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キューバ危機

文字数:3004字

表紙画像説明

(表紙のランプシェード画像は、筆者作成のシーグラスです。今は昔の「キューバ危機」の時に微かに垣間見えた「光」をあらわしてみました。)

キューバ危機とは?

 簡単に言えば、東西冷戦状態にあった時に、ソ連(ソビエト連邦)のニキータ・フルシチョフがキューバに核基地を建設しようと秘密裏に事を進めていた。その時のアメリカ大統領が、ジョン・F・ケネディーだ。最後の基地建設の資材を積んだソ連の輸送船がキューバに近づく。それを察知したアメリカの大統領。そのスパイ映画さながらの時代の大きな動きを素人の筆者なりに追いかけてみた。以下の記事は今から20年以上前にメモしたものだ。現在は旧統一教会問題が日本を震撼させている。時期的に見た目重なる部分もありやなしや・・・どうぞ、こういう時代があったというメモとして読んでいただけると幸いである。

筆者なりのキューバ危機の把握

 20年以上前のことだが、続々とアメリカの公文書が公開されて、それぞれの時代の歴史的考察がなされるようになっている。その中でも私が深く関心を持っている問題の一つに、「キューバ危機」がある。私が大学一年生になった年の出来事だ。
 私はアメリカに出現した若き大統領に期待をしていた。そんな時に突然全世界を震撼させる大事件が襲ったのだ。新聞の一面に大々的に報ぜられたキューバの航空写真。当時有名なU2機が撮影したものだ。私には砂漠のような場所に建てられた何の変哲もない建造物にしか見えなかった。その一つ一つに番号が付いていて、これは何、あれは何、という風に解説してあった。核基地が完成間近というのである。
 ソ連の艦船がUターンして アメリカの臨検を避けたというニュースを知った時には、心からほっとしたものだ。
 このことが気になっていたある日、NHKが「10月の悪夢・1962年キューバ危機・戦慄の記録」として 放映したものを見て、当時私が知りたがった舞台裏を知ることが出来た。
 アメリカとソ連が、それぞれ我こそは世界の盟主たらんとその力の粋を極めて争っていた時代のことだ。
 アメリカは自分の喉元にナイフを突き付けられているキューバが、邪魔でしようがなかったのは当たり前と言えばあまりにも当たり前のことだった。数か月の時間をかけて本格的なキューバ上陸作戦を準備していたのだ。フロリダにはアメリカの精鋭部隊が集結していた。18万という大群だ。
 一方ソ連はアメリカをはじめとして、NATOからも核攻撃の標的とされて、その劣勢を何とか挽回しようとしていたのだ。ニキータ・フルシチョフを、私は何とも表現しようもないほどの憎っくき敵国の大将ででもあるかのように思っていた。その敵の総大将が考え出した挽回策が、キューバ危機を生み出したのである。アメリカの喉元にナイフではなく、核弾頭を突き付けようというのだ。
 アメリカがその秘策に気づいたのは、完成3週間前、アメリカのキューバ上陸作戦遂行予定の数日前だったことが、公開された数々の文書から明らかになっている。
 ケネディー大統領のみならず、側近たちのショックの大きさは測り知ることが出来ないほどのものだったらしい。アメリカが戦争を決意することは簡単な決断だったはずだ。既に攻撃の準備は完了していたとも言える状態だったからだ。しかしそれは世界を核戦争へと誘う決断ともなる可能性が大きかったのも事実だ。
 圧倒的な抗戦派を抑えて、ケネディーが戦争回避のチャンスを探ったのが幸運だったのかもしれない。フルシチョフが核戦争になることにおびえていたことが幸運だったのかもしれない。NHKの番組はそこに2つの偶然が重なっていることをうかがわせていた。一つは危機を増幅させるもので、もう一つは誤解、あるいは勘違いからなるものだった。
 アメリカがその秘策に気づいたのは、完成3週間前、アメリカのキューバ上陸作戦遂行予定の数日前だったことが、公開された数々の文書から明らかになっている。
 フルシチョフは、キューバのカストロ首相にアメリカへの攻撃をしないように命令していた。カストロには我慢のならないことだったに違いない。そして我慢の限界が来てしまう。毎日のように飛来するU2偵察機に発砲するのである。キューバの対空砲火だけであれば、あれほどの緊張状態にはならなかったのかもしれない。
 それなのに、事もあろうにキューバのソ連基地から対空ミサイルが発射されてU2機は撃墜されたのである。ソ連の最高司令部はキューバには発砲を禁止しながら、当のソ連基地に発砲禁止措置をするのを忘れていたというのである。驚くべき初歩的ミスだ。そのミスが世界を絶滅へと近づけるほどの事態を招いたのである。
フルシチョフもケネディーも、とてつもないほどの落ち込みを經驗したらしいという証言が、側近や家族からなされていることを番組は報じていた。
ホワイトハウスで激論に激論が交わされたことは想像に難くない。その結果を当時のホワイトハウス高官たちは、もう一度U2機が撃墜されたらキューバ侵攻をするという結論に達したというものだった、と証言している。当時の雰囲気を少しでも知っている私にとっては、随分抑制された結論だったと思う。
 そして日曜日を迎える。ケネディー大統領は教会へ行く。側近たちもそれぞれの所属する教会へと足を向けることになる。ところがそこにフルシチョフの勘違いが生まれる。
 クレムリンでは、アメリカ大統領は何か重大な決定をする時には必ず教会へ行くと考えていたそうだ。アメリカではそんなことに関係なく日曜日には教会へ行っていただけなのだ。そこでフルシチョフは、アメリカがついに核戦争を仕掛ける決定をした、と誤解をすることになった。フルシチョフが最も恐れていたことだ。
 アメリカは本気で核戦争に向かうというこの誤解が、フルシチョフにキューバへ向けた艦船をUターンさせる決定をさせたのである。アメリカ人ならば当たり前と考える大統領の行動が、世界を核戦争の危機から救い出したのである。
 私は神の存在が目に見えれば人間はもっと過ちを防げるだろうに、と考えることがある。しかし、それは人間が持ちやすい誘惑なのだ。その誘惑に負ける時に、いわゆるカルト集団なるものが形成されて行く。
 現代社会では、世界中いたるところでカルト集団が出現しては消えていく現象がみられるとの報道がある。以前、日本中のみならず、世界中を震え上がらせたサリン事件を引き起こしたとみられて捜査が続けられてきたオウム真理教にいたっては、以前人に薬と偽って薬にあらざるものを売りつけて罰せられた経験の持ち主である人物を、いかにも神の具現者であるかのようにして奉っていた。
 神の姿が私たちの目に見えないところに、実は神の私たちに対するあわれみ(=愛)があるのではないかと思う。あわれみでなければ摂理と表現してもよい。「多くのときの後(のち)」(聖書)に、私たちの見えないところで働く神のみ手に気づいて、感謝することが出来るのだ。喜びも大きいのだ。悲しみを乗り越えようという意欲もわくのだ。神に祈る気力が生まれるのだ。
 神の見えない手は100%私自身を生かすべく働き続けていることに信頼を置いて、今与えられている各人各様の人生を神のみ手に委ねようではないか、と私は語り掛けたい。
 

2022.12.20


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