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入門インテグラル理論

入門インテグラル理論  鈴木 規夫、久保 隆司、甲田 烈 2010年

人が能力を上げたら(いわゆる垂直的発達)どんな世界になるのでしょう。

以下、引用です。

人間は、現時点においては想像できないような、高い次元の能力を獲得する可能性を秘めた存在である、そして、実に多様な要素や側面を包含する多面的な存在である。

インテグラル理論とは、われわれが秘めている可能性を再認識させる希望の理論であり、また、人間の可能性を開花させるために多様な領域の専門性をどのように統合していけばいいのかを示す実践的な枠組みであると言えます。

私は、最も単調な肉体労働の価値を尊重するという禅の思想にとても惹かれていました。とりわけ、それが“卑しい”と言われる労働であるならば、なおさらのことです。瞑想が人間の魂を鍛錬し、思索と執筆が人間の知性を鍛錬するものであるとするならば、身体的な活動としては、この世界において何をすればいいのだろうか……こうしたことを思いながら、私は意識して肉体労働に取り組んだのです。   ケン・ウィルバー

「インテグラル理論」の5つの主要概念。
1.クオドラント/四象限  統合的な世界の見方・フレームワーク
左上象限 私  :内面的・個的・主観的
右上象限 それ :外面的・個的・客観的
左下象限 私たち:間主観的/文化的・内面的・集団的
右下象限 それら:間客観的/社会的・外面的・集団的

われわれが日常生活で直面する課題や問題は、複数の側面をもった複合的なものです。
留意すべきは、これらの4つの視点は、ひとつの課題・問題を検討するときに最低限考慮されるべき視点であるということです。

2.レベル/段階  成長・発達のモデル
人間は 意味を作る存在である。
インテグラル理論では、意味や物語を構築するためにわれわれが用いる具体的な素材を「意識内容」といいます。
素材を物語に仕立て上げていく装置のことを、「意識構造」といいます。
一生を通して「意識構造」は段階的に成長していきます。これにより、個人の思考・感情・行動の質は大きく変容していくことになります。
段階0 衝動的(本能的)段階/インフラレッド
段階1 呪術的段階/マジェンタ
段階2 利己的段階/レッド
段階3 神話的合理性段階(別名:順応型段階)/アンバー
段階4 合理性段階(別名:達成型段階)/オレンジ
段階5 相対主義型段階(別名:多元的段階)/グリーン
段階6 統合的段階(別名:進化型段階)/ティール

3.ステート/状態 意識の多様な状態
自然な意識状態:覚醒~睡眠
変性意識状態:マインドフルネス

4.ライン  多様な知能の発達を実現する
知能指数IQ
感情知能EQ
感情(または情動)の知能は人間にとって根源的に大切なもので、実世界で成功し、心豊かな生活を送るためには、IQで測定される論理的・数学的な知能よりも重要で、必要不可欠である。
スピリチュアル知能SQ
社会知能SQ
身体知能SQ

5.タイプ/分類 多様な特性と発達
ソマトロジー 身体と気質
パーソナリティとペルソナ
アイデンティティと成長・発達
性格論としてのエニアグラム

6.発達についてのよくある誤謬 「前/後の混同」を見極める
あらゆる「ライン」の発達段階には、不可逆的な順序が存在しています。「前-合理性段階」から「合理性段階」をへて「後-合理性段階」に至るという基本的な発達の三段階です。
インテグラル理論では、タイプの差異に関係なく意識の発達段階を論じるため、この三段階の発達過程を「自己中心的段階」「自集団中心的段階」「世界中心的段階」と呼びます。

7.現代社会の病 フラットランドとブーマライティス
「質」を「量」に還元させるフラットランド、自己愛の文化であるブーマライティス

人間の心や文化といった目に見えない価値の領域については、どうでしょうか。ともすると、深さや美しさといった「質」を、どれだけ売れたかとか、どれだけ広まったかという「量」という基準と同一視(還元)してしまう傾向にあると言えないでしょうか。
社会学者のロバート・ベラーは、意味や価値といった質的な弁明が欠如した現代のアメリカ社会においては、価値の追求ではなく、「何が上手くいくか」という効率性の追究が、すべての価値基準の目的になっていると説いています。

価値観・世界観のどれもが平等に正しいのではなく、その正しさにも階層があるということです。具体的には、自らの価値観・世界観を絶対化してしまう順応型段階よりも、多様性を認識・尊重できる多元的段階の方がより「豊か」であり、より「良い」と言えるのです。
しかし、多元的段階の発想は、往々にして、自らの多様性尊重の価値観にとらわれてしまい、本来であれば垂直的な発達を志向すべき人々に対しても適切な成長の機会を与えることができず、結果として現在の段階の幼い自己愛の虜であり続けることを「許容」してしまうのです。
ウィルバーは自己愛の文化とは、統合的な文化とは対極にあると喝破しています。ブーマラティスの病理を克服することは、四象限の視座のもと、世界の諸領域を統合的に認識できるようになると同時に、これまで人間が培ってきた歴史的遺産を批判するのみでなく、継承し、自分自身の未成熟な側面に目を向け、それらをゆっくり育てていくことを意味するのです。

「日本」という文脈における「空気」・「世間」を四象限で分析する。
左上象限 自己 :「空気」と「世間」に規定された内面
右上象限 自然 :内面に基づく特定の行動
左下象限 分化 :空気
右下象限 社会 :世間

インテグラル理論とは、このように「すべては正しいが、部分的である」という多元的な現実に開かれた態度を提供しています。あまりに閉塞的な「個」の抑圧は問題ですが、「集合的」な領域において繊細な感性をはっきりと自覚しつつ活用することは、「空気」と「世間」の部分的な正しさを活かしていく態度になるのではないでしょうか。

8.今、真に「統合的」であるとは どういうことか
今日、われわれはいつの間にか自らの存在を経済的な価値を発揮するための機械として捉えるようになっています。勉強とは、自身の価値創造能力を高めるためにするものであり、休息や運動とは自身の機能性を維持するためにするものであり、また、教養(リベラルアーツ)や美意識や耐久性(レジリエンス)とは、労働市場の中で自己の価値を上げるために高めるものと信じているのです。
インテグラル段階において発揮される心身統合の能力とは、このように道具として恒常的な監視下に置かれた心身があげる声なき声に耳を傾け、その訴えを汲み取ることを可能にします。
統合的段階において、人は「頭」で考えるのではなく、全身で考えることができるようになるのです。
自己探究は、「私」の内に気づく希求を探しあて、それを実現するためのものから、この世界(コスモス)が自己に課している課題や使命に気づき、それに応えるためにするものに転換を遂げるのです。

9.個人の変容を促す インテグラル・ライフ・プラクティス(ILP)
「体」「心」「魂」「影」 ILPの四つの実践領域

10.社会・組織における実践
共同体(組織)における応用
プロセス①状況把握
プロセス②課題の明確化
プロセス③働きかけ

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