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[ユートピア]

どうして世界に一人も
教えてやらなかったんだ
悪いけどケーキに例えるなら
分け合うほどじゃない
お前は世界の誰も
傷つけてないつもりなんだね
逃げるが吉だぜ
切り分けられちゃう前に

どうやら世界に一人も
気づいていないらしい
僕らが手に入れるたびに
覗き穴 狭くなる
償う罪すら知らずに
咲けると思い込んでるなら
飾りの真似でもしてな 身のため
出る芽は摘み取られる運命

ユートピアしたいな
一人で生きられるなら
お前をガサついた手の平で
突き落としてしまいたい
その実 僕はただ
翅のついたオス蟻さ
まぐわえば墜ちるだけの
僕を想ったことなんて
無いような笑みに救われて
情けない面 嘲る

童話の世界に一人で
鏡に飛び込んだみたい
何一つ憂いのない
その勝ち気な顔が憎い
うさぎの役を引いたら
はじめの選択肢から
間違い踏ませてやるのに

ユートピアしたいな
一人で生きられるなら
お前をガサついた手の平で
突き落としてしまいたい
その実 僕はただ
翅のついたオス蟻さ
まぐわえば墜ちるだけの
お前を想ったことなんて
無いよ 笑い返して
情けない面 歪める

仕組みに生きる僕たちの
賛美の歌は誰のため?
ひずみに散る下僕たちよ
サヨナラ 初めての声

どうだい世界に一人も
等速直線の列乱さず
頭を掠めてゆくような
お目々の二つ要らないような
お前もそうさ 最後まで
顔一つ見比べもしないで

右手握り潰せば甘美な
柔らかさに酔いしれんだな
その手に最後に残るのが
一番脆いと知らずに

ユートピアしたいな
一人で生きられたら
お前をこの手の平で
突き落としてしまいたい
その実僕は
翅のついたオス蟻さ
戯れに飛んで廻る
人を想ったつもり
曇りのない笑顔に
心の底 唾を吐く

切り分けられる前に
逃げてしまうのが吉だぜ
その笑顔を握る甘美な
初めての声でサヨナラ

ほとんど呪詛

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