする「ちょい足し」術です。

いつもの「あったら便利な食」が、もしもの「あって良かった食」になる 

「ちょい足し」術と同様に、かまえず気楽に捉えていきたい、もしものための食についてもお話いただきました。普段からおいしくて、好んでよく食べている食品の中に「常温保存ができる」「加熱調理しなくても食べられる」「料理に使いやすい」「お湯をかけたら食べられる」ものがないか見直してみる機会となりました。
例えば、ツナ缶、サバ缶、焼鳥といった缶詰類や乾物やフリーズドライ商品が該当します。白飯だけが手に入った時のことを考えて、おかずになるものや、ふりかけのように、白飯の味変ができるものを想像すると「もしも」のときにもおいしい食事を実現できそうです。

自分にとって「あったら便利」なものを少し多めに買っておき、使ったら必ず買い足しておく――これを習慣化して、常に家に買い置きされていれば、突然の災害にも、自分を守ってくれる「あって良かった食」となるに違いありません。

トイレとお口ケア商品の備蓄も命を守る

食べる営みにおいては、排せつ/トイレについても包括的に考える必要があります。セミナーの最後に、災害時のトイレ問題に詳しい防災士・波多野友美氏からお話いただきました。

2011年東日本大震災において、開設した避難所に仮設トイレが行き渡るまでに4日以上要した自治体は、全体の66%でした(日本トイレ研究所調べ)。このことからも、内閣府が推奨している、最低でも3日分(家族4名であれば 72回分)のトイレ備蓄は必須です。できれば1週間分(家族4名であれば168回分)のトイレ備蓄を心がけたいところです。
波多野さんからは、簡易トイレ・携帯トイレ製品にはどのような種類のものがあるのか、また自分に合った簡易トイレをどのように選んだらよいかアドバイスいただきました。会場に持参いただいた実物を手に取ったり座ったりして体験する貴重な機会となりました。

トイレ環境と口腔ケアについても密接なつながりがあります。
トイレの回数を減らすためや水不足等で水分摂取量が減り、脱水症状になると、口の中の細菌が増えます。その上、お口ケアが疎かになり、口腔状態が悪化すると食欲が低下するだけでなく、誤嚥性肺炎の危険性が高まり、命を落とす恐れもあります。お口のケアもあわせて見直していく必要性をお伝えして、第1部を締めくくりました。

(前述)NHK NEWS WEB「いのちを守る情報サイト」関西大学社会安全学部 奥村与志弘教授インタビュー記事より

今日からできること

第2部では、8グループに分かれて対話とワークの場をつくり、第1部でのレクチャーで得られた気づきをもとに実際の生活を振り返り、多視点で今日からできることを具体化していくことを目指しました。

健康でいられるために「いつもの食」で大切なことや、日常的に食べ続けたいものについて発散していくと、これまで災害時用に用意していたものとは必ずしも一致しないことが見えてきます。

各々の普段の食との向き合い方や食べて元気になる食べ物は異なります。
本研修会参加者の声から、「災害時に備える」ではなく「いつもの食で、健康に!気づいたら備わっている!」へ視点を切り替えていくきっかけとなった様子がうかがえました。
今後も様々な地域と連携し、地域になった啓発活動を続けていきたいと思います。



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