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【NY/ USA】国境も人種も宗教もあるけれど、みんな同じ人であるという事を信じたい。

【ナイン・イレブン】という映画を観た。
名前の通り9.11NY同時多発テロを題材とした映画だ。テロがあったその時、偶然エレベーターに乗り合わせて、そして閉じ込められてしまった5人のお話。

2015年、初めてNYを訪れた。SATC、ゴシップ・ガール。キラキラした街、NY。観光にショッピング、グルメ。私はひょんな御縁があって出会った、日本カルチャーが大好きなニューヨーカーのアビーに街を案内してもらっていた。自由の女神、ウォール街、5th Avenue、ブルックリン、セントラルパーク。
「Keina、他に行きたい所はない?」
アビーに聞かれて、私は少し迷いながら答えた。

「ワールドトレードセンターに行きたい」

2001年9月11日。
帰宅して、家で遅めの夜ご飯を食べながらテレビドラマを観てた。観ていた、というよりただテレビを付けていた、という方が正しい。特にお気に入りのドラマだったとか、毎週欠かさず観ていたとかではない、そんなドラマ。なのに私は今でもそのタイトルも主演俳優も覚えている。ううん、それだけではない。今でもその前後の記憶を全て鮮明に覚えている。
ラブストーリーのはずのドラマがいきなり煙の上がる高層ビルの映像に変わった事。しばらくしてまた飛行機がビルに突っ込んだ事。NYの街でも一際高くそびえ立っていた2棟のビルがまるで積木が崩れるかの様に崩れ落ちた事。

私はアビーの表情を伺っていた。なんて思われるだろう。NYの人々の決して消える事がないだろう大きな傷と恐怖を、ただ好奇心で覗こうとしてる外国人に見えたりしないかな。なんの関係もない部外者が行くべきところではないのかもしれない。一人でそっと行くべきなのかもしれない。そんな事を考えていた。
ただ、私のそんな心配をよそに、アビーは特に考えるでもなく「OK!」と答えた。

ワールドトレードセンターまでの道のり、なんとなく私は当時の事を聞けなくて、全く関係のない話ばかりしていた。アビーからもなぜ行きたいのかと聞かれる事もなかった。

ワールドトレードセンターの跡地にはモニュメントができていた。水が流れる大きな大きなプールに亡くなった方々2983名の名前が1人づつ刻まれた石碑。ひとつひとつ見てまわるのは不可能な数。でもそれは確かにあの日まで生きていた人で、その周りにはさらに何人もの彼らを大切に思う人がいた。間違いなく人生があったんだ。

モニュメントの前で記念撮影をする人々が多かった。人それぞれとは言うけれど、ここでファインダーを向ける人の気持ちが私にはよくわからなかった。アビーが私に「写真撮ってあげるよ」と手を出した。今まで回った他の場所と同じ様に。

「ここで写真は撮りたくない。ここは亡くなった人やその家族にとって大切な場所だから。私はここに祈りに来たの。」そういって刻まれた名前のひとつひとつを見ているうちに涙が止まらなくなっていた。私がみた映画のワンシーンのようなビルが倒壊する映像は、ここに名前が刻まれた何千という人々の命が奪われた瞬間だった。あまりにセンセーショナルな映像に忘れてしまいがちだけれど、あの映像はそういう瞬間を映していたんだ。

「ありがとう、本当にありがとう、Keina」気付いたらアビーも泣いていた。2人でモニュメントを見ながら泣いていた。アビーはアメリカ人で敬虔なクリスチャンで、私は日本人で要所要所だけ仏教徒。文化も人種も宗教も違うけど、そんなこと関係なくただの人間として涙を流して、失われてしまった命をただ悲しんでいた。

帰りに新しく出来たトレードセンターを見た。
【One World Trade Center】と刻まれた名前を見て、また私の涙腺が刺激された。
世界はひとつ。
ただのビル番号なのかもしれない。だけど、そこにきっとこの意味が含まれているんじゃないかって祈らずにはいられない。歴史があって、宗教があって、経済があって。そんなに簡単じゃない事はわかっている。甘いと言われようが、私は願ってしまった。そんな過去や違いを乗り越えて人と人として分かり合えて、受け入れて、愛しあえる可能性を願ってしまった。そしてあれから何年か過ぎた今でもその可能性は諦めたくないと思っている。諦めなければいつか変わるはずだと信じたい。



隔たりを 取り除き 友情の 橋をかけ
手と手を つなぎ つくろう
小さな世界
世界はせまい 世界は同じ
世界はまるい ただひとつ
- It’s a small world(日本語訳版)

半世紀以上も前に作られたこの歌が歌ってるように。

はじめまして! サポート頂きありがとうございます。 頂いたサポートでもっと色々な世界を体験してnoteを通して皆様にお返しできればと思っています。