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「ばあちゃんち」

世界一周19日目(7/17)



目覚めるとトラックは走り出していた。

今日も引き続き見渡す限り草原だ。

ダランザドガドの町に近づくと荒れ地となり、景色も寂しいものとなった。

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トラックは途中、ひとつのゲルに立ち寄った。

おっちゃんたちの家なのだろうか?一面ヤギのフンが散乱し、
古びたバンが一台。ソーラーパネルはバッテリーに繋がっていた。

中に入ると、自分の想像した通りのゲルが僕を待っていた。

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Googleで得た画像と自分の目で見たリアルとでは全く異なることは言うまでもない。

若干薄暗い室内に、扉から漏れる風の音。独特の香り。そして、遊牧民が何世代に渡って築き上げてきた生活スタイルから感じ取れる触感。

自分の五感をフルに活用して得たからこそ、重みを感じる。

トラックの運転手たちはゲルに置いてあったヤカンでお湯を沸かしミルクティーを作ると、どこからか持ってきたクッキーを僕にふるまってくれた。モンゴル人はミルクティーが好きなのはなんでだろう?

ヤギの乳からできたチーズもいただいたが、酸味が強く、食べるのに苦労した。


トラックの運転手たちは談笑していたので(モンゴル語なのでもちろんわからない)僕は外に出るとゲルの裏手にある小高い丘に登った。

見渡すとどこまでも大地が続き、自分がちっぽけに思えた。

この国を支配しようとした、チンギス・ハンたちはすごいことを考えたんだな。2013年の今となっても、どこからどこまでがモンゴルなのか分からないよ。この広大な大地を自分のものと考えた彼らは一体何を考えていたのだろうか?

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少しすると、別のモンゴル人の夫婦がやってきた。

おばちゃんは写真を撮ることを受諾してくれたが、おっちゃんは手を制して「ノー」サインを作った。ロシアでもそうだったが、写真に写ることを嫌う人もいる。


休憩を終えると、僕たちはおばちゃんを乗せ、4人になって出発した。

助手のおっちゃんが言うにはそろそろダランザドガドの町に着くそうだ。

荒野を抜け再び草原に入ると、ゲルや馬やラクダの群れが目に入るようになった。

そして、ようやくダランザドガドの町が見えてきた。



「ん...ラクダ!?」

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ゴビ砂漠に近い町だ。なんだか説得力あるぞ!





トラックはガソリンスタンドに到着し、僕はおっちゃんのケータイを借りて
アルタに電話をかけた。彼の息子と母親がこの町に住んでいるのだ。

アルタの息子、ドルジャはすぐにタクシーで迎えに来てくれた。
彼と一緒にアルタの母親のゲルまで向かった。

というのもアルタは僕がゲルにホームステイしたいということを聞いて、アルタの母親のゲルに泊めてくれるようにお願いしてくれていたのだ。

ツアーに申し込まなければ叶うはずないと思っていたゲルへのホームステイ。一晩10,000トゥグリル(700yen)で朝食、夕食つきのハッピープライス。

ちょっと耳の遠いばあちゃんが僕を迎えてくれた。今日から2日間、ここに寝泊まりさせてもらう。

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荷物を置くとドルジャとダランザドガドの町を歩いた。

彼はUBの大学を今年卒業し、2週間前に生まれ故郷のこの町に戻ってきたそうだ。拙い英語で会話を楽しだ。



「ねえ、ドルジャの夢ってなんだい?
おれは漫画家になることなんだ」

「う~ん…
おれは…インドに行くことかな?」



僕は彼に「気をつけろよ…(笑)」としか言わなかった。

僕は3年前にインドに行った。僕が旅を好きになった原体験がそこにはあった。散々騙されて、コメディみたいなトラブルだらけだったけれど、僕の中にはあの国を旅しからこそ形成された価値観というものがあった。

ここで僕がインドの魅力を語るのはまた違う気がした。彼には彼の旅を通してインドという国を知ってほしいと思った。インドを嫌いにならないことを祈る(笑)

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先日のナーザム祭が終わったからなのだろうか?

ダランザドガドの町はちょっと寂しい印象を受けた。

ゴビ砂漠に近い町だけあって、ホテルの数はそこそこだった。試しに安そうなホテルで値段を聞いてみたら一泊30,000トゥグリル(2,100yen)。

う~ん…モンゴルにしてはちょっと高いな。

それに、Wi-Fiの状況が絶望的に遅い。時々フリーのWi-Fiをキャッチするのだが、日本のサイトに繋ごうとすると、全くダメだ。



ドルジャと町を回って、彼は自分の家へ。僕はばあちゃんの家へ帰ることになった。

19時でもまだ明るい。僕はGoogleマップにピンを落としておいたので、それを頼りにばあちゃんちに戻ることにした。

僕は簡単に自分がばあちゃんの家に戻れると信じていた、

だが、そこにあるのは似たようなゲルの連続。


日が暮れてきた途端に犬が吠えだす。

何回も通りを間違えた。

「もしかしてこのまま夜になっても
家にたどり着けないんじゃないか?」

そんな思いが頭にちらつく。

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僕はここを出るまえに、目印の石を2つ戸口に置いておいた。

それを見つけて僕はようやくばあちゃん家に辿り着くことができた。

なんだかヘンゼルとグレーテルの世界みたいだな。目標で家を識別するだなんて。



今日の夕食はばあちゃん手作りのボーズとうどん。

素朴な味が体に染み渡る。

休める場所があることの大切さ。

ばあちゃんの温かさ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。