アメリカの空港にて

アメリカではポピュラーな交通手段として、日常的に飛行機を利用しています。一日のアメリカ国内線の便数は日本人の想像をはるかに超えるものであり、それゆえ私の中では、アメリカは「車社会」でありかつ「飛行機社会」ともいえるとおもっています。

「交通手段」と書いてしまうと味も素っ気もありませんが、そこは実にフランクなアメリカ人。そこでは見も知らぬ人同士が自然と会話を弾ませる光景がよく見られます。なので「対人バリア」を張っているはずの私もおのずと巻き込まれてしまいます。

今回は、アメリカの空港でのエピソードを2件書きたいと思います。

空港で酒盛りをした話

2008年4月、Los Angeles Int'l Airportにて。
LAXに来たことがある人はご存じだと思いますが、保安区域に入る身体検査場の列は、他の国と違って靴を脱いだりしなければならないこともあり、すごく長く並ばなければなりません。その日も、というかその日は特に長く、長蛇の列がつづら折りに7,8列ぐらいになっていたと思います。

私も列に並んで数分経ったときでしょうか、突然叫び声を聞きました。頭を上げると、私の2列前の女性が、肩に掛けていたトートバッグから、結構大きめのワインボトルを取り出したんです。

これも皆さんご存じかも思いますが、保安区域への液体物持ち込みは量が制限されており、もちろんそんなワインボトル、持ち込めるわけがありません。つまりその女性は、預け入れ荷物にするつもりだったワインボトルを、誤って手荷物にしてしまったんです。

そこからその女性は、保安スタッフに対していろいろ相談していましたが、「高かったのよ!」との女性の話も制して、スタッフからは「廃棄しろ」との指示。
そうしたら、その女性は何を思ったのか、突然そのワインを開封して、その場で飲み始めました。「捨てるくらいなら飲んでしまえ」ということですね。

もちろん結構大きめのボトルなので、到底短時間で飲み切れません。そうしたら、「あなたたちも飲んでよ!」と、そのボトルを並んでいる他の旅行者で回し飲み。並ぶ旅行客が笑ってもりあがる中、保安スタッフは苦笑してました。私にもワインボトルが回ってきましたが、私はお酒が飲めないのでスルー。半分ほど残っていたと記憶しています。

結局その女性はそのワインボトルをそのまま後ろの旅行者に預け、保安区域検査を受けていきました。ワインボトルはさらに私の後ろへ回されて、おそらくは全部飲み切るまで回されたのではないでしょうか。

パンクな女の子に話しかけられた

そのLAXからChicago O'Hare Int'l Airportに到着。シカゴは雨でした。それも豪雨。

毎年2月から4月頭にかけ、アメリカ中西部は「Winter Storm」といわれる、季節外れの寒気に刺激された悪天候が時折発生します。これに巻き込まれてしまうと、かなりの確率で飛行機は遅延・欠航することがあります。今回もそうでした。

幸い飛行機は3時間ほどの遅延で済むそうで、本を読みながらカウンターに並んでいましたが、そのとき急に前にいる女性から話しかけられました。

その服装というのが…たくさんのスパイクが打ち込まれ、また2インチはあろうかというフックで前を留めた黒レザーのジャケットに、下も黒レザーのパンツに厚底ブーツ。顔を見ると右耳から鼻にかけてチェーン(!)が。左耳にもかなりの大きさのピアス。いわゆる「パンクファッション」。正直ちょっと引きました。

「(英語で)あなた、日本人?」

「(英語で)そうです」

「(少し考えて、日本語で)コンニチハ」

何か阻喪があったのだろうかと思って身構えていましたので、突然日本語で話しかけられ、力が抜けました。

彼女はこう見えても高校生(?)で、コロラド州デンバーからオハイオ州コロンバスに向かう途中でこの豪雨に巻き込まれてしまったそう。クラス内に日本人の親友がおり、あいさつ程度の日本語を習っていたため使ってみたくなったとのことでした。

話をしてみると本当に普通の女子高生で、話題は日本食がおいしいとか、何の目的でアメリカに来ているのかという、たわいもないことばかりでした。
そして、外見で人を判断してはいけないなぁと少々反省させられました。それこそアメリカは個人主義が重んじられる国柄。いろんな価値観が存在しそれぞれが尊重されている。アメリカという国の懐の深さを改めて感じた次第です。日本だと、こんな高校生が学校にいたら、生活指導がうるさそうですしね。

ちょうど読んでいた本に、透かし彫りの富士が描かれた金箔栞を挟んでいたので、日本由来のプレゼントとして記念に差し上げました。
※旅行の際に常に持ち歩いています

よくアメリカに対して人種差別などのコミュニティの壁が指摘されることがありますが、幸いにも私はそれを感じたことはありません。逆にそれがあまりにも注目されることにより、自浄としてアメリカ社会がそれを避けようと努力しているようにも思えます。

私が接してきたアメリカ人のフランクな振る舞いは、本来人がおのずと行う行動ではないかなと思いますし、またそうであるからこそ、アメリカという国を旅行するのが、私はとても大好きです。

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