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私お勧めの投手用ランニングプログラム(冬季)

前々回もお伝えしましたが、ウエイトトレーニングと有酸素運動を並行して行うと本来ウエイトトレーニングで伸びるはずの筋力が途中から落ちていきます。ところが日本の野球界では、冬場は本格的に筋トレを行い、同時に、この時期お決まりの持久走を取り入れているチームは少なくありません。

しかしこれでは明らかに選手たちは損をしている訳です。以前に体力測定や筋力測定の重要性もお伝えしましたが、もし定期的に測定をしていれば、恐らくどのチームも気づくはずだと思います。「あれ?持久力が伸びて、肝心な筋力が落ちているぞ」と。

今回、あるプロ野球投手からの依頼を受けて、1月からキャンプインまでのランニングプログラムを作成しました。皆様に参考になる例としてご紹介します。

ちなみにこの投手には12月中、私のジムで週一ペース、トレーニングを行ってもらい、彼の目標、立場、身体の出来具合をしっかり把握した上で、しっかり話し合い、以下のように作りました。全て全力で走るということが約束事です。ここでは量より質重視です。

この投手の場合基本4勤1休としています。疲労しない程度のアジリティはアップの後半に毎日入れているという設定です。

第一クール
1日目・・・30mダッシュ新記録狙い×5〜8本(※他者にタイムを測定してもらう)

2日目・・・30mダッシュ×20本(☆インターバル45〜60秒自分でタイム測定)20m 背走ダッシュ×5本

3日目・・・ランニング無し

4日目・・・瞬発型持久力30m×30本インターバル30秒(♯自分で測定し、ベストタイムの落ち具合をチェック)

休日

第二クール
1日目・・・30m新記録狙い5〜8本(※)

2日目・・・30mダッシュ×20本(☆)
      20m背走ダッシュ×5本

3日目・・・ランニング無し

4日目・・・ポール&ポール×10本インターバル3分(○最初の4本は100%で走り、 毎回新記録を狙う、そして、後半の6本はベストタイムに1.1を掛けた数値、つまりベストの90%のタイムを切るように走る)

休日

第三クール
1日目・・・30m新記録狙い5〜8本(※)

2日目・・・50mダッシュ×15本(☆)
      20m背走ダッシュ×5本

3日目・・・ランニング無し

4日目・・・瞬発型持久力15m×40~50本インターバル15秒(#)

休日

第四クール
1日目・・・30m新記録狙い5〜8本(※)

2日目・・・30mダッシュ×20本(☆)
     20m背走ダッシュ×5本

3日目・・・ランニング無し

4日目・・・瞬発型持久力30m×30本インターバル30秒(#)

休日

第五クール
1日目・・・30m新記録狙い5〜8本(※)

2日目・・・30mダッシュ×20本(☆)
      20m背走ダッシュ×5本

3日目・・・ランニング無し

4日目・・・ポール&ポール×10本インターバル3分(○)

休日

第六クール
1日目・・・ランニング無し

2日目・・・30m新記録狙い5~8本(※)

3日目・・・瞬発型持久力15m ×40~50本インターバル15秒(#)

これ以降キャンプまでランニング無し

いかがでしょうか?ご覧のようにこのメニューではあくまでも短距離の全力走が メインで、漠然と長い距離を走り続ける持久走は一切入っていませんが、短い距離を全力で走り、一定の完全休養時間を挟んで量をこなします。私はこの方法こそが野球という競技に必要な持久力の付け方と考えています。

また人間は、同じ刺激が続くと、身体が慣れてしまい刺激として最大の効果が得られなくなります。こうした状況にある、と判断された場合は距離を変えるだけでなく、レジステッドラン(タイヤ引きやパラシュート等で負荷をかけた短距離ダッシュ)やアシステッドラン(チューブに引っ張られて自分で出せないスピードで走る短距離ダッシュ)も、身体が充分出来上がってから取り入れることもお勧めします。

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パラシュートを用いたレジステッドラン

 
ザックリとこのように予定を立てていくのですが、ものごとは予定通りにいく事ばかりではありません。予定はあくまでも予定として、最優先するのはその時の選手の体調に照らし合わせる事が大切です。

特に休み明けの30m走のタイムの変化に注目しておきましょう。ベストタイムに 1.15を掛けたタイムより悪く、それが疲労によるものだと考えられる場合、私はそのクールはランニングメニューを思い切って、選手と一緒に考えた上で大幅に変更します。
 
恐らく大学野球以上のカテゴリーでよくあることかもしれないのですが、短距離ダッシュのタイムを測定する際、多くのチームで投手の場合、測定者の合図ではなく、自分のタイミングでスタートして一歩目を接地した瞬間に、測定者がストップウォッチを押す形式をとっているようです。しかしこの方法では正確に30mという距離のタイムを測定した事にはなりません。

短距離走のタイム測定というのは、筋収縮のスピードを速くすることだけが目的ではありません。そこには何らかの合図によって、その情報が、視覚または聴覚によって脳に伝えられ、判断し、スタートを切る命令を筋肉に伝達し、そして筋肉がそれに反応するという一連の伝達のスピード改善という意味合いもあるのです。したがってやはり自分の一歩目ではなく、測定者の合図でスタートを切らなければ意味がありません。

測定者は両手を下ろした状態でゴールラインに立ち、ストップウォッチを持っている反対の手を軽く上げ、走る選手に知らせアイコンタクト後、ストップウォッチを持った手を高く上げた瞬間が「ようい!」で、腕を下へ振った瞬間「ドン!」でストップウォッチを押します。是非ともこの方法で行ってみてください。
 
最後に、有酸素運動の必要性についてもお話しします。ここまでの記載ではまるで有酸素運動が必要ないか、と思われがちですが、実はそうではありません。先発投手の疲労除去目的や、リハビリの一環で行う場合は有効だと思います。

また体脂肪過多の選手が脂肪燃焼目的で行うのも有効と言えますが、有酸素運動で脂肪を燃焼させるより、筋トレで筋量を増やす方が代謝が上がりより脂肪を燃焼しやすくなるので、やはりここでも筋トレをしっかり行う事をメインとし、その考えを基に、トレーニング後は成長ホルモンが活性化し脂肪を燃焼しやすくなっているので、ジョギングやエアロバイク等で有酸素運動を20分程度行う事をお勧めします。

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