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岡山県矢掛町の旅で出会った、きらり

2022年最初の旅先は、岡山県の矢掛町だった。

……と言っても、ほとんどの人は、どこそれ?と思うかもしれない。僕も名前を聞いたとき、どこそれ?と思った。

今回、矢掛町を訪れるツアーに招待して頂き、その町を旅することになった。

自由なひとり旅を好む僕が、旅先が決まっているツアーに参加しようと思ったのは、何かに出会えそうな予感がしたからだ。

その予感は、当たっていた。

たった1泊2日のその旅では、派手ではなくとも、ちょっと光る風景や煌めく瞬間に出会うことができた。

そんな矢掛町で出会った「きらり」を、ここに集めてみる。

今に息づく古い町並みが、きらり

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江戸時代のまま残る町家から、買い物を終えた地元の人が出てくる。

そんな不思議な光景に出会えるのが、矢掛町の面白さだ。

旧山陽道の宿場町だった矢掛町は、その頃から残る町並みが1番の見どころだ。

でも、それだけではない。

その町並みが魅力的なのは、ただ古い建物が残っているだけでなく、それらが今に息づいているからだ。

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江戸時代の古民家が、酒屋や電器屋、美容院となり、今も地元の人の生活を支えている。

蔵造りの商店では美味しそうなミカンを売ってるし、空き店舗にはもうすぐパン屋さんが開店するという。

宿泊した「矢掛屋」も、古民家を美しく再生した宿で、僕はかつての米蔵に泊まることができた。

矢掛町にあるのは、見せるための古い町並みではなく、今に息づく古い町並みだ。

夕陽に照らされた町家の前を、学校帰りの高校生が通り過ぎていく。

そんな光景を見ていると、昔と今が溶け合って、この町にしかない時間が流れていることに気づく。

変わるものがあって、変わらないものがある。その美しさこそ、矢掛町の「きらり」だった。

何もない暗い夜だけど、きらり

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矢掛町の夜は暗い。

そして店の多くは、早い時間に閉まってしまう。

夜の町歩きはあまり楽しめないし、お土産屋を巡ることもできない。

なんて夜のつまらない町だろう、と思う人もいるかもしれない。

でも、この矢掛町の暗い夜に、僕はなんだか惹かれた。

それはきっと、旅先なのに、何もしなくていい夜だからだ。

矢掛町の夜は、何もない。

だから旅人も、何もしなくていいのだ。

夜の観光をする必要もなければ、夜景を写真に撮る必要もない。

何もない夜を、ただ全身で味わうだけでいい。

それはちょっと寂しいけれど、不思議な心の安らぎを、旅人に与えてくれる。

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夜、暗いだけの矢掛の町を歩いていると、まるでヨーロッパの古い町にいるような気持ちに包まれた。

たぶん、ヨーロッパにも、夜が暗い町が多いからだろう。

ヨーロッパの夜を歩いていると、どこからか蹄の音が聞こえてきそうな気がするように、矢掛町の夜からは、江戸時代の町人たちの笑い声が聞こえてきそうな気がした。

矢掛町の夜は暗い。でもそれは、旅人をいにしえの世界へ誘う、「きらり」と光る夜だった。

おせっかいな人との出会いに、きらり

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「観光の方ですか?」

夕暮れどき、矢掛の町を歩いていたら、女性に声を掛けられた。

「ボランティアガイドをしている者です。この町のこと、なんでも説明しますよ」

そう言うと、ボランティアガイドの女性は、観光パンフレットには載っていない矢掛の豆知識をいろいろ教えてくれた。

聞いたわけでもないのに、なんだかおせっかいな人だな、とはじめは思っていた。

でも、その話を聞いているうちに、この女性が矢掛の町を本当に愛していることが伝わってきて、だんだん話に惹き込まれていった。

「いつか矢掛も、映画とかドラマのロケ地になってくれたら嬉しいと思ってるんです」

目を輝かせながら語る女性は、この町の未来を見つめていた。

話が一段落ついたところで、僕は聞いた。

「どこか夕食におすすめのお店はありますか?」

すると女性は、和食ならここ、お好み焼きならそこ、ラーメンならあそこ、と恐縮するくらい丁寧に教えてくれた。

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僕が向かったのは、とくに女性が推してくれた、「宝来」という和食屋さんだった。

そして、そこで食べたアナゴ寿司も、カンパチのかま塩焼きも、カキフライも、全てが美味しかった。

お腹を満たし、幸せに包まれながら、僕は思っていた。

このお店に辿り着けたのも、あの女性が声を掛けてくれたおかげだと。

これから矢掛町が観光地として発展するとしても、そんな人との出会いのある町であり続けてほしいと思う。

それこそ、遠くから訪れる旅人にとって、「きらり」と煌めく瞬間なのだから。

全てがきらり、な矢掛町の旅

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矢掛町で出会った「きらり」は、どれも小さな光の粒だったかもしれない。

でも、それらが集まることで、「全てがきらり」と輝いていくような気もする……。

2022年の旅を、そんな矢掛町から始められたこと。

その幸運もまた、僕にとっての「きらり」だったのだ。

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旅の素晴らしさを、これからも伝えていきたいと思っています。記事のシェアや、フォローもお待ちしております。スキを頂けるだけでも嬉しいです!